デザイナーで、経営者で、メディアのコメンテーター。株式会社ILLUMINATE代表取締役社長ハヤカワ五味さんは、いつも注目される存在です。
胸の小さな女性のための下着ブランドfeastなど様々な事業を立ち上げてきた彼女が最初に事業を始めたのは、なんと中学生の時。
順風満帆な人生かと思いきや、子ども時代にはいじめを受けたり、大学時代に起業せざるをえなくなって睡眠時間を削ったりと、大変なことも多かったそうです。
YouTube番組『#シゴトズキ』に出演したハヤカワ五味さんに、人生の充実度の波を可視化したライフチャートを使ってこれまでを振り返ってもらいました。
5-6年いじめを受けて…
――ハヤカワ五味さんは、どんな子ども時代だったんですか?
私の記憶がないというか、覚えてないからポジティブな気はしていて。
おそらく厳密に追いかけたら結構ネガティブだと思うですよね、この時期。5-6年いじめを受けていたりしたので、本来ならもうちょっと下でもいいかなと思ったんですけど、あんま覚えてないんでOKって感じで。
自分自身が結構勉強が好きだったので、「勉強してんな、アイツ」みたいないじめがあったんですけど、中学に入ってからは、勉強好きな人が多い学校だったので、自分の好きなようにやれたのは大きいかなって思っています。
――15歳からカーブが上向きになっていますね?
それまでロリータファッションとか元々好きではあったんですけど、それを人には言っていなかったんですね。今だとコスプレとかって一般的なものになっていると思うんですけど、当時は基本的に隠さなきゃいけないものだったんです。
中3の時から美術系の予備校に通っていて、先生には「五味ちゃんが好きな服着たらいいじゃん」って言われて、友達には「この服とか似合うんだから、もっと好きな感じにしたらいいと思うし、すごい似合うと思うよ」みたいなことを言われたりして。
「人に見せない、隠す」って感じだったのが、予備校に入って「もっと好きにしていいんだ」って思って、そこからはかなり自分としてはポジティブになったと思っていますね。
15歳くらいから自分でタイツを作って販売していたんです。中高の3年間で300万円くらい売っていて。
ロリータファッションがずっと好きだったので、それに合わせられるようなタイツやストッキングを作っていました。木目調だったり、キリトリセンだったり、いろいろ自分の好きなモチーフで作っていたって感じですね。
――300万円と言ったら結構な金額ですよね。
当時からしたら結構衝撃ですよね。
ただ、利益をほぼ乗せてなかったので、原価率は多分60%とかですかね。結局手元に残ったのは 30万円とかで。
一応その元手はfeast(※胸の小さな人=シンデレラバスト向けランジェリーを取り扱うブランド)の設立に生きているという感じの流れになっていますね。
受験が終わって、前々から気になっていた下着を試しに作ってみるかと、友達にプロトタイプを作ってもらって撮影をしてtwitterにあげたらそれがすごくバズって。それがfeastのきっかけですね。
そもそも起業したくてやったわけではない
――feastを作ったのに充実度の波は下がっていますが?
多分ここが一般的に思われているところとの相違の部分かなとは思っています。そもそも私は起業したくてfeastを起業したわけではないので。
先に売上が立っちゃったんです。だからやらざるを得なかったからやっていたという感じで、普通にしんどかったです。
大学に行きながらだったので、当時デイリー2、3時間寝られたらいいかなくらいの感じで、食事しながら移動して、歩きながら仕事していたので、それで転倒して、今も傷が残っているんですよ。
必死な状態だったので「なんでやってるんだろう」って常に思っていて、「絶対次のやつ出したらやめてやる」って毎回思っていたので。
でも、やめなかった理由は、やっぱりユーザーの方が待ってくれていたからというのが大きくて。
ユーザーの方が欲しいと言ってくださって、すごく大切にしてくださっているからやっていたという感じで、そこが今もILLUMINATEという事業をやっている理由はなっているかなと思っています。
――お金の面ではうまくいっていたんですか?
いや、うまくいってないですよ(笑)
全体的にうまくいってないし、多分思っているほど私の役員報酬は高くないです。多分初任給以下とかそういう感じなので。
ありがたいことにラジオとかに出させてもらっているから食えていた、みたいな感じの時代でした。
ただ自分で作って売るだけだったらまだいけるけど、本格的に経営し始めると、支払いが振り込みでいついつまでとか、そういった複雑なところも大変ですよね。
特に最初立ち上げた時って18歳だったので、(当時は)未成年じゃないですか。
未成年だと、お金を借りるにしても親の保証が必要だし、銀行の口座だって相手が未成年ってなったら開いてくれないことが多いんですよ。
そんな中でも融通してくれた方とか会社さんとかがいて今もfeastとして存続しているわけなので、それはすごくありがたいなと思っていますね。
――20歳の時にはマイナスに入ってしまっています。ここからプラスに戻れたきっかけは何ですか?
大学時代にインターン先があったのが大きかったと思います。
自分の場合は会社に入らないで事業をスタートしているので、何が正しいか、どうしたらいいかも分からない。
それでインターンに行って、そこで出会ったメンターに、「もっと社会人がどんな感じなのか知っても良いかもね」みたいに言われて。
「組織は社長を映す」みたいな話があると思うんですけど、自分の苦手とするに向き合わないと会社も組織も成長しないし、そこを向き合わなきゃいけないんだって視点が湧いてきたのは大きいなと思います。
自分がフィードバックを受けない立場にずっといたので、誰かから何か指摘されるって経験自体が少なかったんですね。
人にばかり求めるんじゃなくて、自責的に考えるのって経営者にはすごく重要だと思っていて、社員とかメンバーがうまく動けていないのを「自分がどういう仕組みを作ったのが原因だっけ?」みたいに自分に置き換えて考えるのはそこから始まったかなって思っています。
常に自責による浮き沈みだと思っていて、悪いことが起きたら自分のせいだし、良い事が起きた時は人のおかげみたいなところもあって、自責が多い分、以前より落ち込むことは増えたとは思うんですよ。全部自分のせいにしなきゃいけないし。
落ち込むことが増えたけど、自分に残っていくものも大きいなと思うので、これが今後にしっかり生きてきて、もう少し上昇気流に乗れたらいいなっていうのが最近の気持ちですね。
――今はマイナスにいますけど、目指す先は上の方ですか?
そこそこでいいのかなって最近はちょっと思います。上を見れば見るほど天井はないじゃないですか。
自分の場合はしっかり7、8時間寝られて、3食座っておいしく食べられて。それプラス、何か世の中に対して貢献できることがあったらいいなと思っているので、そこだけですね。
会社としてのグラフであれば、右肩上がりでいきたいですね。個人としては、そこそこでいいかなと思っています。