提供バックが入る前、開始10分も経ってないシーン

若宮の部屋

コーヒーの入ったマグカップを手にした獅子雄(ディーン・フジオカ)に若宮(岩田剛典)が一言

「こぼすなよ!」

はい、ここで「若宮がツッコんだー!!」って即座に反応したあなた。「シャーロック」検定2級合格です!おめでとうございます!!

僕は残念ながら、「こぼすなよ!」の後、提供バックになってようやく「え…今、ツッコんだ!?」と一瞬遅かったので不合格です。悔しい!!こうして毎週レビューを書いている身でありながら即座に反応できず大変申し訳ございませんでした。ま、そんな検定、ないんですけどもね。

え?あなた「こぼすなよ!」すら覚えていないですって?ちょっとちょっと、これまで何見てたんですか、若宮に誰かが熱いものかけちゃって「アッチー!」ってなるのがお決まりだったじゃないですか?それを第6話にして未然に防いだどころか、ツッコんだんですよ?あの若宮が。そんなあなたは第1話から視聴やり直し!!

というのは冗談で、みなさん、自由に見てくださいね。ただ言いたいのは、登場人物の成長をこんな細かい小ネタでも表現できちゃうそんなドラマ、なかなかないってことです。

今回は特にその小ネタも含め、かなり笑わせにきた回でしたね。

冒頭の“不穏なハッピーバースデー”からの、今回の事件“前世殺人”の種まきで緊張感が高まったと思ったら、寝てたのに突然中国語を絶叫して飛び起きるトリッキーな獅子雄登場!という緊張と緩和。

だけど、ただのトリッキーじゃなくて、突然の中国語は前世の村の解説という獅子雄の博識ぶりも表した気の利いたシーンでもあり、クレイジーとクレバーを行き来する絶妙な「誉獅子雄」のキャラクター造形は秀逸ですね。

あと最高だったのが「俺は眠れなくなったことはない、眠りたいと思ったことがないからだ!」とドヤる獅子雄。簡単な言葉で紡がれたセリフなのに凡人の僕にはちょっと瞬時に理解できなくて巻き戻しちゃいましたよね。

「眠れなくなったことはない」なぜなら「眠りたいと思ったことがない!」ってすごいセリフですよ。っていうかどんな人間だよ。どうしたらこんなセリフが思いつくんですか、井上由美子先生(脚本)!それでいて獅子雄ならさもありなんとちゃんと思わせてくれる、セリフに命を吹き込んでいるんですね…ディーンさん、すごい。

そしてもちろん、今回は小ネタとトリッキーな獅子雄で笑わせたいだけじゃなく、誰が犯人なのか?全く想像できない油断ならない物語で、“前世殺人”のトリックは序盤であらかた予想がつきそうなのに、トリックのその先に想像もしていなかったさらなるドラマを用意してくる…という巧みな構成。

確かに、“記憶を操作された少女”を演じたのが吉川愛さん…井上由美子先生脚本の『緊急取調室』(テレビ朝日)でも強烈なキャラクターを演じ世間をザワつかせたあの子、フジテレビでは名作『リーガル・ハイ』の中でも屈指の回で“天才子役編”(第1期)に出てきたあの子!だったので、このまま素直に終わるはずがないと思ってたら、やっぱり期待を裏切らない僕らの吉川愛さん!ありがとう!!

そして、その母を演じた霧島れいかさんも、絶対普通のお母さんじゃないと思ってたら、犯人の犯行動機となってしまう「タイプじゃない男性だったので…」というパワーワード。なんていうか、僕らはため息しかでないですよ…。

このドラマを見るとつくづく思うんですけど、やっぱり並みの男って何のドラマも生み出さないですね。いつだってドラマチックを演出してくれるのは女性で、男なんて今回“記憶の操作”までしたのに、その後の女性たちの何気ない感情やセリフで全部自分の物語にして主人公になっちゃうんですもん。

え?このドラマ、男性のディーンさんが主演じゃないか?って、だってディーンさんは“並みの男”じゃないじゃん。あぁ、ディーンさんのような並みじゃない男になりたい…。僕だってドラマの主人公になりたい!

いけないいけない。ついつい、自分の気持ち悪い願望をさらけ出してしまいました。

そんなことより次週の予告、“少年獅子雄”が一瞬出てきて、それだけでもう楽しみ!来週も見逃せない!!

text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)