宝塚歌劇団の元スターに、輝く秘訣やこだわりを語ってもらう「宝塚OG劇場」。第11回は、紅ゆずる(くれない・ゆずる)さんが登場。

華やかで凛とした佇まいと、ユーモアあふれるコメディセンスで、星組男役トップスターとして人気を博し、2019年の退団後は、舞台やテレビの情報番組などで幅広く活躍中。

9月17日(土)から大阪松竹座で上演される舞台「アンタッチャブル・ビューティー〜浪花探偵狂騒曲〜」で主演を務めます。

本作は、紅さんと関西ゆかりのメンバーが送る、歌あり、踊りあり、アクションありの書き下ろしハートフルコメディ。

大阪・ミナミのはずれで武智五郎(三田村邦彦)が営む探偵事務所に、謎多き女性・本間カナ(紅)が「探偵になりたい!」とやってきます。カナはある日、怪しい不動産会社が動いていることを耳にし、特技の七変化で潜入調査を始め…。

フジテレビュー!!は、紅さんにインタビュー。

前編では、作品への意気込みや、役にちなみ“変身してみたいもの”を聞きました。また、タカラジェンヌOGといえば、オシャレで個性的なファッションも魅力のひとつ。そこで、それぞれの“こだわりの一着”も紹介してもらいました。

後編【宝塚OG劇場】紅ゆずる「歯医者さんが大好き!」学会に参加したことも
【写真9枚】紅ゆずる フォトギャラリー

個性派キャストに囲まれ「太刀打ちできないです(笑)」

――本作は、紅さんの退団後初主演舞台として2021年4月に上演予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で全公演延期に。満を持しての上演ですが、出演オファーを受けた当時の気持ちを聞かせください。

私は大阪出身なので、大阪松竹座はもう庭みたいなもの。私が小さい頃、父がよく「松竹座へ観に行ってくる」と出かけていたこともあって、私にとって“身近な演劇といえば松竹座”なので、とてもうれしかったです。

――まわりの反響はいかがでしたか?

ポスターが公開されると、みんなに「めっちゃおもしろくない!?」と言われました(笑)。やっぱり大阪のみなさんは、吉本新喜劇の内場勝則さんや末成映薫さんが出られることに、ものすごく反応してくれました。このお2人は、関西のスーパーヒーローですからね。

――今回の稽古はこれから(7月取材時)ですが、昨年の稽古では手応えはいかがでしたか。

もう、みなさんには太刀打ちできなかったです(笑)。それぞれの個性がすごすぎて、いい意味でまとまってないというか、とっ散らかっていると言うか。

宝塚では、みんなが主役にセリフを渡していくというか、舞台の真ん中にお芝居が集中していく感じがあるのですが、ここはまったく違う。私が何か言おうと思ったところに、全然違うセリフを突っ込んできたりするので、「え?どこで話したらいいんやろう?」と戸惑ったりします。

その瞬間に「あ、完全に負けたな」と思いました。「私のセリフを聞いてくれ!」という勢いで入っていくのが“大阪流”なんですよね。私は宝塚では個性派と言われていましたが、ここに入ると薄れるなと思って…悔しかったです(苦笑)。

――役作りで意識していることはありますか?

みなさんは大ベテランの方々なので、学ばせていただくことが、たくさんあると思います。そこで得た感覚を大切に、いろいろなことに挑戦しながら自分の役を作っていきたいと思います。

あとはやはり、みなさんの個性の中で、自分がどこまで輝けるか、存在感を出していけるか。存在感がない主役って、あんまり意味ないじゃないですか(笑)。「出てきたぞ!」という感じのオーラでいきたいですね。

ボランティア活動に興味津々「子どもたちのために何か」

――紅さん演じる本間カナは、七変化が特技です。紅さん自身が変身してみたいものはありますか?

海外のキャビンアテンダントの格好をしてみたいです。スリット入りのタイトスカートをいたり…。理由は、カッコいいから!日本人があの格好をすると、色気が目立ってしまうけれど、海外の方がやると、アッサリした潔いカッコよさがあると思います。

あとは、ドバイの大富豪になりたい(笑)。裕福な暮らしができるというのもそうですが、あり余るほどのお金を使って、人に対していろいろなことができるから。「こういうことをしてあげたい」と思ったときに、お金を気にせず「じゃあやってみよう」とか、たとえば「子どもたちのために学校を作ろう」とかできると思うんです。

――お金を使って、どんなことをしたいですか?

まずはプライベートジェットであちこちへ行きたいです。ドバイからアメリカ、フランス、イギリス、イタリア、最後にモロッコも行きましょうか(笑)。世界でいろいろな人に会ってみたいです。

あとは昔から、慈善事業に大変興味がありまして。ボランティア活動と聞くと、すごく興味津々なんです。実際にボランティア活動で本格的に海外をまわっている方からは「心が折れる」とか「現実を見ていられない」という厳しい話も聞きますが、私もやってみたいです。

――特に興味を持っているボランティア活動があれば、教えてください。

やっぱり、子どもたちに関わることですね。今、日本の子どもたちも驚くくらい貧困率が高いと言われていますから、まずは自分の国の子どもたちのために、何かできないかと思っています。いずれは日本に限らず、いろいろな国の子どもたちのために活動したいです。

宝塚時代からいろいろと寄付はしていましたが、全然大した規模ではないですし、ある意味、自己満足なのかもしれません。今後は、寄付に限らず、大きな規模で活動できたらと考えています。

<こだわりの一着>“おさまりきっていない”舞台衣装!

――「アンタッチャブル・ビューティー〜浪花探偵狂騒曲〜」の衣装は紅さんが考えたそうですが、こだわりポイントを教えてください。

アンバランスとか、まとまっていない感じを出したくて。なんせ、手にお好み焼きのコテとルーペですから(笑)。タイトスカートはスパンコールで大阪感を出していますが、帽子は大阪感が全然ないし、ブラウスはフェミニン系のレース。おさまっているように見えて、おさまっていない感を出したかったんです。

――ほかのキャストの衣装も、紅さんが考えたのですか?

そうですね。みなさんがそれぞれ手に持っているのは、武器なんです。ほうきとか大根とかタオルとか。“スーパー戦隊〇〇レンジャー”みたいな感じをイメージしました。リーダーはだいたいレッドだし、私は「紅」だし。みなさんも、それぞれの色にしたらいいんじゃないかと。

でも、あまりにも揃っていると“ザ・戦隊もの”すぎるので、あまりまとまっていない感じにしようと考えました。実際の稽古場は、ポスター以上にまとまっていないです。このポスターが負けるんではないかというくらい、魑魅魍魎(ちみもうりょう)としています(笑)。みなさん個性がすごすぎて、素晴らしいです。

撮影:河井彩美