『元彼の遺言状』第11話完全版

「十ヶ浜強盗殺人事件」を解決したことがきっかけで、剣持麗子(綾瀬はるか)のもとにはなぜか探偵の依頼が続々と舞い込んでいた。

<ドラマ『元彼の遺言状』これまでのあらすじ完全版>

その応対にうんざりしている麗子を尻目に、自由の身となった篠田敬太郎(大泉洋)は、この際だからパスポートやマイナンバーカードを申請しよう、などとはしゃいでいた。

ある日、篠田は自身が書いたミステリー小説を出版社に持ち込む。だが、編集者(平子祐希)から、中身が古過ぎるとこき下ろされ落胆してしまう。

そんな篠田の原稿に興味を持ったのが、ひょんなことで出会った「ウメ出版社」の車崎透(阿南健治)という男だった。

喫茶店で篠田の小説を読んだ車崎は、「古き良きミステリーの奥に光る新しさがある」と絶賛するが、売るためにはプラスアルファが必要だという。そのとき、客らしき女性(阿南敦子)が篠田に気づき、「十ヶ浜の事件が無実で良かった」と話しかけてくる。

そこで篠田のことに気づいた車崎は、「いけるかもしれない」と言って原稿を預かる。

ほどなく、篠田の小説が製本されて事務所に届く。麗子に喜びを伝えたくてうずうずしていた篠田だが、そこに麗子から電話が入る。これからタヒチに旅行に行くという。

そこに、タイミング悪く麗子の元上司・津々井君彦(浅野和之)が麗子を頼ってやってくる。娘の彼氏に会うことになったが、当日になってその男が来なかったらしい。しかも、娘だけでなく誰もその男と連絡が取れないというのだ。

すると今度は、ホストの黒丑益也(望月歩)が訪ねてくる。黒丑は、昨日が誕生日だったらしく、客からもらったというケーキを大量に持って来ていた。

さらに続けて、森川紗英(関水渚)も事務所に現れた。紗英は、友人を通じて、大臣経験もある政治家・嶺村信一(螢雪次朗)の事務所から金庫の中にあった裏金3億円が消えたから助けてほしい、と頼まれたというのだ。

「麗子ちゃんがいなくても、この篠田がいます。このミステリー作家の僕がね」といって見本版の小説を見せる篠田。デビューが決まったと知って驚く津々井と黒丑。紗英は涙ぐんで喜んでいた。

すると、篠田のスマホに、麗子からのメールが届く。何かあったらこのメールアドレスに連絡しろという麗子からの指示だった。だが、なぜかそのアドレスは、麗子が普段から使っているものではなかった。

あくる日、紗英は、嶺村の件についての新たにわかった情報を篠田に知らせる。

「十ヶ浜強盗殺人事件」の一件以来、社交界でも名探偵として知られるようになった紗英は、秘書見習いに扮して潜入調査を始めていた。

金庫が置かれている部屋を使っており、暗証番号を知っているのは、嶺村の秘蔵っ子といわれる佐久間進(脇知弘)、嶺村の長男・泰司(草野イニ)、去年突然秘書になった遠山聡子(三倉茉奈)の3人の秘書。彼らはいずれも金に困っているらしく、嶺村自身も3人のうちの誰かが犯人だと考えていた。

篠田が麗子に紗英からの情報をメールしていると、そこに黒丑が慌てた様子でやってきた。

黒丑は、最大の太客だという女性とのSNSのやり取りを篠田たちに見せる。その女性は、黒丑に贈ったバースデーケーキの中に、サプライズで300万円のダイヤを隠したというのだ。

どのケーキなのかわからなかった黒丑は、店にあったすべてのケーキを「暮らしの法律事務所」に運び込む。それを一つひとつ食べながら探していく篠田たち。そこで紗英は、篠田の小説を客たちに宣伝するよう黒丑に頼んだ。

篠田が出した「さすらい料理人の華麗なる事件簿」は、初版1万部だというが、実は自費出版。篠田は、「自分も個人的に500万円出すから、夢の後押しをさせてほしい」という車崎の熱意に負け、紗英から借りた300万円を渡して自費出版にこぎつけていた。

それを知った津々井は「典型的な詐欺だ」と言うが、感極まっている篠田と、その姿に感動している紗英や黒丑の耳には届かなかった。

そこに麗子から、3億円の件のみ詳細求むというメールが届く。だが篠田は、どうしても麗子からのメールが気になり、麗子がいなくなる直前からの出来事に考えを巡らせていた。

そしてついに真実にたどり着く篠田。

篠田が向かったのは警察の接見室だった。麗子は逮捕されていたのだ。

いつも「篠田敬太郎様」と打ってあった麗子からのメールは、誰かに打ってもらったものではないかという仮説を立てた篠田は、「あなたは剣持麗子ではありませんね」と返信。すると麗子の弁護士から返信が来たという。

接見室で篠田に会った麗子は、なぜこういう事態になったのかは話そうとしなかったが、3億円の件に関して「犯人は、金庫の暗証番号を知っている3人の中にいる」と言うと、「物事は大抵、驚くほどシンプルにできているの」と篠田に告げる。

同じころ、紗英は、仲が良いとは言えない佐久間と泰司が、同じ時間に仕事を終えて帰っていくことを不審に思い、尾行する。…と、2人が向かったのは雑居ビルの中にある「NPO法人 健康促進クラブ」だった。

中では、メタボ体型の人たちがダンスを踊っていたが、そこになぜか、嶺村の取材をしていた記者の1人も訪れる。篠田は、シャーロック・ホームズの「赤毛組合」を引き合いに出し、あの組織は、佐久間と泰司を金庫がある部屋から追い出すために聡子が作ったものだと推理。聡子は、NPO法人の創設にも関わっているはず、というのが篠田の読みだった。

別の日、麗子のもとへ着替えを届けに行った篠田は、健康促進クラブのことを伝える。すると麗子は、「金庫のお金を盗むためにNPO法人を作るバカがどこにいるのよ」と篠田を怒鳴りつけた。早く金を見つけないと顧問の話もなくなってしまう、という麗子。

篠田が事務所に戻ると、紗英が待っていた。紗英に調べによると、健康促進クラブを作ったのは佐久間で、しかも犯人だと思っていた聡子も腰痛クラスの会員だという。

そこにやってきた黒丑は、ダイヤをケーキに埋め込んだ太客と連絡が取れなくなったと言いだす。黒丑と女性のツーショット写真を見た篠田は、その女性をどこかで見たことがある気がしたが思い出せず…。

一方、津々井は、「今、許可をとって娘の彼氏の部屋を調べている」と篠田に電話をしてくる。津々井によれば、壁にはクリーニングから戻ってきたばかりにスーツがかけられ、テーブルの上には菓子折りが用意されていたという。また財布やスマホ、鍵なども残されていることから、何らかの事件に巻き込まれたのではないか、というのだ。

その時、スマホを見ていた紗英が声をあげる。嶺村が不正献金で逮捕されたというニュースが出ていた。

あくる日、紗英は、嶺村の事務所に3人の秘書を集め、篠田ばりに謎解きを展開する。紗英は、「犯人の目的は3億円を奪うことではなく、嶺村を逮捕させること」と断言。「裏金の3億円がなければ選挙が戦えないため、嶺村は必ず裏のルートから金を工面することになるから、犯人はそこをリークすれば良いと考えた」と続けた。

だが、「犯人はあなたたちの中にいる」と言いながらも、それが誰なのかまでわからない紗英。すると聡子が笑い出し、金庫を開けた。

空っぽだったはずの金庫の中には、3億円が。続けて佐久間や泰司は、金庫を一時的にカラにして嶺村に3億円が盗まれたと思いこませたこと、一介の秘書がリークしても逃げられてしまうことから、記者を張りつかせてリアルタイムで裏金の受け渡しの一部始終を押さえてもらったことを紗英に説明した。

つまり、3人は共犯だったのだ。

その日の午後、麗子が事務所に戻ってきた。

たくさんの料理を作って麗子を出迎える篠田。3億円騒動の報告を受けた後、麗子は、津々井の花婿になるかもしれない男のマンション情報を受け取る。

それを見て、すぐに男の居場所に気づく麗子。知らせを受けてマンションに駆けつけた津々井は、マンションとマンションの間の隙間で、足を骨折して息も絶え絶えだった男を発見。彼は、鍵を部屋の中に置いたまま外に出たために締め出されてしまい、外の壁をよじ登って3階の自室に戻ろうとして転落していたのだ。

津々井は、「娘からも感謝された」と大喜びだった。

篠田は、津々井との電話を終えた麗子に「最後の謎は僕が解くよ」と告げて話し始める。

麗子が留置場に入ったのは篠田が原因だった。紗英から自費出版の話を聞いた麗子は、すぐに詐欺だと気づき、車崎から金を取り戻そうとして暴力沙汰になったのではないか、と推理する篠田。

しかし、真相は少し違っていた。麗子に問い詰められて逃げようとした車崎。だが、行く手を阻まれた車崎は、急に麗子から暴力を振るわれたと騒ぎだしたのだ。

しかも、客に紛れていた共犯の女性が、「殴るのを見た」と証言したため、麗子は逮捕されてしまった。その共犯者とは、篠田が車崎に小説を見せたときに話しかけてきた女性だった。

麗子の依頼で、車崎と共犯の女性は、警視庁捜査一課の刑事・橘五郎(勝村政信)らによって逮捕。

ふいに何かを思い出した篠田は、黒丑のSNSを麗子に見せた。黒丑と一緒に写真に納まっていたのは、車崎と一緒にいた女性だった。「紗英から借りた300万円が、黒丑のダイヤモンドになってしまった」と落ち込む篠田。すると麗子は、すでに300万円は紗英に返済したことを伝える。

麗子は、「金は必ず返す」という篠田に、小説を読んだことを告げた。つまらなかったが少しだけ良いところがあった、などと言うと、「また書いてみたら」と続ける麗子。「本が売れたら利子付きで返してもらう」という麗子に、篠田は「やっぱり、麗子ちゃんは優しいんだね」と返した。

その言葉に麗子は、かつて元彼・森川栄治(生田斗真)から、「僕さ、優しい人が好きなんだよね」と言われたことを思い出していた。「私に優しいなんて言う男は、ダメな奴ばっかりね」。そういってケーキを口に運んだ麗子は、何か異物を感じて…。

<ドラマ『元彼の遺言状』は、FODでも配信中(最新回は期間限定で無料)>