『うちの弁護士は手がかかる』第5話完全版
ある朝、出勤途中に突然腹痛に襲われた蔵前勉(ムロツヨシ)は、救急車で病院に搬送されてしまう。痛みをこらえてすぐさま「香澄法律事務所」所長・香澄今日子(戸田恵子)に連絡を取る蔵前。
その日は、今日子のクライアントとの打ち合わせが入っており、蔵前は多忙なパラリーガル・丸屋泰造(酒向芳)に代わって今日子のパラリーガルを務めることになっていた。
そこで今日子は新人弁護士・天野杏(平手友梨奈)にパラリーガルとしてサポートをするよう指示。渋々承諾する杏。
ほどなく、今日子にとって大切なクライアントの紹介で、上畑亮(林泰文)と妻・順子(田山由起)がやってくる。上畑夫妻の間には、ボクシングをやっている中央体育大学3年の健(嘉島陸)という息子がいた。
彼は日本代表の強化選手に選ばれるほどの逸材だったが、同学年の選手・相羽幸喜(佐久本宝)とのスパーリング中に強いパンチを受けてこん倒し、脳しんとうと頸椎捻挫で入院を余儀なくされたのだという。
スパーリング中の事故という説明に納得できずにいた上畑夫妻は、大学側の安全義務違反を問えるかどうか相談に来たのだ。
実は、急に大学側から求められて「練習中に事故が起きても大学や相手選手を訴えない」という誓約書にサインしていた健。それを聞いた今日子は、自筆のサインが入った誓約書をひっくり返すのは難しいと考える。
だが杏は、「逃げ腰になるのは二流のやり方」と言って、今日子を差し置いて大学側の過失を争おうと提案してしまう。
杏から事情を聞いた蔵前は、杏がなぜ今日子のパラリーガルを引き受けたのか不思議に思っていた。
見舞いに来た弁護士の辻井玲子(村川絵梨)や山崎慶太(松尾諭)ら事務所の面々に尋ねると、2人の間には何らかの密約があったらしい。
杏と今日子は、中央体育大学を訪れ、ボクシング部コーチ・田中雄二(浜野謙太)やトレーナー・篠原希(東野絢香)から話を聞く。
田中は、今回の件は間違いなく事故だと断言。誓約書の件は、他校でマスボクシング中に選手が大ケガをした事故を受け、学内で協議の上、誓約書を準備することになったと証言した。他の部員たちも、レベルが拮抗した選手同士ならこういうことも起こりえる、と口をそろえる。
杏たちが篠原からも話を聞こうとすると、そこに大学の理事長・斎藤秀一郎(飯田基祐)を乗せた車がやってくる。挨拶する今日子に斎藤は、相羽と一緒に上畑の見舞いに行っていた、と話した。
杏は、試合や練習の様子を記録しているという篠原に、スパーリング時の動画を探してもらっていた。
そんな矢先、香澄法律事務所に、杏の姉・天野さくら(江口のりこ)が所長を務める「天野法律事務所」の弁護士・大神楓(菅野莉央)がやってくる。誓約書の作成を請け負ったという大神は、部員たちの証言をまとめた資料や、コーチ、トレーナーが朝から晩まで現場を監督していた記録などを見せ、訴えを取り下げてほしいと頼む。
続けて楓は、解決金として100万円を支払う用意があると杏たちに告げた。杏がそれを拒否すると、楓は「お探しのスパーリングの動画ですけど、たまたま記録していなかったようです」と言い残して帰っていく。
楓の提案を受け、今日子は、上畑の両親に解決金を受け取るよう勧める。「パラリーガルは黙っていろ」と言われて憤慨していた杏は、蔵前に電話し、不満をぶつけた。
すると蔵前は、自分の奥義だと言って、直接頼むのではなく遠回しに自分の思っている方向に誘導すればいい、と伝える。今日子が自分で思いついたように、ヒントを出してやればいい、というのだ。
そんな中、蔵前は、同じ病院に上畑が入院していることを知る。知らせを受けて駆けつけた杏は、事前の誓約書や、スパーリングの動画が存在しないことを挙げ、誰かが不正を働いている可能性がある、と上畑に伝える。
しかし上畑は、相羽がそんなことをするはずがない、悪いのは自分だ、と言うだけだった。
上畑は、見舞いに来た斎藤に「両親には訴えるなと伝えてある」と告げる。その様子を見ていた蔵前は、上畑が何らかの不信を抱いていることを見抜き、事故があった当日のことを聞き出す。
その日上畑は、減量用のフルメニューをこなしてヘトヘトになっていたところに誓約書へのサインを求められたのだという。スパーリングまでに息を整えたかった上畑は、中身もろくに見ずにサインしてしまったらしい。
それでも、相羽とボクシングをしているときが一番楽しかった、という上畑。蔵前からその話を聞いた杏は、もう一度別の角度から今回の件を検討し、付箋をつけた資料を今日子のデスクに置いた。
それを見た今日子は、「見つけたわ、打開策!」と叫んだ。
今日子と杏は、上畑と彼の両親、楓、斎藤理事長、田中コーチを呼び“プライベートな裁判”を開く。そこに証人としてやってきたのは、斎藤の運転手を務めている吉田太郎(綾田俊樹)だった。
吉田は、斎藤が田中に、両親が多額の寄付をしてくれている相羽を代表にするために、上畑がケガをしてくれたら、などと電話で話していたと証言。篠原とともに廊下でその話を聞いていた相羽は、部屋に飛び込み、斎藤を非難した。
「田中くんが勝手な解釈で動いたとしても私には関係ない」などと言い出す斎藤を制して、部屋から出て行こうとする楓。すると今日子は、「今、どんなお気持ちですか?」と篠原に声をかけた。
そこで杏は、楓が作成した資料を提示し、非正規雇用で36協定を結んでいない篠原が、土日も休まず、朝の5時から深夜の23時までサポート業務をさせられていることを指摘。自分が作った資料で大学側の不正を証明してしまった楓は、希望金額を支払う、と返すしかなく…。
蔵前は、逆転勝利を収めた杏に、改めてなぜ今日子のパラリーガルを引き受けたのか、と尋ねた。
実は杏は、蔵前の腹痛は杏と一緒にいることのストレスが原因なのだから責任を取れ、と言われていた。だが杏は、それを蔵前には言わず、部屋が散らかって足の踏み場もないから早く帰ってきてください、と返して…。