『PICU 小児集中治療室』第9話完全版
「俺が諦められる時間をください。母ちゃんと離れる覚悟ができるための時間を」。
“しこちゃん先生”こと志子田武四郎(吉沢亮)は、膵臓がんの治療を拒否している母・南(大竹しのぶ)にそう言って頭を下げ、一度だけという約束で、東京の病院で検査を受けることに同意してもらう。
<ドラマ『PICU 小児集中治療室』これまでのあらすじ完全版>
羽田空港に降り立った武四郎と南が向かったのは、丘珠病院のPICUの科長・植野元(安田顕)から紹介してもらった東京中央記念病院の腫瘍内科医・原口裕二(平原テツ)のもと。
そこで、南はいくつかの検査を受ける。原口医師がこれまでに手がけた難しい症例についても事前に調べており、一縷の望みを託していた武四郎。
だが南は多発転移しており、寛解は難しい状況だった。原口から検査結果を聞かされて診察室から出てきた武四郎の姿を見た南は、何かを感じていた。
武四郎は、「東大病院に行こう」と南に言うと、タクシーに乗る。しかし、その途中でタクシーを止め、柴又・帝釈天を回る観光バスに乗りたいと言いだす南。
南は、武四郎が東大病院の予約を取っていないことも、原口医師から言われたであろうことも察していた。
観光を楽しんだ2人は、予約していた高級旅館を訪れる。武四郎は、食事をとりながら、「なぜ治療をしないのか教えてほしい」と南に頼んだ。
そこで南は、武四郎の父のことを話しだす。
優しくて、人が好きだったこと。この人の子どもは世の中に残さないといけないと思って不妊治療をしたこと。不妊治療が上手くいかず謝ったときには「僕の大好きな人のこと、そんな風に言うな」と怒られたこと…。
南は、不妊治療をやめてすぐに武四郎を身ごもっていた。ところが、武四郎が生まれてしばらくしてから、武四郎の父は職場で倒れたのだという。
肺がんで余命半年と宣告された武四郎の父は、つらい治療の影響もあってか人が変わったようになり、南にも当たるようになったらしい。
自身の病状について理解していた南は、病院ではなく自分の家で、武四郎のことを頭に焼き付けて最期を迎えたいと強く願っていた。
「わかった」。そう答えた武四郎に、「武四郎、愛しているよ」と告げる南。武四郎も、「俺だって、大好きだよ、母ちゃん」と返し…。
南は、札幌に戻って1週間もしないうちに息を引き取る。葬儀には、植野はもちろん、矢野悠太(高杉真宙)、涌井桃子(生田絵梨花)、河本舞(菅野莉央)も参列した。
葬儀を終えた武四郎は、悠太たちと一緒に志子田家で食事をし、そこで桃子に南からのプレゼントを手渡す。それはおくるみだった。
そこには「桃ちゃん 元気な赤ちゃんを産んでね。母親になるのも、悪くないわよ」と書かれたメッセージカードが添えられていた。
あくる日、武四郎は自ら願い出て仕事に復帰する。
綿貫りさ(木村文乃)や今成良平(甲本雅裕)たちは、そんな武四郎のことを心配していた。
そこに、喘息の発作を起こして自宅前で倒れていたという少女・奥野紀來ちゃん(阿部久令亜)が救急搬送されてくる。紀來ちゃんは、喘息の発作がひどく、呼吸が上手くできていない状態だったが、治療によって落ち着きを取り戻した。
夕方、目を覚ました紀來ちゃんに、武四郎は喘息の発作で倒れて病院に運ばれたことを説明すると、父親(永岡佑)がもうすぐ病院に来ることも伝えた。
だが紀來ちゃんは、それを聞いた途端、「絶対ダメ!」「帰る!」と言って暴れ出してしまう。
植野たちは、紀來ちゃんが父親と2人暮らしであることから、ネグレクトの可能性も考慮。ほどなく、植野は、病院に駆けつけた紀來ちゃんの父親と会うが、虐待を疑われたことに怒っていた。
そこで植野は、紀來ちゃんが24時間近く発作状態にあったことを伝え、「紀來ちゃんの顔をしっかり見てあげていましたか?」と問いかけた。
その夜、思わぬ事件が起きる。紀來ちゃんが勝手に酸素マスクと点滴を外してしまい、苦しみ出したのだ。アラームが鳴り、駆けつけた武四郎と悠太は、すぐに紀來ちゃんの処置に当たった。
あくる朝、武四郎は目を覚ました紀來ちゃんから話を聞く。そこで分かったのは、仕事と家事に追われ、いつも大変そうな父親に心配をかけたくないという紀來ちゃんの思いだった。
武四郎は、そんな紀來ちゃんに、「大切な人が苦しんでいるのに気づけないことのほうがうらいんだよ」と伝えて…。
夜、武四郎のもとへ、函館の病院に移った小松圭吾くん(柊木晴太)の同級生・藤原優里ちゃん(稲垣来泉)ちゃんがやってくる。
優里ちゃんは、良くなったと思っていた圭吾くんがもう話もできない状態であることを知ってショックを受けていた。
「圭吾、死んじゃうんでしょ?なんで見捨てちゃったの?お医者さんなら治してよ!」と泣きじゃくりながら訴える優里ちゃん。武四郎は、「ごめんね」と言って頭を下げるしかなかった。
翌朝、植野は、札幌共立大の救急科科長・渡辺純(野間口徹)から電話をもらう。渡辺は、「あなたは東京に戻る人です。ここは我々に任せるのが賢明じゃないですか?」と植野に告げた。
電話を切った植野は、武四郎のデスクがキレイに片付けられていることに気づく。そして植野のデスクには、退職願が置かれていて…。