毎週月曜21時~放送中のフジテレビ『シャーロック』。古典ミステリーの傑作「シャーロック・ホームズ」シリーズを原作に、令和の東京を舞台に映像化。そのスタイリッシュな映像と独自の世界観で熱狂的なファンを生み出している。
ドラマも終盤に突入する中、個性あふれるキャラクターたちの動向も気になるところだが、フジテレビュー!!では、 誉獅子雄役のディーン・フジオカ、若宮潤一役の岩田剛典、江藤礼二役の佐々木蔵之介の衣装の特徴を探るべく、担当するスタイリストの勝見宜人 (かつみ・のりひと)さんに話を聞いた。
<誉獅子雄について…勝見宜人さんのコメント>
印象的な黒いロングコートは、神父さんが着るキャソック
まず、ディーンさん演じる獅子雄ですが、最初に西谷弘監督、太田大プロデューサーと打ち合わせをしたときに「世界中にある、どのシャーロック・ホームズともかぶりたくない」との要望をいただいて。
とにかく獅子雄を「どこぞの者かわからない人物」にしたいと思い、見た人がギョッとするくらい長いコートかマントを着せたいと思いました。僕の中にあったのは「ロングコートだけは外したくない」という思いでした。
今回は、スタイリストチームを組んで渡辺慎也くんにも加わってもらい、印象的なロングコートを探し回り、その中から一番“キワモノ感”のあった、古着の黒いコートに決まりました。
実はこれ、神父さんが着用するキャソック(カトリック教会の神父や聖公会の聖職の平服に用いられる立襟の祭服)なんです。本来は、前合わせで着るところを、開いてコートのように着てもらっています。
そして、全体をなるべく“黒っぽい塊”のようにして、主人公らしからぬミステリアスな雰囲気を放つ存在にしようと思いました。
コートの中は、英国紳士ではなく、外国の炭坑夫とか水夫のような労働者風にして、ディーンさんの持つ美しさに、纏う物でいい意味の“汚し”を入れたいと思いました。監督とも話し合ってアニメのキャラクターのごとく、ほぼ着替えない=生活感を排除するという設定にしました。
ディーンさんとは 『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』 でご一緒していたこともあって、今回かなり冒険的なスタイリングの提案をしたのですが、すんなり着こなしていただき、ハマっていると感じています。ただ、最初にあのコートをご覧になったときには、笑っていましたね(笑)。
首元の巻物は、西谷監督からの「何かを巻かせたい」というリクエストでした。実は、これはストールではなくシャツなんです。その場にあったシャツを巻いてみたところ、「いいね!」ということになり、そのシャツを切ってストールにして使っています。
それともう一つ、監督から 「獅子雄は、ピッキング道具を常に身に付けていたい」という要望があり、針金をグルグル巻きにしてアクセサリー兼ツールを作りました。
<若宮潤一について…勝見宜人さんのコメント>
ブルゾンから出るくらいのやわらかいニットでやさしさを演出
若宮は、獅子雄とは正反対の シルエットを出したいと思いそこに可愛さとインテリ感を混在させた、ショート丈のアウターを基本としたコーディネートを組みました。
岩田さんとは初めてご一緒したということもあり、 衣裳合わせではとにかくたくさん試していただき、今の若宮が出来あがりました。
若宮に関しては、ハードになりすぎないようにしています。ニットもタイトではなくて、ローゲージのざっくり感で「ちょっとしたやさしさを出したいな」と思って。
若宮はバイクに乗る“バイカー”なので、インナーをシャツやパーカすると、バイカー度が高くなってしまうので、それを避けるためにもニットのキャラにしました。
ニットの色味も序盤は、柔らかい色が多いですが、後半に行くにしたがって、ダークトーンにしています。それは、“獅子雄の影響を無意識に受けている感じ”を視覚的に表現したものです。
<江藤礼二について…勝見宜人さんのコメント>
丈にこだわりぬいたトレンチコートで“刑事”感を
佐々木さんとは長いお付き合いなのですが、江藤に関してはいつものように格好良くコート、スーツを着こなしてもらっています。
スタイルとしては、「ザ・刑事」ですね(笑)。一目で刑事とわかるように、ここは外さないで、王道を行こうと。ただ、コートの丈にはこだわりました。 極めてオーソドックスなトレンチコートですが、 短すぎず、長すぎずという絶妙なところを表現できているかなと思っています。
スーツは、定番ものだけではなく、チェック柄などでお洒落に気を使っていつつも、ネクタイはゆるく締めて、少しだらしない感じも出すように。刑事でありながら、少しひねくれた印象も意識しています。
<視聴者のみなさんへのメッセージ>
3人のキャラクターは、アニメの主人公みたいな考え方なので、とにかく着替えさせたくなかったんです。日替わりで変わっていくようなものとは、まったく違うアプローチですね。ですから、 あの3人に関して、衣装は今後も変わらないです。
ファンの方たちは「もっといろんな衣装が見たい」といったご意見もあるかもしれませんが、3人のバランスにこだわり、それぞれのキャラクターが前面に出るようなスタイリングを心がけました。これからも『シャーロック』を楽しんでいただければと思います。
<勝見宜人さんプロフィール>
1996年、スタイリスト直井政信氏に師事。アシスタントとして活動後、2000年に独立。現在はKoa Hole inc.に所属。広告や雑誌、CDジャケットのほか、アーティストの衣装デザインもするなど、幅広いジャンルで活躍中。また、ドラマ『ガリレオ』シリーズや、『昼顔』、『モンテクリスト伯‐華麗なる復讐‐』(すべてフジテレビ)など映像作品のスタイリングも担当している。勝見さんの公式サイトはこちら→https://www.koahole.info/work