7月27日(土)放送の『週刊フジテレビ批評』は、「実力派勢ぞろいも…“原作モノ”ばかリ!?夏ドラマ徹底批評!」の後編。

ドラマ解説者・木村隆志氏、日刊スポーツ芸能担当記者・梅田恵子氏、ライター・吉田潮氏、久代萌美フジテレビアナウンサーが、ドラマ通としての覚悟を持って現在放送中の夏ドラマを徹底的に斬りまくった。

梅田「これで記憶喪失が出てきたらフルコンボ(笑)」

まずは、主人公が冤罪で警察に追われながらも、白血病の娘の命を救うために奔走するサスペンス『TWO WEEKS』(フジテレビ・関西テレビ制作)。ドラマティックな要素の過剰さに「乗り切れない」という意見が集まった。

木村:冤罪の逃亡劇というのは昔からある題材で、古いかな、という気はします。韓流ドラマのリメイクだけにケレン味たっぷりでありながら、一方でカッコよく作ろうとしているのが整理しきれていないようで、まだ僕はハマれていません。

吉田:主人公の娘が白血病だとか殺人事件が起こるとか、いろんな要素がつながっている話なんですけど、詰め込み過ぎて付いていけなかったんです。ただ、主人公の乗った車がトラックに突っ込まれる1話のシーンは非常に迫力があったので、引き続き…とは思っています。

梅田:生い立ち、病、冤罪、交通事故、韓流ドラマの要素を何でも詰め込んでいて、これで記憶喪失が出てきたらフルコンボかと(笑)。でも、主演の三浦春馬さんがものすごく魅力的で、グイグイ引っ張っていくんです。この主演に付いていこうと思っています。

久代:私もこれ大好きです。2週間の中でいろんなことが解決していくストーリーの中で、裏の裏もありそうで…。いろんなことが判明するのを楽しみに見続けたいです。

吉田「日テレが東村アキコ原作を扱うと…」

婚活疲れのヒロインと旅先で出会った男性との恋模様を描く『偽装不倫』(日本テレビ)。原作の改変に問題ありという厳しい指摘が飛び出した。

木村:これは“やっちまった系”ですね(笑)。原作ではヒロインの相手役が韓国人で、旅先は韓国なんです。ドラマでは相手役を日本人にして旅先も福岡にしたことで、一夜の過ちとか、歯の浮くようなセリフといった要素が宙に浮いてしまった。

あと、番宣で杏さんが実生活は3児の子育てで幸せだということをたくさん話しているので、モテない、アラサー32歳、婚活失敗続きの女性の役が見ていて全然ハマってこない。これは杏さんの責任ではなくて、バラエティとドラマの連係の話にもなってくると思います。

吉田:日テレが東村アキコの原作を扱うと一番大事な設定を変えてしまうという、すごく残念な例の一つです。確か『東京タラレバ娘』も(原作の)年齢を下げたんですよ。重要な部分を変えて、大失態だなと思います。

梅田:私は、心の声をしゃべり過ぎるドラマが苦手なんです。このドラマは、1時間ほぼ心の声でヒロインが自分にツッコミまくっていて、あの進め方が受け付けられないです。ごめんなさい、っていう感じ。

久代:展開していく「あり得ない話」がアニメを見ているようで、ありえないんだけど、私はすごく好きです。

梅田「今、法医学ものをやると『アンナチュラル』と比べられてしまう“宿命”がある」

偏屈だが一流の腕を持つ解剖医が遺体を手掛かりに事件を解決する『サイン―法医学者 柚木貴志の事件―』(テレビ朝日)。このところ増えている法医学を扱った作品の中でも、既視感が否めないという評価となった。

梅田:普通だなって(笑)。今、法医学ものをやると『アンナチュラル』(2018年・TBS)と比べられてしまう“宿命”があると思うんです。

同じ法医学ものの『監察医 朝顔』(フジテレビ)では、母親を喪失したヒロインとお父さんの再生というテーマを盛り込んでいますよね。法医学ものをやるなら、何か違う視点を盛り込んでいかないと難しいでしょう。

吉田:新しいものが1つもないというか…パワハラで問題発言ばかりする主人公の男と、負けん気の強い新人女性の組み合わせも、どこかで見たようだし、せっかく大森南朋主演という異色のドラマなのに、微妙な出来になってしまいました。

木村「目新しさはないけど、男のロマンを追いかけている」

池井戸潤原作、低迷する実業団ラグビー部のチーム再建に取り組む会社員の奮闘を描く『ノーサイド・ゲーム』(TBS)。熱血ビジネスストーリーで日曜劇場という枠の王道路線と思いきや、これまでと違うテイストが加わっているということへの好評価も。

木村:スポーツとビジネスのシンクロというテーマは、いかにも池井戸さんの日曜劇場という感じがします。目新しさはないんですけど、男のロマンを徹底して追いかけています。女性視聴者をあまり頼りにしなくても、「こっちで行くんだ」というところに制作側の覚悟を感じます。

梅田:私はラグビーが大好きなので、毎週見ています。60分ほぼ登場人物のアップの映像なんですが(笑)、ラグビーのシーンではワイドで広々と見せる映像もあって、そこはとても美しくてスッキリ見られますし、大泉洋さんは最高のバランス感覚の演技をしています。

吉田:私は日曜劇場が嫌いで、汗と涙と男のロマンみたいなのが本当に苦手なんですよ。ただ、今回違うのは、松たか子です。今まで主人公の妻は、夫に唯々諾々でそっと支える、みたいな描かれ方だったんですけど、松たか子演じる妻は夫に文句を言うんです。

怒れる妻、物を言う妻を描いているので、私はそのシーンのためだけに、このドラマを見ます。

辛口ながら、面白く見るポイントを教えてくれるドラマ通の鋭い視点を参考に、クライマックスに突入する夏ドラマを楽しみたい。