怖い怖い怖い……!
東京の夜景が見渡せる屋上で、不気味に国歌斉唱する江藤警部(佐々木蔵之介)。
最終回前の引きとして、なんて最高に気になる終わり方!
加えて、自分で書いておきながら、もうその字面だけでも怖い状況なのに、今回第10話のキーワードだったどころか、『シャーロック』全体のキーワードだった“マジシャンズセレクト”をこの衝撃のラストカットに重ねると、さらに怖さが増してくるという構造…。
だって、そのシーンの前にあった江藤警部と小暮巡査(小暮クミコ)との会話が、
江藤警部「あいつが解決してるわけじゃない。あいつに解決させてやってるだけだ。あいつが解決するよう、俺たちが導いてやってる。わかるか?」
小暮巡査「わかりません」
これ、江藤警部が獅子雄(ディーン・フジオカ)のジェスチャーを交えながら、いつもの感じで、何も考えてない、テキトーな感じの雰囲気だったもんだから「江藤警部のキャラ、やっぱおもしろいなー」なんて、クスっとすらしたユーモアなシーンだと思ってたのに、5分後にはそのセリフが恐怖に感じる…どころか、第1話から振り返って、獅子雄が解決してきた事件は、江藤警部が全て“導いてた=マジシャンズセレクト”だったの?って、最終回への“引き”としての効果はもちろん、これまでを全部ひっくり返して“振り返り”の効果も出す重要なシーンでもあったなんて…。
いま思えば、終盤ダメ押しするように、獅子雄と若宮が“マジシャンズセレクト”を丁寧に実践しながら解説してたもんなー。まさか衝撃のラストに向けての助走だったとは。怖い怖い怖い……!
もうラストカットがあまりにも怖いから、ちょっと忘れましょう。
なので今回の第10話「都知事の息子誘拐事件」を振り返って、一旦心を落ち着かせますね。
今回のハイライトはもちろん、解決編になぜかサンタクロース姿で登場した獅子雄でしょう。
第一声が、
「ハウハウハウ…。狂ったようだな、誘拐の計画」
いやいやいや、獅子雄のそのシチュエーションの方が狂ってるだろ!って視聴者の大半がツッコんだはず。しかもそのあと、わざわざ消防服を着て、非常ベルを鳴らして、煙をまき散らせながら真犯人をおびき出すという、獅子雄のクレイジーコンボ。
あともう一個ツッコミを入れたのが、お待ちかね“今日のバイオリン”。「少年シャーロック現る」だった第7話の“野球の試合中”と同じく、“バスケットの試合中”での演奏だった今回。前回が獅子雄の頭部にボールが当たってズッコケるというオチがついてたもんだから、今回もバスケットボール当たっちゃう?むしろ誰かとぶつかっちゃう?って気が気じゃなくてスリリングでしたよね。
だけど、結局当たんないんかーい!って心の中でツッコんだ後、最後まで演奏できた獅子雄に安堵の表情を感じたのは僕だけではないはず!!
…ダメだ…。
今回の面白ポイントを振り返ってはみたけれど、やっぱりラストの江藤警部の恐怖が襲ってくる。これまで散々『シャーロック』は繰り返し見たくなっちゃうって言ってきたけれど、江藤警部視点でもう一回全部見直したら、さらに深みが増してくるのかな…ああ怖い怖い。いくら時間があっても足りないよ。
で、よくよく思い返したら、前回と今回、獅子雄と若宮が“最後(最期?)”をやたら強調してたけど、強調してたってことは、二人は江藤警部のことを予感していた…気付いてたってこと…?それを考えると…あぁ、やっぱり怖い…。
最終回、震えながら待つしかない!
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)