宝塚歌劇団の元スターに、輝く秘訣やこだわりを語ってもらう「宝塚OG劇場」。第14回は、綺咲愛里(きさき・あいり)さんが登場。
その愛らしさと華やかなオーラで、星組トップ娘役として注目を集め、2019年の退団後は、舞台を中心に活躍中。現在上演中のミュージカル「She Loves Me」で、ヒロイン・アマリア役を演じています。
本作は、1963年にブロードウェイで初演され、日本でも4度上演された人気作品。香水店で働き、文通相手の女性に恋をしているジョージ(薮宏太/Hey! Say! JUMP)と、犬猿の仲であるアマリア(綺咲)の、キュートでロマンチックな物語です。
フジテレビュー!!は、綺咲さんにインタビュー。
後編では、宝塚時代から変わらないこと・変わったこと、今ハマっているというスポーツ観戦について聞きました。
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<【前編】綺咲愛里「自分を打ち破って、猪突猛進に生きたい」ピュアなヒロイン役に意気込み>
お化粧で“本番スイッチ”を入れて、エンジンをかけたまま本番へ
――宝塚歌劇団を退団して約3年半経ちましたが、舞台に立つ上で、宝塚時代から今も大切にしていることはありますか?
作品のなかで、その役を生きることです。宝塚で娘役を務めていたときも、1人の俳優として舞台に立つ今も、そこは変わらないと思います。でも、口で言うのは簡単ですが、一筋縄ではいかないなと感じています。
――役を生きるために、本番前に意識していることがあれば、教えてください。
開演前のルーティンは、宝塚時代も今もあまり変わらないですが、私の場合、お化粧で“本番スイッチ”が入ります。
宝塚のお化粧は時間がかかりそうに見えると思いますが、私は開演ギリギリまですっぴんでした(笑)。時間が迫ってくると、スイッチが入ったかのように一気に化粧をして、その勢いで、エンジンがかかったまま本番に入るのが好きで。たぶん、周りはヒヤヒヤしていたと思いますが(苦笑)。私はそんなに器用なタイプではないので、自分を物理的に追い込まないと、うまくできなかったんです。
今は、もうちょっと余裕をもって準備していますが、やっぱり役のことを考えながら、役に合わせたお化粧をしていると、そこで本番モードに入りますね。公演が終わったら、お化粧はすぐに落として、気持ちもオフにしています。
――逆に、退団してから「変わった」と思うことはありますか?
宝塚では、基本的にその組ごとに、ずっと同じメンバーで作品を作っていきます(※)。でも今は、作品ごとに新しい方と出会い、稽古をして仲を深めて、本番を迎え、もっと深まったところで千秋楽が来て「さようなら」となるわけで。いっときのものだな、というのをすごく感じます。
(※)花、月、雪、星、宙の5組と専科があり、各組には約80名が所属。組替えなどで、メンバーの入れ替えも定期的に行われるが、基本的には同じメンバーで作品を作っていく。
だから、キャストもスタッフさんも、一緒に作品を作るというのは、すごく稀な確率でご縁があったということだと思います。その後、もう一度共演することがあれば、それはもっとすごい確率でご縁があったということ。そうやって、どんどんつながっていく世界なんだと感じています。
――宝塚時代にトップコンビを組んでいた紅ゆずるさんとも、また作品で共演するご縁があるかもしれませんね。
紅さんは、つい先日イベントでお会いしましたが、役ではなく素の状態だったので、当時のことを懐かしみながらお話させていただきました。
でも、もしまた作品で役を通してご一緒するとしたら…どうなるのか想像がつかないです。やっぱり、娘役としての恋愛感情のスイッチが入りそうですが(笑)、未知の世界ですね。でも、ご縁をいただける機会がもしあるなら、うれしいです。
「ぜひ、やってみたいです!」スポーツ選手との対談にも意欲
――最近ハマっていることがあれば、教えてください。
映画「THE FIRST SLAM DUNK」(以下、「スラムダンク」)にハマっています!
そもそも私、昔からスポーツ全般、特に野球がすごく好きなんです。それこそWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は毎日観戦していて、忙しかったです(笑)。
「スラムダンク」を観て大感動して、バスケットボールもよく見るようになりました。野球は、何かをしながら見ることが多いのですが、バスケはいつ何が起こるかわからなくて目が離せないので、食いつくように見てしまいます。
スポーツは、テレビ観戦も楽しいですが、やっぱり試合会場で、選手たちのパワー、応援の熱量、人と人の思いのぶつかり合いを直接感じるのが、ものすごく好きです。「私も頑張ろう」と元気をもらえますし、スポーツこそ、生のエンターテインメントだと思います。
――自身でも、何かスポーツをしていますか?
自分でするのは、たぶんあまり向いていないと思います。でも、バッティングセンターには、たまに行きます!そんなにボールは当たらないんですけどね(笑)。当たるときは当たるんですけれど、当たらないときは全然当たらなくて。気持ちと反しているかのように…。
野球選手の方にも“調子がいい時・悪い時”があると聞きますが、なんとなくわかる気がするんです。「一緒にするな」と思うかもしれませんが(苦笑)。
でも、心とパフォーマンスは直結するというのは、私自身、実感しています。もちろん、何があっても務めを果たすのが仕事ですが、人間、長いシーズンを通してずっと調子がいいなんてことは、ないと思うんです。
スポーツも舞台も、本番でアドレナリンみたいなものが出て、一発勝負に挑むところが似ているなと思います。だから、スポーツからパワーをもらい、私もその時にできる最大限のパフォーマンスをお見せしたいです。
――綺咲さんとスポーツ選手の対談があれば、ぜひ聞きたいです。
ぜひ、やってみたいです!でも私、野球の話になると我を忘れてしまうので、大変かもしれません(苦笑)。
――今後、挑戦してみたいことを教えてください。
まずは、「She Loves Me」でアマリア役をまっとうするのが、今の一番の目標です。そして、今までいろいろな経験をさせていただいたので、今後はその経験が活きるようなお仕事や、自分にできることなら何でも、前向きに取り組んでいきたいので、多方面で頑張りたいです。
今回、スポーツのお話もしましたが、やっぱり好きなことも仕事にできたら、これほどうれしいことはないので、スポーツに関することにも携われたらなと思います。
撮影:河井彩美
ヘアメイク:奥川哲也(JOUER)
<綺咲愛里 メッセージ動画>
<ミュージカル「She Loves Me」>
【東京公演】2023年5月2日(火)〜30日(火)/日比谷シアター・クリエ
【大阪公演】2023年6月3日(土)・4日(日)/東大阪市文化創造館Dream House 大ホール
【愛知公演】2023年6月8日(木)〜10日(土)/御園座
出演:薮宏太(Hey! Say! JUMP)、綺咲愛里、宮澤佐江、竹内將人、岡田亮輔、岸祐二、坂元健児、他
台本:ジョー・マスタロフ
作曲:ジェリー・ボック
作詞:シェルドン・ハーニック
翻訳・訳詞・演出:荻田浩一