「学生時代にやり残してしまったこと」を体験すべく、現役高校生たちと一緒に本気で同じ時間を過ごす中で、芸能人の素の姿が垣間見えると人気の青春ドキュメントバラエティー『BACK TO SCHOOL!』。

青春を取り戻すように奮闘するゲストの様子を、風間俊介、川島明(麒麟)、杉原千尋アナウンサーのMC3人が一緒に笑ったり、時に涙したりしながら ”秘密基地”のような部屋 で見守っている。

まるで放課後に忍び込んだ秘密基地のようなセットには、様々な工夫とこだわりが詰まっていた。セットデザインを手がけたデザイナーの杉山宏樹に『BACK TO SCHOOL!』セット制作の裏側について聞いた。

コンセプトは「卒業した大人が入れる学校の秘密の倉庫」

杉山:2019年の1月にパイロット版として深夜番組として放送された時から、ゴールデン番組になった今もセットの基本はそのままです。セットを保管する倉庫の場所も取らないようなスタイルでいこうということで、省エネなセットになっています。

最初に「芸能活動で学生時代を楽しめなかった芸能人が、やってみたかったことを追体験する番組、それをレギュラーMCの3人が見ている」というコンセプトを伝えられ、まっさらな状態からロゴのイメージと空間のイメージをデザインしました。

番組ロゴも私が作り、そのロゴが描かれた黒板アートも手描きしております。

青春の青空をイメージしたシンプルなロゴ

セットのコンセプトは「卒業した大人が入れる学校の秘密の倉庫」です。 バラエティ番組ではありますが、飾りが多くて置かれている造形物の密度が濃い、いわゆるバラエティ番組らしいセットではなく、フローリングで白っぽい箱みたいな中に配管が走っているような、学校の隅っこにある倉庫みたいなイメージです。

学校にありそうな小物を集めて倉庫感を出している

セット自体には実はほとんど色が付いていなくて、シンプルな中に小物で色を差していくスタイルになっています。小物もちょっと古いものを使いながら、モダンなオシャレさを出していくっていう感じですね。

あとは、くつろげる優しい空間にしたかったので配置している裸電球も、実際の裸電球にアンバーの色味を付けて優しい明るさにしていたりします。

他にあまりないようなセットですし、小物の力もあると思いますが、川島さんからも「学校に戻ってきたみたい」と言ってもらったことがあって嬉しかったですね。

夕方の秘密基地を再現!VTRの時間帯と照明を連動

窓の外の光が変わる、セットならではの美術効果

杉山:スタジオの窓の外の色はVTRの時間軸と連動させるように提案させてもらいました。 朝の授業から始まって、昼ごはんを食べて、夕方になって学校を出て、ちょっと友達と遊んだり…というような学生の一日の流れを追っているので、VTRが終わってスタジオが映るときにVTRの中の時間と連動させたいと思ったんです。

「朝の爽やかな光から始まって、お別れの夕方のシーンになるとオレンジ系の夕方の光が上の天窓の隙間から差し込む」と、こういう秘密基地で迎える夕方っていいですよねとディレクターとも話をしました。

気付く人はほとんどいないこだわりかとは思いますが、セットの雰囲気によって出演者の方のテンションが変わるところもあると思っています。VTRが最後盛り上がったタイミングでスタジオの光も夕日になって、自然と涙腺が…という効果もあるかもしれませんね。

影の主役!?こだわり抜いた小物

杉山:「これは絶対入れてください」 と小物でこだわって指定したのは、階段の横にある建築家のフランク・ロイド・ライトの名作「タリアセンランプ」です。置いてあるだけで美術室的な要素も出るし、桜の木で作られていて中の電球が灯るといい感じの照明にもなって、かたちもとても個性があります。

「直線で構成されていて美しい」こだわって置いたタリアセンランプ

小物はひとつひとつに意味を入れています。壁にかけられたたくさんの時計はタイムスリップのイメージや、限られた学生の時間も表しています。

バラエティ番組のセットだと現実世界にない造形物が置かれることが多かったりします。色も強い黄色とか赤とか。でもこのセットはかなり自然な色味、現実世界にある色でまとめたので、作っていても新鮮な感じでした。

自分の中では仮想と現実のちょうど中間みたいなイメージですね。セットは仮想的な空間ではあるんですが、ちょっとリアリティを持たせたいので、置いてある小物は全部現実世界にある物で統一しています。

引き算と足し算のバランス、そして遊び

手書きの『BACK TO SCHOOL!』セット図

杉山:セット図はスムーズに描けたんですが、いざ飾ってみると小物の配置が難しかったですね。出演者の後ろには何があった方が良いのか、うるさく見えないようにとか、まだまだ毎回探っている感じではあります。飾りのバランスというか引き算というか、そこは結構難航しました。

じっくり見ると毎回変化が…?

実は結構遊んでいる部分もあって、例えば杉原アナの後ろのデッサン人形のポーズが毎回違うとか。たまに別の位置に飾られていないときもあったり、シンバルを持ってる猿の人形が飾ってあったり(笑)。

杉原アナは進行役で一番多く映りますし、本人の明るい雰囲気に合うように、杉原アナ周りでは遊ばせてもらっています。そういうところも見て頂いて、番組を楽しんでもらえたら嬉しいですね。

<プロフィール>

杉山宏樹/フジテレビ美術制作局デザイナー

2015年入社。『 直撃!シンソウ坂上 』、『7G』、『ジャンクSPORTS』のデザインを手がけるほか、『貴族探偵』、「マスカレード・ホテル」ではデザイン助手も務めるなど、各バラエティ番組のグラフィック制作を担当。