ジャニーズJr.の松本幸大(宇宙Six)が主演を務める舞台『どれミゼラブル!』が、10月3日に東京・博品館劇場で開幕。同日行われた公開ゲネプロの模様をリポートする。
本作は、2004年の初演された可児理華の書き下ろしコメディをキャストに合せて大幅に書き直し。演出に池田テツヒロを迎え、キャストに松本、室龍太(関西ジャニーズJr.)、石垣佑磨、岩田華怜、金田哲(はんにゃ)、早乙女友貴、石橋徹郎を迎えておくる。
舞台は、若者の街、演劇の街といわれる下北沢の片隅にあるアパート「コーポ・レミゼ」。そこには、女装の売れない自称ミュージカル俳優の市河マサチカ(石垣)、お笑い芸人のコムサ真二(室)、アクション俳優のジャッキ・チェー(金田)、歌舞伎役者の中村鶴若(早乙女)、アングラ俳優の安具楽秀樹(石橋徹郎)が住んでいるが、彼らは家賃も滞納してばかりで、若き大家の松子(岩田華怜)も困っていた。そこに地方から上京してきた俳優志望の田中守(松本)が入居してきて…。
松本は、今作が初の舞台単独主演。2003年にジャニーズ事務所に入所して以来、『PLAYZONE』や『滝沢歌舞伎』などの舞台やコンサートに出演し、18年には舞台『カクタスフラワー』で初めて外部舞台に単独出演、30-DELUXと宇宙Sixとのコラボした舞台『スクアッド』『のべつまくなし』出演と、様々な舞台で経験を積んできた。それゆえか、初めての単独主演とは感じさせないくらいの堂々たる演技を披露した。
何があっても明るく前向きな守を、アイドルならではの爽やかな笑顔をはじめ、歌唱やダンス、殺陣、扇子を使った技など、盛りだくさんの要素を織り込みつつ熱演。本格的なコメディも初めてとのことだが、「自分たちも楽しいので、それをいかに伝えられるか」と囲み取材会で意気込んでいた通り、体を目いっぱい使ってその楽しさを伝えるような真っすぐな芝居で、個性豊かな共演者の中でも座長として存在感を放っていた。
そんな松本を取り囲む共演者は、ジャニーズの室、実力派俳優の石垣、元AKB48の岩田、芸人の金田、大衆演劇出身の早乙女、老舗劇団の文学座の石橋と、演出を務める池田が「異種格闘技戦」と例えるくらいバラエティに飛んだメンツだ。
今回、松本が「池鉄さんが教えてくれる部分以外にも、お笑いだったら金田さん、アクションだったら室くん、扇子の技や殺陣だったら早乙女さんなど、みなさんで作った感がある」と胸を張った通り、本作ではそれぞれが自身の強みを発揮。
芸人役の室は本物の芸人である金田がいるからこそ「なんの心配なく楽しくできている」と言った通り、劇中でも芸人顔負けのテンポの良いセリフ回しをみせ、舞台を盛り上げる。石垣は安定的な演技力でおネエな役柄も自分のものとし、早乙女は要所で華麗な所作や舞を披露し観客を魅了。紅一点の岩田は、愛らしい演技で舞台を華やかにし、石橋は一瞬で観客を引きこむ圧倒的な演技力で作品にアクセントをつけていた。
劇中では、松本、室、石垣、金田、早乙女の5人がエチュード(即興芝居)に挑むシーンもあるが、そこは芸人の金田の振りで5人がアドリブを。ゲネプロではすべってしまった金田だが、「怖くなったけど、そこは楽しんで欲しい」と自信をのぞかせたようで、芸人としての腕の見せ所に。毎公演、違うやりとりを楽しめるのは本作の一つの見どころになるだろうし、回を重ねるごとにより魅力的な掛け合いを堪能できるはずだ。
囲み取材で、石橋が「台本自体のキャラクターもすごくバラエティにとんでる。そこが役者の素材と物語の人物たちとうまくフィットすると、笑いだけではなく、感動的な物語になる。(ゲネプロでも)それを強く感じた」と手応えを明かしていた通り、それぞれの役者が演じる自身のキャラクターをうまく取り込み、絶妙なチームワークで秀逸なコメディに仕上っていた。
「池鉄さんの指導のもと、7人のチームワークで、みなさんを笑顔にします。絶対笑わせます」と誓っていた座長の松本。人生の立て直しをはかる登場人物たちの奮闘ぶりに、クスッと笑えて、何か背中を押してもらえる、本作はそんな心温まるコメディだった。