甲斐翔真さんと立石俊樹さんが、お互いの“王子様らしさ”を語りました。
ミュージカル「エリザベート」で、オーストリア皇太子・ルドルフをWキャストで演じる甲斐さんと立石さん。
ともに帝国劇場初登板ながら、甲斐さんは「RENT」、「マリー・アントワネット」と大作へ連続出演。一方の立石さんは、アーティストとして活動しながら、「『黒執事』~寄宿学校の秘密~」や「ロミオ&ジュリエット」などでメキメキと頭角を現しています。
注目作に挑む心境や役柄への思いを聞いたほか、お互いの印象について直撃。共演経験のある二人だけに、和気あいあいトークとなりました。
甲斐翔真さん&立石俊樹さんフォトギャラリー(写真10点)
花總まりとの共演は「得るものしかなかった」(甲斐)
――出演が決まったときの心境を聞かせてください。
立石:「エリザベート」への出演を一つの目標にしていたので、素直にうれしかったです。同時に、長く愛されている作品のキャストの一員に選んでいただけたことで、歌やお芝居などの技術をもっと上げなくてはとプレッシャーも感じました。
――昨年のインタビューで、「近い将来、甲斐さんがトート(「エリザベート」に登場する“死”の概念)を演じる姿が見える」と伝えたところ、「まずは『ジキル&ハイド』がやりたい」と話していましたね。トートへ一歩近づいたわけですが…。
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甲斐:ミュージカルをやりたいと思ったきっかけが、韓国で観た「ジキル&ハイド」だったので、そこは譲れなかったですね(笑)。
「エリザベート」はミュージカル界のトップに君臨するといっても過言ではない作品で、ミュージカルファンの皆さんはおそらく痛感していらっしゃると思うのですが、まずチケットがとれない。特別なものなんですよね。そんな作品に参加できることが楽しみですし、帝国劇場のステージに立つのも僕の役者人生において大きなポイントになると思います。
――お二人は昨年、「ロミオ&ジュリエット」(甲斐=ロミオ役、立石=ティボルト役)で共演していますが、当時の印象を聞かせてください。
甲斐:トシくんは感情でお芝居をする人なんだなと思った。どの役でも感情は大事だけれど、あらかじめ作り込むのではなく、その瞬間に生まれたものに反応していける人だなって。
立石:「ロミジュリ」は約2ヵ月のロングラン公演でしたが、翔真はその日のベストをきちんと発揮できて、長期間キープできる人。人間だから体調が万全でない日もあって、感情を頂点までもっていけないことがあると思うのですが、ロミオが抱えた繊細な部分を毎公演、新鮮に表現していたので、すごいなと感心しながら見ていました。
――「エリザベート」といえば、花總まりさんが四半世紀以上にわたってタイトルロールを演じてきましたが、花總さんと甲斐さんは昨年、「マリー・アントワネット」で共演していますね。
甲斐:元・愛人役でした(笑)。
立石:ワオ!
――花總さんとのお芝居で多くのものを得たのではないですか?
甲斐:得るものしかなかったです。ミュージカルをやるようになってまだ1年ぐらいだったのに、フェルセンという花總さんの相手役を演じることに大きなプレッシャーを感じていました。理性で動くというより目の前のものに必死で、考える隙すらなかった。
でも、振り返ってみると、体の使い方や歌への感情ののせ方など、こんなにも多くのものを学ばせていただいたんだなって。もちろん天性のものもあると思うのですが、王族としての佇まいや衣裳捌き、姿勢などたくさん勉強させていただきました。
「脆さもあるけれど、ルドルフは意志が強く行動力もある」(立石)
――ルドルフの印象を聞かせてください。
立石:ルドルフを演じるとなって改めて考えてみたのですが、皇太子として生まれたものの、母・エリザベートからは引き離され、父のフランツ・ヨーゼフとは対立。もし、自分が同じ状況だったとしたら、はたして彼のような決断ができたのかなって。母と再会したときに本心を明かしたところで脆さが垣間見える場面もありますが、意志が強く、行動力もあるので、弱い人間ではないと感じました。
――そんなルドルフをどう演じたいと考えていますか?
甲斐:ルドルフが生きていた時代に限らず今もそうですが、自分がどこの家に生まれてとか、誰の子どもで、など選べないじゃないですか。彼は生まれながらに皇太子だし、母親はいないも同然で、何もかも普通ではない。現代の僕らの感覚で演じたらまったく違うものになってしまうと思うので、その時代についてきちんと勉強し、なぜ、彼が最後に“死”を愛することになるのか、逆算してお芝居をつくっていきたいです。
――佇まいなどで意識したいところはありますか?
立石:ルドルフは作品の終盤、重要な場面で登場し、総出演時間は約20分と長くありませんが、孤独な少年期を経て、このような青年に育ったのだという彼のバックボーンはきっと立ち振る舞いにも表れると思うので、そこは気を付けて役作りをしたいです。
甲斐:彼のバックボーンを考察するのもファンの皆さんの楽しみの一つでしょうから、そこはぬかりなく準備したいですね。そして、とても素敵な衣裳をしっかり着こなせるかも勝負。演出の小池(修一郎)先生のご指導をうけながら、“皇太子感”を出したいです。実は一幕のとあるシーンで僕たちは登場するのですが、そこでお客様に気づかれないか心配です。
立石:「ルドルフを探せ」?
甲斐:探せっていうか、いるけどね(笑)。
立石:翔真は物理的に大きいからとけ込めないよ。
甲斐:若干、膝を折り曲げながら、もしくは猫背になっているかもしれない(笑)。
「トシくんはお付きの人に葉っぱであおがれていそう(笑)」(甲斐)
――役柄にちなんで、お互い“王子様っぽさ”を感じる部分があれば教えてください。
立石:髪型。
甲斐:髪型は関係ないでしょ(笑)。トシくんは言わずもがなだよね。重力が一人だけ違うというか、浮いてる。Gが1以下。ふわ~っと幸せなオーラをまとっていて、お付きの人に大きな葉っぱであおがれていそう。
立石:そういう育ち方はしてないけどね(笑)。
甲斐:お姉ちゃんが二人いるでしょ?初めての男の子だから、きっと皇太子のように可愛がられたんだよ。
立石:翔真は長男だもんね。今、24歳だっけ?早い時期から芸能界にいるからか、貫禄があって紳士的。僕が浮いているからそう感じるのかもしれないけど(笑)、地に足がついている。その落ち着きが羨ましいし、学ばせてもらってます。
――年齢の話が出ましたが、お二人とも公演中に誕生日(甲斐=11月14日、立石=12月19日)を迎えますね。
甲斐:いつ?
立石:12月19日。
――甲斐さんは帝劇で、立石さんは御園座で誕生日を迎えます。
立石:…みその…座?
甲斐:名古屋の劇場。
立石:誕生日の話をしていたから、そういう星座があるのかと思って考えちゃった(笑)。
甲斐:ほら、そういうところが「1+1=7」(※下記動画参照)の人なんだよ(笑)。
立石:でも、幸せだよね、誕生日当日に公演ができるのって。
甲斐:僕はこの2、3年、舞台上で誕生日を迎えている。役者冥利に尽きるね。
立石:「役者冥利」。久々に聞いた。覚えておこう!
――本番への意気込みをお願いします。
甲斐:まずは帝国劇場から始まって、日本でトップの劇場をめぐっていくわけですが、自分が「エリザベート」に出演することがいまだに信じられません。1分たりとも無駄にしないように僕のすべてを注ぎ込んで、ルドルフをつくり上げたいです。
立石:長くこの作品に携わられている方々や、大先輩の皆さんがいらっしゃる中、僕みたいな若造が…。
甲斐:僕のほうが若造だよ(笑)!
立石:ミュージカル歴は僕のほうが短いので、キャスティングしていただけて、うれしい限りです。これまで大先輩の皆様が積み上げてこられた「エリザベート」の世界観を崩さないよう努めながら、自分の持ち味も最大限に発揮し、いい意味でお客様の想像を裏切って、新しいルドルフの魅力をお届けできるように頑張ります。楽しみにしていてください。
公式サイト:https://www.tohostage.com/elisabeth/
撮影:河井彩美
ヘアメイク:永瀬多壱(甲斐翔真)、SUGANAKATA(GLEAM/立石俊樹)
スタイリスト:山本隆司(style³/甲斐翔真)、MASAYA(立石俊樹)