『スタンドUPスタート』第3話完全版
「サンシャインファンド」の社長・三星大陽(竜星涼)は、起業家と銀行をつなぐ会社「スタートマッチ」を興した林田利光(小手伸也)をオフィスに呼び、御手洗光一(内藤秀一郎)という男と引き合わせる。
<ドラマ『スタンドUPスタート』これまでのあらすじ完全版>
パチンコグループ本社の社員である御手洗は、新たなブランディング展開として社内起業し、遊戯と交流の場を兼ねた複合施設を作ろうとしていた。
実は御手洗は、大陽とは小学校の同級生。御手洗が持参した事業計画書を読んだ林田は、グループ自体の経営も安定していることから、銀行からの融資は可能と判断する。
ところが、「みその銀行」の融資担当で、かつては林田の部下でもあった羽賀佳乃(山下美月)は、「パチンコ関係というのはちょっと…」と言って御手洗への融資を拒否。融資が通るものと思い、パーティーの準備をしていた大陽たちは驚きを隠せなかった。
ほどなく、事情を知らないゲーム会社「ハイパースティック」の社長・小野田虎魂(吉野北人)や起業を目指す大学生・立山隼人(水沢林太郎)もお祝いに駆けつける。
「融資は別の銀行からでも良い」といって明るく振る舞い、場を盛り上げようとする林田たち。そこで虎魂や隼人は、御手洗から大陽の子どものころの話を聞く。
大陽たちが通っていたのは、富裕層が通う私立だったが、パチンコグループの息子だった御手洗は、周りから品がないなどと言われてバカにされていたという。だが、大陽だけは普通に接してくれたらしい。
その際、虎魂たちは、大陽が三ツ星重工の御曹司だと知り、驚いた。
専属秘書・M(雨宮天)から羽賀に関する情報を得た大陽は、御手洗を誘って再び羽賀に会いに行く。
御手洗は、グループのアプリ登録者数が30万人を超えることなどを羽賀にアピール。だが羽賀は、パチンコ自体のイメージや、反社会勢力とつながりがあるという噂を持ち出した。
それに対して御手洗は、パチンコはエンターテインメントと同じであり、反社とのつながりはまずあり得ない、と反論。すると羽賀は、右手で左腕を強く押さえ、人間の射幸心を刺激し、依存症の人も生み出している真っ黒なビジネスだと声を荒げた。
その様子を見ていた大陽は、「真っ白な世界は苦しくない?」と羽賀に問いかけ…。
1年前、御手洗は、社長である父・御手洗裕二(長谷川初範)から、店長として現場を学ぶよう命じられる。しかし、パチンコ店はこの世界に必要なのか、という疑問を抱き、仕事を続けていく意味が見いだせなくなっていた。
相談を受けた大陽は、そんな御手洗をとある風俗店へ連れて行く。その店の店長・鴨志田一(永井大)は、風俗店の劣悪な環境を変えるため、大陽から資金を借りてこの業界に参入したのだという。
反社の完全排除、働く女性との正式な雇用契約などを進めた鴨志田は、「資産は人なり」という大陽の言葉通りの事業方針によって、成功を収めていた。
大陽は御手洗に、「白い人と黒い人の話を知っているか?」と問いかける。白い人は表稼業、黒い人は人の欲求の受け皿になる裏稼業のことで、それが後に、「素人」と「玄人」という言葉として伝わっていったという説があった。
「欲求ビジネスは、やり方次第でいくらでも人を食いつぶせるからこそ、店側は玄人でなければならない」。大陽の言葉に、御手洗は仕事への意味を見つけ、やがてそれが、「パチンコで作るコミュニティスペース」という社内ベンチャーへとつながったのだった。
羽賀が自宅マンションに戻ると、部屋の中が派手に散らかっており、母・綾乃(国生さゆり)がうずくまっていた。金を探していたようだった。
綾乃は、躾(しつけ)にも厳しく、路上でゴミを散らかして騒いでいるような男たちを見たときは、小学生だった羽賀に「こっちは白い世界、あっちは黒い世界なの。1度道を踏み外すと、2度とこっちには戻れない。だからずっと、正しい道を歩き続けなきゃダメよ」と言い聞かせるような母親だった。
だが、夫の不倫が原因で離婚してからは人が変わったようになり、パチンコにのめりこんでしまっていた。羽賀は、うずくまっている綾乃に「大丈夫」と声をかけて彼女の背中に手を伸ばすが、触れることができず…。
別の日、大陽は御手洗とともに、再び羽賀のもとを訪れる。御手洗は、羽賀にパチンコのことを認めてもらおうと、依存症への取り組みについて説明しようとするが、羽賀には響かない。根本的な解決策がないのなら、最初からパチンコ店がなければいいという。
大陽は、人間には本質的にさまざまな欲求があるのだから、その受け皿として御手洗のような玄人が必要だと羽賀に告げる。しかし羽賀は、自分が融資を担当することはできないと頑なだった。
そのとき大陽は、羽賀がいつの間には激しく腕を引っ掻いていることに気づき、彼女の腕を掴んだ。すると袖口から、爪でつけた無数の傷跡が覗く。そのとき、羽賀のスマートフォンが鳴った。あるパチンコ店からの連絡だった。
羽賀は、連絡をくれたパチンコ店へと向かう。綾乃が、何度注意しても床に落ちているパチンコ玉を勝手に使ってしまうと言うその店は、御手洗のグループ店舗だった。
大陽とともに羽賀の後を追った御手洗は、今回は厳重注意だけにしてほしいと店長に頼んだ。
羽賀親子をマンションまで送り届けた御手洗は、話をさせてほしいと申し出て、依存症に苦しむ人たちのためのグループホームに入らないかと綾乃に提案。今の綾乃に必要なのは、同じ苦しみを持つ人が集まる居場所ではないかと考えたのだ。
だが羽賀は、「母のことは自分が一番良く分かっている」と拒否。すると綾乃は、「変わりたい……私、行くよ」と言いだし…。
それからしばらく後、大陽は羽賀に会いに行く。しかし、話すことはないと逃げ出す羽賀。後を追いかけた大陽は、羽賀に腕の傷のことを問いかけた。
そこで、離婚後に母が変わってしまったこと、パチンコ依存症になってしまったこと、自分がそばにいて綾乃を支えなければと分かっているのに、彼女に触れたくないと思い、憎んでしまったことを涙ながらに告白。
大陽は、そんな羽賀を抱きしめ、「娘だから、傷ついて、苦しんで、恨んだ。怒りも愛情もどっちも本当の羽賀さんでしょ?白も黒も混ざると、人の輪郭がはっきりしてさ、俺には綺麗に見えるよ」と告げる。
大陽とともに綾乃に会いに行った羽賀は、一度テストの点数を自分で書き換えて綾乃に渡したことがある、と告白する。そのときは、一度黒い世界に行ったら二度と白い世界には戻れないと思い、怖かったという。
続けて羽賀は、左腕にある傷跡を見せ、「良いことも悪いことも何でも話せる、ありのままの親子になりたい」と訴えた。
綾乃は、そんな娘の思いを受け止め、抱きしめて謝り…。
御手洗は、大陽を伴ってみその銀行を訪れる。すると、担当者としてやってきたのは羽賀だった。
無理を言って、担当に戻してもらったらしい。羽賀は、この先も欲求ビジネスを全面的に肯定することはできないが、白も黒もある世界で生きてみたいと思った、と告げた。
大陽は、融資が決定した御手洗に「治法の至明なる者は、数に任じて人を任じず」という韓非子の言葉をおくる。人を信じず、ルールを信じようという意味だった。
それを聞いて、大陽には性善説からくる「論語」のほうが合っている、と意外そうな顔をする御手洗。大陽は、ビジネスにはどちらの考え方も正しくて必要だと返し、「論語」のほうが好きだが韓非子は兄・大海(小泉孝太郎)から教えてもらった、と打ち明けた。
同じころ、三ツ星重工の社長室では、社長である大海と叔父で副社長の義知(反町隆史)が、常務・山口浩二(高橋克実)と向き合っていた。
そこで大海は、航空事業部で不適切な会計処理が見つかったことを告げ、山口の責任を問う。社長室長の高島瑞貴(戸次重幸)は山口の功績を考え処分に反対していたが、韓非子の言葉を口にし、大海は今までの功績を加味するわけにはいかない、と返した。
虎魂と隼人は、ネットである記事を見つける。それは、三ツ星重工の子会社「三ツ星エンジニアリング」で不正が発覚し、当時副社長だった大陽が責任をとって辞任した、というものだった。
大陽は、Mから三ツ星重工で人事に関する大きな動きがあるとの報告を受ける。するとそこに、大海にリストラされた三ツ星重工の元造船所責任者・武藤浩(塚地武雅)が訪ねてきて……。