いよいよ、水10ドラマ『ナンバMG5』(フジテレビ)が最終回を迎えます。
間宮祥太朗さん演じる主人公・難破剛の“普通”と“ヤンキー”の二重生活を、人情、友情、家族愛、恋、アクションとさまざまな色付けでエネルギッシュに描き、大きな反響を巻き起こしてきた本作。
本広克行チーフ監督とともに、ドラマのかじ取りをするのが、栗原彩乃プロデューサー(以下、栗原P)です。本作は、栗原Pにとって、初プロデュースという記念すべき作品となりました。
フジテレビュー!!では、6月22日(水)の最終回直前に、栗原Pにインタビュー。
前回の第9話は、母校を守るために戦った剛が、警察に連行されるという衝撃のラストで幕を閉じました。間宮さんほかキャスト陣の熱演が見る者の心を揺さぶり、涙腺を崩壊させた物語は、どんな結末を迎えるのでしょうか。
栗原Pにドラマに込めた思いを聞くとともに、“神回”と大きく話題となった第4話や第9話のエピソード、そして最終回の見どころについても語ってもらいました。
主人公が熱く支持されるのは、作り手冥利だった
──先週の第9話は、世界トレンド1位になるなどネット上でも大反響となりましたが、どう見ていましたか?
剛は本当に優しい人なんですよね。最終回で「あいつは背負いすぎなんだよ」という伍代(神尾楓珠)のセリフがありますが、剛には“自己犠牲の人”という側面があるんです。
9話では剛がこれまで守ってきたものすべてが崩壊してしまい、それを見た視聴者のみなさんが剛のために心を痛めてくれました。
剛が振り上げた拳はただの暴力じゃなくて、世直しじゃないですけど…自分のためではなく誰かを守るための拳だっていうことを、8話かけて描いてきたからか、視聴者のみなさんは剛の味方でいてくれたんだと思います。
主人公がこんなにも熱く支持されるのは、本当に作り手冥利でした。
ドラマの最後には必ず「このドラマはフィクションです」とテロップが出ますが、物語の中で描いている難破家の家族愛や、男子3人(剛と伍代と大丸(森本慎太郎))や白百合との友情といった、人と人との関係性や、湧いてくる感情みたいなものは全部ノンフィクション、本物でした、まぎれもなく。
キャストのみなさんのお芝居がリアルで素晴らしいというのはもちろんなのですが、お芝居をも超越していたというか…間宮さんが演じる剛、ではなく、もう剛として、伍代として、みんなそこにいて、そういう本物の感情のぶつかり合いが画に出ていたから、心を動かされた方がたくさんいらっしゃったのかな、と思いました。
──第9話の撮影に臨むにあたって、キャストのみなさんと打ち合わせなどされましたか?
9話で描いた原作のエピソードは確実にドラマの中でやる、というのは最初から決まっていたんです。ですから、衣装合わせの段階で、たとえば難破家のみなさんには「後半、剛のウソがバレる日がやってきて、申し訳ないんですけど、みなさんは剛を責める立場になります」といったお話をさせていただいてました。
神尾さんと森本さんにも、「剛を唯一支えてあげられるのが伍代と大丸なので、その日に備えてめちゃくちゃ友だちになってもらいたいです」と、伝えており、キャストのみなさんは9話に照準を合わせてそれぞれの関係性を作っていってくれたと思います。
難破家のみなさんも「こんなに楽しくて明るい難破家がバラバラになるとすごく悲しいよね」と話をしてくれていて、壊すために作るじゃないですけど、そういうアプローチをしてくださったからこそ、剛の告白シーンの爆発力につながったのだと思っています。
4話放送後から感じた反響の変化
──膨大な原作を1クールでどう描き切るか、制作にあたり苦労されたのではないでしょうか?
それは本当に苦労しました。ただ、「ナンバMG5」は難破剛くんの物語なので、原作を全巻読んだ中で、剛の高校3年間を描く上で絶対にはずせないもの、より彼が魅力的に見えて、みなさんに好きになってもらうキャラクターにするのに必要なエピソードから選択していきました。
例えば、4話で登場した関口くん(岩男海史)の話は欠かせないだろう、と。
──中学校時代の同級生の関口くんが登場する4話は、“神回”と話題になりましたね。
ありがたいことに「感動した」ですとか、「まさか“ナンバ”で泣けるなんて」といった反響をいただきました。関口くんのエピソードって原作の中では結構、短めなので、泣く泣く外した「千葉制覇編」などと比べても比較的地味というか…。
でも、剛がどうして普通の高校生になりたかったのか、どうそれを決断し、どれだけ頑張ってきたのか、という剛の人となりが一番見えるのが、関口くんとのエピソードなのです。
ですから、これは絶対に入れなければと思って、ドラマ内ではしっかりと尺をとって描きました。4話放送後から、「今までのヤンキードラマとは一味違う」と言ってくださる方が増え、とても大切な回となりました。
──関口くんに対しては、シンパシーを寄せた人が多かったのではないでしょうか?
4話の放送後、「関口役の人は何て言う役者さん?」って、調べた人がものすごく多かったそうです。
関口役の岩男海史さんは、確かに誰もが知っているような役者さんではなかったのですけど、お芝居のうまさが視聴者のみなさんにしっかり伝わって、それですごくバズるという…こう言うと語弊があるかもしれませんけど、視聴者のみなさんの目は侮れないなと実感しました。
岩男さんのように素晴らしい役者さんが、ちゃんと作品やお芝居を見てくれている人たちに評価していただけて、それだけでも出演していただいてよかったなと、すごく思いました。
キャラクターそれぞれにファンがついたのもよかった
──先日、『あしたの内村!!』(フジテレビ)が栗原さんに密着したときも、「原作を大事にしたい」というこだわりを明かしていました。
私自身も漫画が大好きなので、原作を大事にしたい気持ちがすごくあって。原作で絶対に外してはいけないポイントは何があっても落とさないようにしようと、すごく気をつけていました。
一方で、「オリジナリティを出さなくていいのか?」という見方もあるわけです。もちろん、独自色を出して原作を超えられるならやるべきだと思うんですけど、今回に関しては、原作の良さをいかに映像と音楽とお芝居の力で、マックスに増幅させられるかを考えるべきだ、と思いました。
『ナンバ~』のパートを大きく分類すると、「友情」「家族」「二重生活を描く白百合高校」となりますが、全部揃ってこその『ナンバ~』なので、どれかに偏ることなく描きたいという気持ちもありました。
実際、難破家のファンの人もいれば、男子3人組のファンの人もいて、白百合美術部が出てくると安心すると言ってくれる人もいて、キャラクターそれぞれにファンがついたのもすごくよかったな、と思っています。
藤田(森川葵)なんかは、漫画ならではのひと癖あるヒロインですので、脚本をつくる際も、どこまでやっていいものか迷いました。でも、「ブスじゃないもん!」の森川さんを見て、「これは可愛い!」と(笑)。
本広監督も藤田の“おかしさ”を大切にしていましたし、森川さんのお芝居力なら、どこまででもチャーミングな藤田でいられるだろうと、2話では「ミナミの帝王」を持って大泣きしてもらいました。
おかげで、原作ファンの方からは「まさかあのシーンをそのままやるとは」といった感想もいただきました。
スタッフがみんな泣いていたシーン
──原作を忠実に実写化する際のキャスティングについて、振り返っていただけますか?
そこについてはいたってシンプルで、原作を読んだときに、パッと思い浮かんできた人に、出演オファーの電話をかけていきました。
そして、本当にたまたまみなさん、スケジュールがちょうど合ったという…奇跡的な状況でした。
しかも、役とご本人の素が近い方々に集まっていただけたので、それが作品にとってめちゃくちゃプラスに働いていて。例えば、難破家も、みなさん役を離れてもずっとセットの外に椅子を出して、あの雰囲気のまま和気あいあいとおしゃべりされていて。これは大げさではなくて、リアルに家族愛みたいなものが、役者さん同士の間で芽生えたようです。
──難破家の父ちゃんこと勝さん(宇梶剛士)が家族での食事前に手を合わせて言う「やぉ~ぅし」は、宇梶さんがアドリブで言い始めたそうですね。
実は、最初に難破家の食卓のシーンを撮った時、キャストもスタッフも大ウケだったんですけど、クランクインしてすぐだったこともあり、私も心配性で「大丈夫かな!?ぶっ飛びすぎてないかな!?」と一人ドキドキしていました。
でも、そんな不安さえも凌駕するみなさんの人柄や、リアルに楽しんでいる空気感が画面から伝わったのか、視聴者のみなさんも面白がってくださり、難破家のことを大好きになってくださった。
結果的には大正解だったな、あの時ストップをかけなくてよかった、素人がいらんことしちゃいけないな、と思いました(笑)。
──宇梶さんが始めた「いい~ね!」は今や難破家の、ひいてはドラマ版『ナンバMG5』のシンボル的なポーズにもなっています。
宇梶さんがクレイジーケンバンドの横山剣さんから直接「使っていいよ!」と言われた“公認”だそうです。素敵なエピソードですよね。
カメラが止まっても本当の家族のようになった役者のみなさんだからこそ、9話の剛の告白から家族が激高するシーンも、ドライ(カメラなしのリハーサル)の段階でボロボロと涙を流されて。
何回かドライをやったんですけど、間宮さんはちょっとでも感情を入れようとすると、もうボロ泣きになってしまうような状態で。少し抑えてやってもらうような状況でした。
このシーンを撮る日は朝から現場全体が沈んでいて、撮影中はほかのスタッフも私もみんな泣いていて、こんな経験はドラマ制作に携わってから初めてでした。
ですが、実はこの日は兄ちゃん(満島真之介)のお誕生日で、ドライの後には、みんなで楽しくお祝いをしました。 現場では、この緩急こそが『ナンバ~』らしい!なんて話をしていました(笑)。
WANIMAの「りんどう」が選ばれた理由
──第9話を語る上では外せない、WANIMAの名曲「りんどう」をクライマックスで流す演出は、なぜ生まれたのですか?
本広監督が「終盤のアクションシーンは曲で包みたい」ということを、もうすごく早い段階からおっしゃっていたのです。
ただ、何の曲にしようか…と。あまりに重要すぎて、なかなか決まらなくて。有名な合唱曲など、さまざまな案が出る中で、WANIMAさんの曲はどうかという話になりました。
そもそも、最初に主題歌をオファーしたのも、『ナンバ~』の世界観が内包している「痛みを抱きながら前に進む」というスピリットと、WANIMAさんの疾走感溢れる曲調、痛みを忘れない歌詞がすごく合うなと思ったからで、結果、あの素晴らしい2曲(主題歌「眩光」と劇中歌「あの日、あの場所」)が生まれたんですけど、根底に流れるものが同じなのであれば、きっと過去曲にもマッチするものがあるのでは、と。
探していくなかで、改めて「りんどう」の歌詞を読み直してみたら、これはあの戦いの場の剛そのものじゃないか、と興奮しました。
こんなに主人公の心情や状況と歌詞がピッタリはまることってあるのかなって、ちょっと信じられないような思いもありました。
ただ、WANIMAさんには、ドラマのために2曲も書き下ろしていただいているのに、少し前の楽曲を使わせてください、とお願いするのは失礼かなとためらいもありました。
そこで、WANIMAのご担当者さんに相談させていただいたところ、「いや、WANIMAも、クリエイター魂を大切にしていて、すごくピュアで熱い人たちだから、わかってくれると思います」と、言ってくださって。
結果、メンバーの皆さんから快諾をいただき使わせてもらえることになりました。
実は、本広監督のアイディアで最終回でも、すごく素敵な形でまた「りんどう」をお聴かせすることができます。ぜひ「悲しんでいるあなたを愛す」という、りんどうの花言葉を思い浮かべながら見てもらえればと思います。
間宮祥太朗の芝居が上手いのは知っていたが…
──ここまで、間宮祥太朗さんのお芝居はいかがですか?
間宮さんはこれまでも幅広い役をやられていますし、お芝居が上手いということは分かっていたつもりでしたが、9話最後の表情、全部をかなぐり捨てて剛を生ききったと思わせるようなお芝居が…本当にもう、憑依という言葉がつい出てしまうというか、完全に剛でした。
それに、兄ちゃんといる時は幼い弟の顔をしているし、吟子(原菜乃華)の前では頼れる兄貴の顔つきですし、一緒にいる相手によって醸し出す雰囲気が変わるのが本当に凄いと思います。
先ほどお話ししたように、みなさんがリアルに役としてその場にいてくださるから、本当にすべてが事実というか、ノンフィクションになっていくんですよね。
それこそ、9話のクライマックスで剛が警官に捕まった時、伍代と大丸が駆け寄って警察を引き剥がそうとしたのも、リハーサルの段階では、違う動きを予定していたんですよ。
ただ、あの場であの剛を見てしまったら、やはり自分たちは剛を助けに行かずにはいられない、という話になって。
その場で生まれてくる感情に忠実に動いていただいたことが、みなさんのお芝居をより素晴らしいものにするという、好循環を生んだのかなと思います。
──その集大成である最終回ですが、SNSでは「見たいけど、見たら終わってしまうから見たくない」と、別れを惜しむ声が多く見受けられます。
連ドラの作り手としては、「終わるのが寂しい」と思ってもらうのが一番うれしいです。私も学生の頃テレビの前で、次クールのドラマの予告などを物悲しい気持ちで見つめていたのを思い出します。
当たり前に毎週会うことができたキャラクターがいなくなってしまう寂しさを感じていただけるのは、本当にありがたいことですし…キャスト陣もみなさんクランクアップのコメントで「寂しい、寂しい」って言ってくださったのですが、それだけ現場を愛して、楽しくやってくれたんだなと思うと、ただただうれしさしかないです。
──最終回は、どういった心構えで見ればいいでしょうか?
剛が過ごしてきた2年半の日々すべてが返ってきて、彼の生きざますべてが出る最終回になっていると思います。
剛がどういう思いで、どのようにしてこの2年半を過ごしてきたかをずっと見て知っている人であれば、きっと最終回に何が起こるかわかるのではないかな、と。「あんな良いヤツのことを世は見捨てないよ」と信じていれば、きっと届くはずです。
──最後に、『ナンバMG5』の終幕を寂しく思っている視聴者のみなさんへメッセージをお願いします。
私も本当に、まだまだやりたい!という気持ちがすごくあります。
今回、ドラマでは描けなかった原作のいいエピソードもたくさんありますし、長く愛されるシリーズになったら素敵だな、と個人的には思っています。
初プロデュースでこんなにも人の愛を感じられる作品と出合えたことが、本当に幸せでしかなくて。
キャストのみなさん、スタッフのみなさん、そして毎週楽しみにご覧になってくださったみなさん…本当に熱い思いを『ナンバMG5』に込めてくださったことには、ただただ感謝しかないです。
最終回も、みなさんの愛で包み込んでいただけたら何よりです!
取材:平田真人
構成:フジテレビュー!!編集部
学校で大暴れしてしまった剛。隠し通せなかった高校逆デビュー、二重生活の結末が描かれる『ナンバMG5』最終回(第10話)は、6月22日(水)22時より、フジテレビで放送されます。
また、特別編となる『ナンバMG5』 「全開バリバリでアリガト」編が、6月29日(水) 22時より放送されることも決定しました。
公式HP:https://www.fujitv.co.jp/nanbaMG5/
『ナンバMG5』公式Twitter:https://twitter.com/nanbaMG5_
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