米ロサンゼルスを拠点に和菓子ブランド「MISAKY.TOKYO(ミサキ・トウキョウ)」などフードテック事業を手掛ける三木アリッサさん。
「Forbes JAPAN2021年の顔100人」に選ばれ、テレビ番組などのメディアにもたびたび出演するなど注目される起業家です。
MISAKY.TOKYOの和菓子は海藻を使っているためヘルシーで美味しく、宝石のように見た目が美しいため、アカデミー賞・エミー賞の前夜祭に採用されたり、1億9千万人超のフォロワーを持つセレブ、キム・カーダシアンのフレグランスブランドKKWとコラボしたりするなど、アメリカで人気の存在に。
そんな三木アリッサさんが日本に一時帰国した際、和菓子を携えてYouTube番組『#シゴトズキ』に出演。人気の秘密と日本人としての苦労を聞きました。
「自分のお金は投票である」
――食べてみると、それぞれ香りや食感が本当に違いますね。
元々、私たち日本人の文化では、和菓子は「茶道の世界」なので、主役はお茶でした。つまりお茶に影響しないように、香りや味は強くないのが文化です。
そこで、アメリカにおいて、コーヒーや紅茶などと合わせやすいようにするにはどうしたらいいか考えました。
アメリカ人が好きな「アロマ」に注目して香り豊かな物を選んだり、食感も1粒1粒若干違えたりしています。柚子味は比較的パリパリですが、パッションフルーツ味、ドラゴンフルーツ味は、グミのような食感です。
1粒で色々な食感、色々な食文化、色々な香りを楽しんでもらいたいと思って一粒ずつ拘って作っております。
――アメリカ人の声はどうですか?
値段は1粒8ドル、送料入れると1粒大体10ドルと高いので、皆さんから色々なご意見いただくことはあるのですが、食べていただくと一様に「これは美味しい、新しい」と。
多くのアメリカの砂糖菓子の問題は甘すぎることです。その点、弊社の菓子はナチュラルな味がする。そこがすごく評価が高い。
また、我々は真にアメリカンフェアトレードを作っています。
女性やマイノリティを積極的に雇っていて、キッチンだとマイノリティ率100%です。
我々のお菓子の技術を教えるだけではなく、マーケティングやファイナンスなど、いつか彼らが自分のビジネスを持てるよう支援しているのです。
アメリカにおいて、サステナブルではない会社に対しては買控え運動があります。彼らは分かっているのですよね、「自分のお金は投票である」と。
同じ1,000円を使うのだったら、世の中に良いことをしている人たちから買おうと。
それが未来への投資だって分かっているから、もちろん見る目が厳しいですが、それをクリアしているからこそ、本当に色々なご支援をいただいていると思います。
ただ、マイノリティとして生きる難しさを感じた2年間だったなと本当に思います。
世界的インフルエンサーからの嫌がらせ
――マイノリティというだけで門前払いみたいなこともあるのですか?
そうです。
もちろん良くしようというムーブメントがあるのはアメリカの強みで、我々はそこで選んでいただいていると思いますが、残念ながら今回のコロナの影響で、すごく溝を感じた、また日本人の弱さも感じた2年間でした。
うちがキム・カーダシアンとコラボした時に、すごい嫌がらせを受けました。
とある世界的なインフルエンサーで、彼女は飴を煮詰めてクリスタルの形にするスタイルを使っていました。
弊社は琥珀糖なので400年も歴史があって、デザインも手法も全然違うのですが、彼女は「あいつ、私のこと、パクった」って言ってきたんです。
本当に、こういうこと1つ1つ戦わなくてはいけなくて。
ただ、最終的に彼女は、アメリカでは異例ですが、謝罪文を掲載しました。普通、謝罪文を書いたら訴えられるので書かないのですが、「ごめんなさい…」と。
彼女に対して丁寧にコミュニケーションを取ろうとしてみせたのもありますが、TikTokで「こういうことを今受けていて大変なんだ、助けてくれ」と言ったら、賛同してくれた4,000人以上が彼女のところにコメントを書いて守ってくれたのです。
立ち上がったのは実は日本人ではなく、ほとんどが他のアジア人と黒人でした。
今後も日本人が世界に行くと困難がたくさん出てくるので、そういう人がいたら絶対声を上げて欲しいなと思っています。
――アリッサさんの周囲にも、そういう差別や攻撃にあって夢破れた方がいますか?
やっぱりたくさんいらっしゃいます。
我々はありがたいことに、コロナ禍でむしろ成長した会社なので本当にラッキーでした。
日本の文化を世界に伝えられるようなパワーを持ったので、今度は次なる日本人も引き上げられるような会社になっていきたいと思います。