2020年8月にスペシャルトークショー「いまを生きる」を開催する岸惠子さんが、公演に先駆けて5月18日に行った取材会で意気込みを語りました。

コロナ禍、ウクライナ情勢と時代や世界情勢が大きく変わる中、歴史的な危機を肌で感じてきた岸さんは、いま何を思い、何を願うのでしょうか?

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この公演は2020年10月に全8公演が予定されていましたが、コロナ禍のためにすべてが延期に。岸さんは今回の公演決定について、「皆さんに語る最後の舞台になると思う」と並々ならぬ思いを吐露します。

2019年に「孤独という道づれ」(幻冬舎)、2021年には自伝「岸惠子」(岩波書店)を上梓するなど、激動の歴史の経験者として自身の体験や人生について執筆活動を続ける岸さんは、「私が映画界で活躍していた頃から時代や世界はガラリと変わりました」とコロナ禍やウクライナ情勢について懸念します。

「日本人は知識もあるし世界事情を分かってはいるけれど、海に囲まれた安全地帯という特殊な国。そこで意識が止まってしまっていて呑気に思える。そういったこともトークショーで話したい」と、人生の半分以上をヨーロッパで暮らし、「国境というのは動くもの」と見て感じてきたからこその思いを語り、「本公演のギャラはウクライナの難民の方々に全額寄付したい」とその思いを伝えました。

90歳を迎えて思うこと「人間の能力は衰えるもの」

8月に90歳を迎える岸さんは「人間の能力は衰えるもの」と、82歳で免許証を返納した経緯についても触れ、「右手の指先が震えて字が書けない、書こうと思っても字が思い出せない(笑)。だから最近はパソコンで書き物をしています」と自身に起きた変化を明かす場面も。

そして、「死は小さい頃から身近な存在でした。どんなに嬉しいことがあっても人はいつかは死ぬんだと思っていました」と死生観を語りますが、「だからってどうということもない、いまを一生懸命生きるだけ」と、あっけらかんとした笑顔を見せます。

今後の執筆予定について聞かれると、「生きていられたら書きたい本が2冊ある。もう皆さんが忘れてしまったかもしれない幾人かの人たちのことを書きたい」と目を輝かせます。

「小津安二郎監督、石原慎太郎さんにまつわるエピソードを、こういう人たちが歴史を作ってきたんだよという1冊に。そして小説、この2冊を書いたらもうさっさと死にたいと思う」と、執筆意欲を明かしてはにかみました。

旺盛な好奇心と行動力。数々の体験を超えてきた岸さんが、世界が大きく変わろうとしている“いま”、トークショーで何を語るのか。貴重な機会をお見逃しなく!

■岸惠子スペシャルトークショー「いまを生きる」開催概要

8月12日(金)13時 神奈川県立音楽院
8月30日(火)13時 新宿文化センター大ホール

詳細は公式サイトまで:https://kishikeiko2020.wixsite.com/imawoikiru