仕事もプライベートもバイタリティー溢れる女性を特集する『パワフル女子名鑑』。

今回インタビューしたのは、女優の小島聖(44)。子役時代から芝居の世界に生き、映画・ドラマ・舞台などで幅広く活躍している実力派だ。プライベートでは山歩きに目覚め、この10年の間に国内外の山々を訪れてきたという。また、結婚し一児の母となった環境の変化も。そんな40代を素敵に生きる彼女のパワフル女子ライフの源とは?

「まぁいっか」が人生を豊かに生きるコツなのかもしれません

――女優という華やかな世界に生きながら、険しい山歩きをライフワークのひとつにしたのはなぜですか?

初めて山に登ったのは、30歳の頃。旅行で訪れたネパールで、トレッキングを体験したのがきっかけです。それからは十数年、国内外の色々な山を訪れました。フランスのモンブランやスイスのマッターホルン、日本の富士山や聖岳…中でも、アメリカのジョン・ミューア・トレイル(総長340km)を20日間かけて歩いたのは、今でもすごく印象に残っています。

大自然を感じながら歩くことは、私にとって自分を開放すること。モヤモヤしていた頭の中をクリアにして、リセットする時間なんです。でも、自然が好きだからといって街が嫌いなわけではないです。街で得られる情報もそれはそれで大事ですし。街でインプットしたものを自然の中でうまくアウトプットする…という感じでしょうか。どちらの時間もバランスよく取るのが、私にとっては心地いいです。

――山歩きで気付いたこと、学んだことを詳しく教えてください。

自然相手だと、思い通りに行かないことも多いです。特に天候。長い時間をかけて大荷物を背負って来たのに「なんで(雨なの)!」って思うことも多々ありました。でも、何度も山と対峙するうちに、そこで腹を立てても仕様がないなと。それよりも、「空気がしっとりしていて気持ちいい」とか「潤って瑞々しく咲く花がキレイ」とか…雨だからこその小さな喜びを見つけて、その状況を楽しんだ方がいいじゃない!って、思えるようになったんです。

ジョン・ミューア・トレイルを旅する小島聖さん。自身の山歩きを綴ったエッセイ集『野生のベリージャム』より。(写真:武藤彩)

“目標を決めすぎない”ことの大切さも教わりました。たとえば天気が悪いから今日はもう終わりにしようとか、体の調子がいいから予定よりもう少し進もうとか。山でのゴールは臨機応変に決めるもの。その時々の状況に合わせて進んでいけばいい。だから、今日目標が達成できなかったからと言って、悔やんだりする必要は全くない。また、新たな目標を立て直せばいいだけ。そういう「まぁいっか」というラフな考え方ができるようになったのは、私にとってすごく価値のあることだったと思います。

――まさに人生にも通じるヒントと言えそうですね。普段の生活で意識していることはありますか?

日常でも、「こうじゃなきゃ!」という思い込みを捨てて大きな心で構えるように意識しています。…それでもやっぱり人間なので、忙しい日々が重なると、わ〜!って叫びたくなる時もありますよ(笑)。そんな時は、大きく深呼吸。そうすると、自然の中にいたときの気持ちを思い出せるような気がします。

――結婚・出産を経て、自然と向き合う時間に変化はありましたか?

一人の頃は、自然を求めて海外へよく旅をしていましたが、子どもがいる今はやっぱりそうもいかない。でも、木々のざわめきや風のささやきに耳を傾けながら、散歩したりジョギングをしたり。街中でもうまくリフレッシュしています。

子どもが大きくなったら、家族3人で山に登りたいです。やっぱり子どもにも、自然の豊かさには触れていて欲しいなと思うので。

エッセイ集『野生のベリージャム』より。(写真:武藤彩)

心の「ワクワク」に正直に!人生は動いたもの勝ちです

――そのエネルギッシュな行動力は、どこから沸いてくるのですか?

自分では、とりわけ行動力があるとは思っていません。ただ興味があることはやりたい!と思う性分で、好奇心に素直なだけ。昔読んだバシャールの本に「ワクワクしなさい」というフレーズが出てくるのですが、その言葉がすごく心に残っていて。思えばその言葉との出会いが、ワクワクすることを形にしたいと強く思うようになったきっかけかもしれません。

これまで、海外への旅や著書の出版、マクロビオティック教室に通ったり…様々な“ワクワク”を形にしてきました。家族ができた今も、その思いは変わりません。「子どもがいるから」という枕詞で自分を押さえつけず、今の環境でやれることをやっていきたいなと思っています。そうじゃないと、心が不健康になっちゃうでしょ。

――“ワクワク”の実現に向けて、小島さんが心がけていることはありますか?

行動に起こすのはもちろんですが、やりたいことは、口に出して発信するようにしています。心の内を伝えるのはあまり得意ではないのですが、“言霊”って言うか、そういうのは本当にあるなと思っていて。言葉にして色々な所にばらまいておけば、誰かがどこかで拾ってくれる可能性があると思っているから。

女優業をしながら、趣味の山歩きにについて綴ったエッセイ集『野生のベリージャム』を出版できたのも、ブログや友人、仕事で出会った編集者さんに「本にしたい」って公言していたから実現できたこと。発信するって、やっぱり大事です。

自身の経験を経て、頑張る女性たちにメッセージを

――小島さんのように、肩の力を抜いて心地よく生きるコツは?

若い頃は「あの人はできているのにどうして私はできないんだろう…」とか、悩むこともあると思います。でも、考えたって仕方ない。目の前の状況を受け入れて、自分は自分!っていう時間の過ごし方ができたら、人生はもっと楽しくなると思います。そして、自分の心が求めるワクワクを追求して、いろいろな経験を重ねてほしい。途中で挫折してもいいんです。それはそれで必要な経験になるから。

考えがまとまらない時は、自然に触れて深呼吸。そして「頑張る時は頑張る。頑張らなくていいときは頑張らないでいいじゃない」って、心のゆとりを持てるといいと思います。

プロフィール:小島 聖(こじま ひじり)

1976年、東京都生まれ。1989年に女優デビュー。NHK大河ドラマ『春日局』への出演を皮切りに、映画やドラマに多数出演。料理やアウトドアに関するライフスタイルでも注目されている。著書には、自身のライフワークである山歩きについて綴ったフォトエッセイ『野生のベリージャム』がある。