10月8日、「千夜、一夜」の公開記念舞台挨拶が行われ、田中裕子さん、尾野真千子さん、安藤政信さん、久保田直監督が登壇しました。

本作は、ドキュメンタリー出身の久保田監督が、日本で年間約8万人発生している行方不明者の「失踪者リスト」から着想を得て、8年もの歳月をかけて完成させたもの。

本作の公開を迎え、主演の田中さんは「諦めずに今日という日を迎えられたこと、スタッフの方々やキャストのみなさんに感謝しています」と挨拶しました。

田中さんは、突然姿を消した夫を30年に渡り待つ女性・登美子役を演じており、脚本を読んだ印象について「脚本の青木さんとは『いつか読書する日』でご一緒したことがあり、セリフは多くないけれど、セリフとセリフの間にまるで“風”のようにいろんなことを感じられる印象があります」と紹介。

「でも、その“風”のようなものをうまく演技で伝えるのがなかなか難しくて。今までもなかなかできなかったと思うし、今回もできなかったかなって思っています」と振り返りました。

一方で、2年前に失踪した夫を探す女性・奈美を演じた、尾野さんは「近年エンタメに特化した作品が多い中で、いい意味で地味な映画です。本作は観た人も私たちも、何かを考えさせられる映画だと思っています」とアピール。

続けて、本作への出演に関し「個人的に、前回田中さんと共演したときにやり残したことがあり、本作では面と向かってしっかりとお芝居するシーンがあったので、ぜひ出演したいと思いました」と明かしました。

尾野さんが演じる奈美の夫・洋司を演じた安藤さんは、本作について「(フリーランスの)“役者としての所在地”を考えているタイミングで、脚本を読み、『今の自分とリンクするところがある』と感じました」と当時の心境を。

尾野の印象的な行動を田中が暴露するも…

田中さんとの共演について「田中さんと演技していると、まるで魔法にかかったように、すべてを見透かされているような、動けなくなるような感覚になりました。思わず『旦那さん』というセリフを嚙んでしまったほど…」語ると、キャスト陣含め会場から 笑いが起きました。

本作の舞台である佐渡島で印象に残っていることを聞かれると、田中さんが「撮影終わりの帰り道で、『虫を採っている女の子がいるな』と思ってよく見たら、真千子ちゃんでした」と伝え、尾野さんは「虫じゃなくて、花を摘んでました」と弁明。

最後に久保田監督は、「“待つこと”がテーマの映画ですが、新型コロナ感染拡大に伴い撮影が一時中断になることもあり、 8年かかって完成を“待ち続けた映画”です。それがあったからこそ、より奥の深い映画に仕上がっていますので、多くの方に感じとっていただきたいです」とコメント。

田中さんは「その8年を“千夜”と例えるならば、今日が“一夜”です。本作を観た後、家に帰って部屋の明かりをつけるときに、ふとこの映画のことを思ってくれるようなことがあればいいなと思います。そんな一夜があることを願っています」と呼びかけました。

<作品概要>

映画「千夜、一夜」は、テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほか全国公開中。

配給:ビターズ・エンド
©️2022 映画「千夜、一夜」製作委員会