窪田正孝さんが主演を務める『ラジエーションハウス』シリーズへの思いを語りました。

2019年、2021年に窪田さんが主演する連続ドラマとして放送された『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』。その続編であり、集大成となる映画「劇場版ラジエーションハウス」が4月29日(金・祝)に公開されます。

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天才的な読影能力を持つ放射線技師・五十嵐唯織(窪田)を中心とした、甘春総合病院の放射線科(=ラジエーションハウス)の面々が、今作では「72時間の壁」や「感染症」と対峙。そして、甘春杏(本田翼)のアメリカ留学が決まり、迫る別れのとき。唯織をはじめ、技師たちが選ぶ未来は──。

フジテレビュー!!は、主演を務める窪田さんにインタビュー。「劇場版ラジエーションハウス」の見どころなど作品の話はもちろん、自身の壁の乗り越え方やGWの思い出などを聞きました。

ラジハファンの喜びの声に「光栄な気持ちになりました」

<窪田正孝 インタビュー>

──まずは、劇場版の制作が決まったときの心境をお聞かせください。

「映画にできる」ということが、素直にうれしかったです。正直、お話をいただいたときは「ラジハを映画でどう成立させるんだろう」という不安要素もありました。ラジハには、ドラマならではの良さもあったと思うので。

でも、連続ドラマの1作目があって、2年経ってから2作目をつくることができて、映画にまでできるというのは、見てくださる皆さんがいたからだということを実感して。その見てくださった皆さんへの感謝の思いもあったので、不安よりもうれしさのほうが大きかったです。

──ドラマ『ラジエーションハウスⅡ』の終盤に劇場版の公開が発表されましたが、反響はありましたか?

ドラマをずっと楽しみに見てくださった方々の喜びの声を聞きました。ドラマを放送している頃にはもう撮影は終わっていたので、まずはどんな風にドラマを受け取ってもらえるのかという思いと、育てたものが手から離れていく寂しさもあったのですが、劇場版が発表されたときは特に喜んでもらえていたようでうれしかったです。

ラジハチームみんなでやってきたことが報われた瞬間だな、というか。とにかく反響の大きさに光栄な気持ちになりました。

──映画界が厳しい状況にある今、ドラマが2シリーズ制作された作ったうえで、映画化されるということに関して思うところはありますか?

テレビで見ることができた『ラジエーションハウス』が映画という有料コンテンツになるというところに、大きな変化がありますよね。特に見る側に。でも、あえて「映画館で見ていただきたい」という制作側の強い意志を感じていて。

映画館は、舞台と同じようにみんなで一つのモノを共有する場所。今の時代、どんどん配信に移行していて、それを「便利」ととるか「寂しい」ととるかは人それぞれの価値観ですが、そういう時代だからこそ「映画館に足を運んで、映画を見る」ということはすごく価値のあることだと思うんです。

だから、映画をつくれることはうれしいですし、ましてや、漫画原作から連ドラを2度もつくったラジハを、映画にできることは役者冥利に尽きますね。

劇場版の注目は「広瀬と軒下の成長」

──「劇場版ラジエーションハウス」の見どころをお聞かせください。

今回は「72時間の壁」や「感染症」などがテーマになっているのですが、やっぱり医療ものの作品をやっているうえで、新型コロナのことは置き去りにはできないですよね。『ラジエーションハウスⅡ』を撮影していたときに、「劇中、みんなでマスクをするかどうか」という話し合いもあったんです。

でも、2020年に世界で起きたことは忘れられないものだから、劇場版では感染症を一つの題材にすることになりました。そこにある思いは見ていただきたいです。

あとは、ドラマの最初の頃から“チーム”というものを大事にしています。鈴木(雅之)監督も「一つの画角に全員を収めたい」とおっしゃっていて…実際の病院で、1人の患者に8人の技師がつくことはあり得ないのですが、それがラジハチームの良さ。「こんな病院があったらいいな」と思えるように物語が描かれているので、そこも見どころです。

──完成品を見て、特に印象に残っているシーンや、「ここは注目してほしい」というポイントはありますか?

広瀬(裕乃/広瀬アリス)と軒下(吾郎/浜野謙太)の成長…進化です。

広瀬の成長は、劇場版の一つのテーマにもなっているのですが、広瀬は連ドラの1作目のときに周囲から「そんなことも知らないのか!」と言われながら、用語などが分からない視聴者を代表するような質問をしてきていたんですよね。そんな彼女が、連ドラの2作目では技師長(遠藤憲一)とラジエーションハウスを必死に守っていました。

実際、2年ぶりにアリスとお芝居をしたときに、さらに魅力的になっていたんです。もちろんお仕事で活躍されている姿も見ていましたし、いろんな経験をしてきたんだなと感じましたし、そのアリスが表現する広瀬もたくましくなっていました。

ハマケンさんが演じる軒下は、緊迫感のあるシーンの中でフッと体の力を抜かせてくれる存在。ドラマの2作目では、八嶋(智人)さんという強力な先輩とタッグを組むことになって、いろいろな挑戦をされるハマケンさんを現場で見てきました。八嶋さんが演じる田中(福男)に揉まれて、変化していく姿がすごくいいなと感じていて。

軒下さんと田中さんって、最初はすごく仲が悪くて、今も表向きにはいがみ合っているんですけど、「ケンカするほど仲がいい」みたいな(笑)。あの2人の掛け合いは、劇場版でもしっかりと描かれているので、楽しみにしていただきたいです。

──鈴木監督の演出で印象的だったことはありますか?

僕はあとで聞いたのですが、車の事故のシーンはすごく時間をかけて撮影したと聞きました。リアルなものを追求したいという気持ちは映像からも感じました。

事故や天災は誰にでも起こりうることと言うか…いつどこで何が起こるか分からないことに、気持ちを込めて撮影されている印象があって、あの映像はグッとくると思います。山崎育三郎さんと若月佑美さんが演じた夫婦の会話も、事故が起きたあとの究極の選択も。

今72時間あったら…?「少年に戻りたい!」

──今作は「72時間の壁」がテーマとなっていますが、窪田さんご自身は、壁を感じた出来事などありますか?

基本は、団体行動があまり得意ではないので、学校とかがちょっと苦手でしたね(笑)。壁と言うと大げさですけど。

友だちとしゃべることとかはできるのですが、教室という閉じ込められた感じの空間が苦手で。ただ、そこでの出会いが後々、財産になる可能性もあるとは思いますけどね。

──そんな壁を乗り越えるために大事なことはなんだと思いますか?

自分を壊すことだと思います。僕のことで言うと、「人が苦手なんだ」という意識を取っ払って、自分をさらけ出す。意外と思い込んでるだけということも多いと思いますし、1回自分をさらけ出してしまえば、自分が楽になれるというのは実感としてありますね。

「自分をさらけ出す」って怖いと思うかもしれませんが、全然怖くないですから。人って、苦手なことをやろうとすると体が硬直しちゃうんです。「痛い」と思うとギュッと力が入るのと一緒で。そこで体も、思考も脱力して、フラットに過ごしていると、苦手なものもスッと受け入れられたりするんです。僕は受け入れたことで、別の何かに派生していくという経験を何度もしているので、自分を壊すのは大事だと思います。

──では、今、自由に使える時間が72時間あったら何がしたいですか?

3日間あったら…少年に戻りたい!具体的には、ちょっと東京から離れたいので(笑)、島に行きたいです。電波の入らないような、自然の多いところがいいですね。海でボーッとしたり、山の中を散策したり、時間を忘れたいなという思いがあります。

──「劇場版ラジエーションハウス」は、GWの公開になります。窪田さんのGWの思い出をお聞かせください。

GWだったかな…小さい頃、家族で自然がいっぱいあるホテルに行った思い出がありますね。他にも家族でよく海とかに出かけていました。

夜中に出かけたこともあって…子どもって普段、夜は「寝なさい」って言われるから、夜中に出かけるなんてワクワクするじゃないですか。みんなで車に乗ってファミレスに行って、好きなものをたくさん食べて、そのまま海の近くに車を止めて車中泊をして。朝、海の駐車場が開いたら、すぐに車を止めて一番風呂ならぬ“一番海”をしてましたね(笑)。あれはすごく楽しかった思い出です。

──最後に、窪田さんにとって「ラジエーションハウス」は、どのような存在になりましたか?

“しおり”のような…一つの分岐点を与えてくれた作品です。

コロナ禍前後で価値観は180度変わったと思いますが、コロナ禍前にラジハの1作目をやって、朝の連続テレビ小説『エール』(NHK)をやって、コロナ禍になってからラジハの2作目をやって、ラジハの映画をやって…10代からお仕事をさせていただく中で、ラジハは一つの区切りになった作品です。

撮影:今井裕治
ヘアメイク:糟谷美紀
スタイリスト:菊池陽之介