いま、TikTokを中心にじわじわと広がりを見せている謎の楽曲「ケバブのダンス」。
2020年に誕生したこの曲は、中毒性のあるリズムとキャッチーなフレーズ、そしてゆるく踊れる振り付けが相まって注目され、SNS上で“再発見ヒット”として拡散しています。
この楽曲を手がけた音楽クリエイター・ハヤシユウさんに、めざましmediaが取材。曲が誕生したきっかけや制作秘話、そして約5年半越しのバズについて話を伺いました。
新潟出身・小豆島在住のハヤシユウ きっかけは「面白い曲を作りたい」
新潟県出身で、現在は瀬戸内海に浮かぶ小豆島で暮らしているハヤシユウさんは、普段はフリーBGMや販売用のBGMを制作している音楽クリエイター。
楽曲から伝わる柔らかな歌声のイメージそのままに、どこかおっとりとした語り口が印象的なハヤシさんは、地元・新潟から東京に引っ越したものの、直後に新型コロナの流行で思うような活動ができないままやがて東京での暮らしに疲れ、2021年6月に小豆島に移り住んだと言います。
小豆島を選んだ理由について尋ねると、「日本海側にはない穏やかな気候に憧れていたから」と、思わずほっこりしてしまうようなエピソードを交えながら語ってくれました。
そんなハヤシさんが、小豆島へ移り住む前、東京で暮らしていた頃に制作したのが『ケバブのダンス』。
――この曲を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
当時は曲を作る時のバランスというか、いろんな曲調を作りたいなという思いがあり、激しめの曲を作ったら穏やかな曲を作って…と、その中の一つとして面白い曲を作りたいなという思いはありました。
ケバブとタコスを間違えて買ってきて、それでも食べたいからケバブを作って食べてみたらタコスの味がしたという歌詞なのですが、曲を作った当時、本当にケバブとタコスの違いが分からなくて、「あれ、どっちだったっけな?」というところから着想を得たのだと思います。
曲が誕生したきっかけを、そう振り返るハヤシさん。改めて歌詞を見てみると、その突き抜けた“意味のなさ”に思わず驚かされます。
<1番Aメロ>
なんだか不意にケバブが食べたくなって 近くの店にケバブを買いに行くんだ
家に帰ってケバブを確認したら タコスを買っていました
それでもやっぱゲバブが食べたくなって 材料買ってケバブを作ってみるよ
できたてすぐのゲバブを口に入れたら タコスの味がしました
“間違い”から始まり、“間違い”で終わる――。そんな脱力感あふれるストーリーも、この曲の中毒性を高めているのかもしれません。
さらに2番では、「ボンゴ」と「コンガ」が登場。曲全体を通して、“どっちがどっちか分からない”という感覚が一貫したテーマになっています。
<2番Aメロ>
なんだか不意にボンゴを鳴らしたくって インターネットでボンゴをポチってみたよ
家に届いてボンゴを叩いてみたら コンガの音がしました
それでもやっぱボンゴを叩きたくって ダチの家までボンゴを借りに行くよ
寄り道をしてボンゴを買い食いしたら ボンゴレビアンコでした
買ったら違う、叩いたら違う、最後はまさかのパスタ――。1番と同様に、ズレ続ける展開がクセになる内容です。
そして終盤では、「恋のロマンス 妙なバランス 加茂桐タンス 目指せフランス」と、思わず首をかしげたくなるようなフレーズが次々と登場。ハヤシさんは、「“加茂桐タンス”は新潟の特産品です。そんなふうに地元の要素も少し入れつつ作りました」と語っており、楽曲にはユーモアと遊び心、そしてさりげない地元愛も込められているようです。
『ケバブのダンス』5年半越しのバズ!その裏で複雑な本音も
そんな中毒性のある『ケバブのダンス』ですが、ハヤシさんは、「この曲は、当時から“バズを狙って”作っていた部分もあったと思います」と振り返ります。
――当時からTikTokでのバズを狙っていたということでしょうか?
あれは2020年の春頃だったかな…、TikTokを意識していたと思いますね。
TikTokで流行りやすいものは、4つ打ちのダンスビートであったり、ちょっとシュールな世界観があったりするなと思っていて、そういうのがいいかなと。歌詞は面白く、曲調はポップに分かりやすくというのは意識していました。
ただ、「あの曲楽しいね」みたいな感じで、身の回りでは割と評判は良かったんですけど、パズるには至らず、低空飛行な感じでした。
――そして、2025年12月ごろから急にTikTokでバズり始めたということですよね。
最初に何で気付いたかは覚えていないのですが…、10月に“けばぶ”さんという方がダンスを作ってくれたのをきっかけに、12月上旬・中旬ぐらいからTikTokの動画投稿数が増えてきて、そこからは割と毎日動画チェックしたりしていましたね。
約5年半の時を経て訪れた“バズ”の兆し。
もちろんうれしさはあったといいますが、その心境は少し意外なものでした。
――バズり始めて、心境はどうでしたか?
嬉しかったですが、数字が伸びていることに驚きつつも、あまり実感が湧いてない部分もあって…。曲は広く知れ渡っていっていると思いますが、自分のフォロワーが増えるとか、新しい依頼の話が舞い込むとか、そういうことはほとんどなく。
ダンス動画だけが本当に独り歩きしているというか、“流行っているな”というのを、自分もどこか第三者目線で見ているような感覚でした
そんなハヤシさんですが、ある人物に『ケバブのダンス』が届いたことで、ようやくその喜びを実感する瞬間が訪れます。その“ある人”とは――。
