──ご自身のなかで進藤、小島はそれぞれどのような存在ですか?

江口:時間が経っても進藤自身は何も変わらない強い男。出世欲のようなものが一切なくて、組織の中では一番邪魔になる男とも言えるんですけど(笑)。

でも、進藤のなかでは、とにかく命を救うということが医師にとって一番だと思っている。組織のなかにいると、その思いも変わってしまいがちですが、それでも変わらない進藤はすごいなと思いながら演じています。

松嶋:小島楓が成長していく姿を何年かおきに第5シリーズまでやらせていただいてきたので、私のなかでは「医師役は、これ以外にできない」と思っていて。楓が私のなかでずっと生きている感覚で、20年以上を過ごしてきました。

今回の第6シリーズまでに13年の期間があいてしまったのは、コロナ禍などで病院の方々に協力をお願いできない事情などもあったからです。その分、小島楓というキャラクターを温めていたので、大事な時間でした。

「我々が苦労したあの時間は、無駄じゃなかった(笑)」松嶋菜々子が語る27年前との変化

──スタッフやキャストが変わっても、根本的に変わらない“救命病棟らしさ”は何だと思いますか?

江口:その瞬間にいろいろな判断をして、命の再生をするのが救命医。他の科とは違う特殊な状況のなかで、救命医は患者さんと向き合う姿勢を見せ、その背中を研修医たちが見ているという、関係性に関しては変わらないですね。

制作のことで言いますと、技術も美術もすべてがかなりパワーアップしています。入念にディスカッションをしたことが感じられる現場なんです。だから、見てくださる皆さんには、第6シリーズではあるものの「これが『救命病棟24時』だ」と感じてもらえるくらい、強い映像になっているのではないでしょうか。

松嶋:第1シリーズを撮影していた頃は、医療リハーサルがなくて、撮影当日にキャストが動きを覚えて、スタッフは技術面を確認するという、とんでもない現場だったんです(笑)。だから、最初のリハーサルに3、4時間かかり、その時点で「今日は5時間押し、確定だね」とみんなで言いながら、毎日撮影をしていました。

今は医療ものをやる際、(撮影とは別日に)医療リハーサルの時間があります。事前にリハーサルをしてくださっていて、キャストは一度代役の方の動きを見て、そこからシーンを作り上げていくという形になっているんです。

これは『救命病棟24時』から始まった進め方で、これによって医療ものの撮影が飛躍的にスムーズになったんじゃないかな、と。我々が苦労したあの時間は、無駄じゃなかった(笑)。医療ドラマの発展に大きく貢献したのではないかという、作り手側の自負があります。

今回、第1シリーズから引き続き携わっている監督もいらっしゃいますが、あの頃から“一緒に作り上げている”ということは、すごく感じています。

──いつから医療リハーサルは始まったのでしょうか?

松嶋:第1シリーズの途中からでしたっけ?

江口:第1シリーズは結構みんな大変で、途中から医療リハーサルをした気がするけど、第2シリーズくらいから本格的に始めた感じだったと思います。

──『救命病棟24時』は27年続くシリーズです。お2人も第1シリーズから歳を重ねてきていますが、ご自身の変化はどのように感じていますか?

江口:仕事では、いい作品にするために、ワンカットでもいいものを撮ろう、追求したいという思いは強くなっていると思います。

例えば、今回で言うと「また『救命病棟24時』が見られるんですか?」と期待を向けられると、「見てよかった」と思ってもらえるにはどうしたらいいか、「何か足りないかも」と、いつも考えていて。それがまた全然苦痛じゃないですし、そうやって仕事と向き合うことから充実感のようなものも得ています。

ここまでいろいろな役をやってきたことで、現場を俯瞰(ふかん)して見られるようにもなりました。演出や機材のことも考えてお芝居もできるようになって、本当に楽しいです。

20代の俳優さんと一緒にお芝居をすれば、「俺もその頃、そうだったな」と思うこともありますね。今回は進藤という役もそうですし、フジテレビの作品ということもありますし、自分が歩いてきた道を感じつつ、いろいろな感情を抱きながら現場に立っています。

松嶋:今回、撮影前に『救命病棟24時』を見返したのですが「そうか、こういうことを描いていたんだ」と初めて気づくこともありました。

これは『救命病棟24時』に限らず、どの作品もそうですが、そのとき自分が持っている経験から得るものや表現できることは変わってきますよね。それはいいことですが、一方で、振り返ると視野が狭かったと感じることもあります。

そういうことも含めて冷静に見られるようになるのは、歳を重ね、経験を積むことの良さだなとも思います。

最近ちょっと困ったなと感じているのは、自分が思うよりも舌が回らなくなってきたこと。滑舌のトレーニングを加えようかと思っているところです(笑)。そこは、若い頃には感じられなかったことですね。

──最後に、視聴者へメッセージをお願いします。

江口:昔、『救命病棟24時』が放送される時間をワクワクして楽しみにしていた方もいらっしゃると思います。そういった皆さんが、お子さんと一緒に楽しむ場面も思い浮かびますし、家族みんなで見られる作品にしたいです。

スタッフも、役者陣も含めて本当にいいチームで、これからこのメンバーでどこまで到達できるのか楽しみです。最後まで見届けてください。

松嶋:若かった自分たちが上の世代になり、若手を育てていくなかで、先輩として彼らにどういうバトンを渡せるのか、というのが今回のテーマの一つです。

若い世代の方々は、自分自身や私生活も大切にしながら、バランス良くお仕事をされている方が多いです。そういう方々にも、心を震わせるくらい何かに熱く、必死になることの素晴らしさを届けたいですね。

今作では、個性豊かな研修医たちの心を震わせるにはどうしたらいいのか、奮闘する私たち上級医の姿も描かれるので、そこも楽しみにしていただけたらうれしいです。