宝塚歌劇団出身の美弥るりかさん、花乃まりあさん、剣幸さんが、にぎやかトークを繰り広げました。

元月組男役で唯一無二の個性が光る美弥さん、元花組トップ娘役でナチュラルなかわいらしさが魅力の花乃さん、そして元月組男役トップスターで、豊かな表現力とあたたかい人柄で人々を惹きつける剣さん。

そんな3人が共演するオリジナルミュージカル「The Parlor」が、4月29日より上演されます。本作で、3世代の親子を演じる美弥さんら。親から子へ守り継がれてきたパーラーを舞台に、生きづらさを感じている人々の物語を紡いでいきます。

フジテレビュー!!は、美弥さん、花乃さん、剣さんにインタビュー。

前編では、それぞれの役への意気込みや、本作を通じて考えたことについて、じっくり聞きました。

<【後編】美弥るりか&花乃まりあ、大ファン・剣幸を前に「泣きそう!」>

美弥るりか 憧れの剣幸との共演に感無量!

――出演決定を聞いたときの気持ちをお聞かせください。

美弥:(作・演出の小林)香さんとは以前、ご一緒させていただいたことがあって。台本を読ませていただいたら、誰もが持っている心の葛藤が織り込まれていて、朱里役に挑戦できたらすごく勉強になりそうだなと思いました。それに…(笑)。

花乃:何を言おうとしているか、わかっちゃいます(笑)。

美弥:私、月組トップスター時代の剣さんの大ファンなんです!私が剣さんと同じ舞台に立てる日がくるなんて!まだ信じられなくてフワフワした気持ちです。もう、あの日の自分に言ってあげたいくらい(笑)。だから今、剣さんの出演作品や、ファンとして好きだった気持ち…いろいろなことを思い出すんです。すみません今、ファンとしてしゃべっています(笑)。

剣さんはお人柄がとても優しくて、神様みたいな大きな心で受け入れてくださって、私たちもついついそこに甘えてしまっています。すごく幸せで、とにかくうれしい気持ちでいっぱいです。

花乃:私も香さんとは、以前お仕事をさせていただいたことがあります。とても学びの多い時間で、ぜひまたご一緒したいと思っていたので、今回のお話を聞いて、とてもうれしかったです。

素晴らしい先輩方とご一緒できると伺って、初めはとても緊張しました。でも今はリラックスできていますし、お2人と家族を演じさせていただけることがすごくうれしくて、毎日ウキウキしながらお稽古しております。

剣:2人とも、かわいいこと言ってくれるねぇ!宝塚という同じ場所で育ったからこそ、家族という関係性をイチから構築しなくても、同じ雰囲気でいられるのだと思います。香さんが「3人並ぶと、本当に家族みたいね」と言ってくださったのが、すごくうれしかったです。

私自身は、香さんの作品には3度目の出演となりますが、出演させていただいていますが、なんと全部おばあさん役(笑)。年齢も追いついてきたので、今度は回想シーンの方が大変なんです!

香さんは、いつも本当に多くのことを考えながら、作品を作っていらっしゃいます。そして、その中に必ず「人々の心の傷の再生」といった要素を織り込んでいて。私は、香さんのそのあたたかさが大好きです。だから、香さんが新作をお作りになるのなら、どんな役でも出演させていただきたいですし、いま本当に幸せです。

剣幸“ゴッドハンド”の美容師役でハサミを…

――それぞれが演じる役柄と、どのように演じていきたいかをお聞かせください。

美弥:私は、若くして次々とヒット作を生み出すゲームクリエイター・円山朱里を演じます。彼女は幼い頃に、母・千里(花乃)を不慮の事故で失い、悲しみから目を背けるようにアメリカへ旅立っていました。

そんな彼女は数年ぶりに帰国して、祖母・阿弥莉(剣)が美容室として営む「ザ・パーラー」(以下、パーラー)に戻ります。そこでいろいろな人と関わり、朱里は自分の世界を少しずつ広げていきます。そんな彼女の変化を、しっかりと見せていきたいです。

ただ、私はこれまで個性的な役をいただくことが多くて…(苦笑)、ナチュラルな役をあまり演じたことがないんです。だから香さんに「普通に、普通に!」と言っていただいても、「普通ってなんだ!?どうしよう!」となってしまいます(笑)。自分の中で、個性的な役を演じるときの“スイッチ”が入ってしまう癖があって、まだカチカチのロボットのような状態なので、もっとリラックスして演じられるようになりたいです。

花乃:私は、朱里(美弥)と異父姉妹にあたる灯と、阿弥莉(剣)の娘で、朱里と灯の母・千里の二役を演じさせていただきます。

灯は母・千里の死後、父に引き取られ社長令嬢として育てられます。彼女なりにまっすぐ生きてきましたが、“井の中の蛙”のような部分もあって。でもパーラーに足を踏み入れることで、世界を広げていきます。

千里は、社会に自分の居場所を求めている人や、本当の自分を見つけたい人…あらゆる人たちと語り合う場所を作りたいと、パーラーに喫茶室を作りました。

千里から灯へ、そして阿弥莉から朱里へ受け継がれている、世代を超えてつながる根っこの部分を、お2人のお芝居を近くで拝見しながら、大切に作っていきたいです。

剣:私は朱里(美弥)と灯(花乃)の祖母で、パーラーで美容室を営んでいる阿弥莉を演じます。彼女は、「お客様の人生を少しでも幸せにしたい」という強い思いを秘めた、“ゴッドハンド”の美容師です。

花乃:お稽古場で、ハサミを回していらっしゃいますよね(笑)。

剣:別に回す必要はないんだけれどね(笑)。私は指で帽子を回すのが好きだから、ハサミも拳銃みたいにクルクルっとできたらいいなと思って。

美弥:香さんが「『シザーハンズ』みたい」と言っていました(笑)。

剣:阿弥莉の人生は、娘の千里(花乃)が幼い我が子を置いて亡くなったことで一変します。残された朱里(美弥)を育てて懸命に生きる中で、夢も何もかも忘れてしまって。歳をとって、もうパーラーを閉めようと決断したところから、物語が動いていきます。

花乃まりあ「自分自身にガッカリ」して得た気づき

――本作は、生きづらさを感じている人々の葛藤と衝突、そして勇気が描かれています。作品を通じて、なにか考えたことはありますか?

美弥:お稽古初日にみんなで2時間ほど、本作のテーマでもある「ジェンダー」などについて、話し合いました。

私は宝塚歌劇団で男役として舞台に立ち、約2年前に退団しました。“宝塚の男役”から“1人の表現者”となったとき、「今日から女性としての表現へ切り替えます」と変えられることが、私にはとても不思議でした。

もちろん、切り替えるかは人それぞれですが、私はジェンダーの線引きは意識せず、ありのままの自分で生きていけばいいかな、と思っていました。お芝居は自分の心を使って演じるわけですから、そこに男性か女性か、もはや人間か動物かも関係ない。垣根はないのでは、と。

今回私が演じる朱里も、ジェンダーについていろいろ考えている人物なので、私とリンクする部分が多く、表現に結びついていくのではと思います。

花乃:この作品は、対極に見えるものをたくさん描いていると思います。例えば、古くから続くパーラーに、新しいゲームを生み出す朱里(美弥)が現れる。生命力あふれる阿弥莉(剣)を襲う、娘・千里(花乃)の死。

人間はどうしても自分と違うカテゴリのものを拒絶しがちですが、相反するものがあって、初めて成り立つこともあるのだと、すごく感じました。

また、香さんが「エンターテインメントの力を借りて、ジェンダー問題などを変えるきっかけを、サラッと伝えたい」とおっしゃっていたのが、とても印象的でした。

一方の私は、お稽古初日の話し合いで「なんて何も考えずに生きてきたんだろう」と、自分自身にちょっとガッカリしてしまいました。こういう問題は、今まで素通りしてしまっていて。だから正直、これからはもっと勉強していかないと、と思いました。

剣:私は昔から、相手に対して“男性か女性か”ではなく“人間”として接してきたつもりです。垣根を作るという感覚がありません。思えば小さい頃から、お人形よりボールやグローブ、プラモデルで遊ぶほうが大好きでした。親から「お人形で遊びなさい」とは言われなかったので、感謝しています。

世の中では「女の子はピンク、男の子はブルーの服を着せるべき」という意見も耳にしますが、私は「本人が『黒が好き』と言うなら、黒い服を着せてあげればいい」と自然に思っていて。

でも、たとえば世間の70%の人が同じことを思っていたら、それが“常識”とされ、常識からはみ出た人たちは、奇異な目で見られるのかもしれません。そういう人たちも普通に生きられる世の中にしたい、というのがパーラーの願いだと思います。

<美弥るりか、花乃まりあ、剣幸メッセージ動画>

<Musical「The Parlor」概要>

【東京公演】4月29日(金・祝)〜5月8日(日)/よみうり大手町ホール
【兵庫公演】5月14日(土)〜15(日)/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

出演:美弥るりか、花乃まりあ、植原卓也、舘形比呂一、北川理恵、坂元健児、剣幸
作・演出:小林 香
作曲・編曲:アレクサンダー・セージ・オーエン

撮影:河井彩美