先週の「試写記事」について補足がございます。
前回、主人公の自己紹介がかつてないほどのビックリするタイミングで、実にさりげなくてかっこいい!という興奮をお伝えしました。ですが試写記事を読んでいただいた何名かの方から、「っていうか、どこで自己紹介してました?」と言われてしまいました。
正解はまさかのラストカット!“若宮(岩田剛典)の音声認識による記録”の場面で、モノローグとそのPC画面を用い「万一に備えて、記録をとることにする。もし、僕に何かあった時は、この資料の公開を許す。彼の名前は誉獅子雄。僕は若宮潤一」と紹介されました。
連続ドラマの第1話は、これからの3ヵ月間、10話近くに渡って視聴者の方に親しんでもらわなければならない最初のエピソードですから、主人公の名前はかなり重要な要素です。なので登場人物の名前をどうやって紹介するか?は、第1話において僕が最もチェックしたいポイントだったのです。
他の作品では、登場人物が現れた場面で、テロップで肩書きまでつけて紹介する…なんてのもありますが、「シャーロック」はそれを敢えて使わず、頭をひねらせたんですね。しかも「シャーロックホームズ」の日本版であれば名前は何になるんだろう?という視聴者が事前に想定しそうな疑問があり、“誉獅子雄”という日本版ではこれしか考えられないと思うような衝撃的なネーミングをし、その上で“さてどう自己紹介しよう?”なので、相当頭をひねられたんだな…と思うのです。想像しただけでもちょっと泣けてくる…。
その結果、ちゃんと物語の中に溶け込み、何の違和感も与えず、どんな漢字かまでわかり、しかも主人公だけじゃなくそのバディの名前まで紹介できちゃうという、この演出がとてつもなくかっこよかったのです。個人的チェックポイントがこんなにも考え抜かれてるなんて!と一人で勝手に興奮してしまったので、多くの皆さんには伝わらない結果となってしまいました。
だけど「確かどこかで誉獅子雄って言ってたな…」という方もいました。さりげなさすぎて誰も気付かないかもしれない…けど視聴者にしっかり印象付けられている!!あの手法はやっぱり成功していたんです!すごい!!!(興奮)
と、ついつい第1話のラストについて長くなってしまいました。
肝心の今回の第2話は、前回提示されたそれぞれのキャラクター性がより鮮明になってきました。本当に使えない刑事だったんだ…とダメ押しされた佐々木蔵之介演じる江藤や、愛すべきバディとして活躍する若宮が熱湯を不意にかけられるのはきっと毎回のお決まりになってくるのでしょう。
そして何はさておきお決まりと言えば獅子雄の“唐突なバイオリン”。このシーンは謎を整理しひも解いていく“獅子雄の脳内イメージ”という見方も考えられますが、あれが例えリアルに街中でバイオリンを弾いていたとしても、ディーン様ならばさもありなんと思えてくる不思議。画になるとはこのことでしょう。初回ではビルの屋上だったのが、第2話で夜とは言え都市部のど真ん中で演奏し、早くもかなり大胆になってきました。次回以降、どんな場所でバイオリンを弾けばディーン様でも違和感になってしまうのか、チャレンジが見ものです。
それはともかく今回の最大の見どころは“何が本当か?”ということ。中盤、今回のゲストで菅野美穂演じる青木藍子が嘘くさい演説をするのだけど、ラストで案の定それが嘘だとわかる…というのは想定内だとしても、さらにその“嘘”が見抜かれたことで殺害にまで至ってしまう…という動機にまで絡んでくる意外性に加えて、被害者が死ぬ直前に見せた表情と藍子が逮捕された瞬間に見せた笑顔…今回小道具として頻繁に用いられたボイスチェンジャーも相まって、何が本当で、何が嘘なのか?…1話以上に深読みしたくなる第2話でした。
で、今回登場した獅子雄の台詞「人は危機に瀕した時、無意識に一番大事なものを見る」。この台詞、最近どっかで聞いたなー、どこだろう?とずっと考えていたんですが、思い出しました。
「シャーロック・ホームズ」を知らないと前回公言した僕ですが、ちゃんと勉強しなきゃと思って見始めた三谷幸喜脚本の人形劇『シャーロック ホームズ』(NHK)でした(なぜそれというのは置いといて…)。この台詞は原作でも登場し、今作でもこの様に原作のエッセンスが散りばめられている様子。ほんの些細な自己紹介だけでも僕がこれだけ興奮してしまうのですから、原作を知る方はそれとの関連性を探すことで、僕よりもっと興奮できる!のではないでしょうか。
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)