『ゴシップ#彼女が知りたい本当の○○』最終話完全版
「クスノキ出版」がIT企業「インターネオ」に吸収合併され、合同新会社となることが発表された。
その合併を成立させるために「カンフルNEWS」が利用された可能性があることを知った瀬古凛々子(黒木華)は、執行役員の仁和正樹(安藤政信)に真相を確かめに行く。しかし仁和は不在だった。
一方、一本真琴(石井杏奈)は、就職活動中にクスノキ出版営業部の社員・山之内(垣内健吾)から性的な被害を受けたという女子大生の向井未央(生田絵梨花)に会い、話を聞く。
未央は、飲み物に薬のようなものを入れられたためか、連れ込まれたホテルの場所など詳細は覚えていなかった。山之内がシャワーを浴びているときに目を覚まして着衣の乱れに気づき、必死に逃げ出したという美央。その後、未央のSNSには、山之内から「全部合意の上だよ」というメッセージが届いていた。
未央がおぼろげながら唯一覚えているのは、山之内に乗せられたタクシーの中に、招き猫のようなものがあったことだけ。真琴は、山之内が今年2月に転職して海外に渡っていることから、記事にするためにはもう少し客観的な情報が必要だと告げる。すると未央は、「話しても無駄でした」と言って席を立ってしまった。
真琴は、ネタ会議で未央のことをまとめた資料を凛々子や根津道春(溝端淳平)たち部員に渡す。ところがそこに、いきなり総務部の社員が引っ越し業者を引き連れて現れ、編集部内の荷物を運び出し始める。
カンフルNEWSが今週いっぱいで閉鎖になるという連絡を受けて、片づけに来たらしい。
すぐさま仁和の元へと向かった凛々子は、本館のエントランスで仁和を見つける。閉鎖のことを問われた仁和は、最後まで反対したが新会社になるにあたって部署の統廃合は避けられなかったと説明すると、凛々子が次にやるべきことは考えるからと続けた。
それでも凛々子は、編集部員たちが納得しないし、彼らが追いたいネタも残っていると食い下がった。すると仁和は、凛々子にとって部員たちがそこまで特別な存在になったのなら、なおさら会社の決定には大人しく従った方が良い、と助言する。
編集部に戻った凛々子は、根津や椛谷静司(野間口徹)らに、自宅待機を命じる。だが、納得できない彼らは、仁和に会いに行くという。凛々子は、そんな彼らに「あなたたちはもう必要ない」と告げた。
笹目虎太郎(寛一郎)は、一緒に海外に行こうと誘ったことへの返事を聞くために、帰ろうとしていた凛々子を呼び止める。しかし凛々子は、それは自分のやるべきことだとは思えない、と断っていた。その話を聞いた根津は、誰も仁和の代わりにはなれないような気がする、という笹目の言葉を黙って聞いていた。
思いつめた表情で歩いていた凛々子は、赤信号の横断歩道を渡ろうとして工事現場の警備員に腕を掴まれる。それは、前編集長の山田礼二(生瀬勝久)だった。
カンフルNEWSが終わってしまうことを知った山田は、残念がっていたが、カンフルNEWSを変えてくれた凛々子には感謝しているという。山田は、これからどうするのか、もう知りたいことはないのか、と凛々子に尋ねるが…。
そんな折、「週刊東西」に驚くべき記事が掲載される。「『カンフルNEWS』閉鎖の真実!?編集長の危険な過去とスタッフへのパワハラ疑惑」と題されたその記事は、16年前の出来事を「殺人疑惑」などと表現したものだった。それが原因で、暴露系の動画配信者・真島(島丈明)から直撃取材されてしまう凛々子。そこに駆けつけ、凛々子を助けたのは根津だった。
凛々子が未央の証言の裏取りをするために、たった1人で都内のタクシーを調べていることを知った根津は、協力を申し出る。そのために根津が取った作戦は、産気づいたときに無償で病院まで送ってくれたタクシーの運転手を探している妊婦、という設定で、車内に招き猫があったことを記してSNSに上げ、広く情報を集めるというもの。
根津の作戦に気づいた椛谷や真琴も、凛々子に協力するため、編集部にやってくる。ほどなく、笹目や、祖母の世話に追われていた下馬蹴人(野村周平)も加わる。そして、カンフルNEWS閉鎖まであと1日となった中、ついに“招き猫”タクシーを見つけ出した凛々子たち。そのタクシー運転手は、山之内と未央のことを覚えていた。
凛々子は真琴とともにもう一度、未央に会う。凛々子は、タクシーを見つけたこと、そのタクシー運転手の証言から、未央が山之内の誘いをはっきりと拒否していたことを伝える。
それを聞いた未央は、なぜここまでして記事にしたいのか、と問いかけた。すると凛々子は、PVを稼ぐためだと返すと、未央1人では伝えられない事実を伝え、話しても無駄だったとは思わせない、と続けた。
未央の目から涙がこぼれる。未央が話しても無駄だと思ったのには理由があった。実は未央は、山之内のことをクスノキ出版の人事部長に訴えたが、何もしてくれなかったというのだ。
一方、椛谷は、週刊東西の記者・林(松角洋平)に呼び出される。林は、週刊東西の若手が書いたガセ記事で迷惑をかけた詫びだといって、その記事の元になった「瀬古凛々子の件」というメールをプリントアウトしたものを手渡す。それは、真琴と同期の矢部涼介(一ノ瀬颯)が送ったものだった。
真琴は、カンフル編集部にやってきた矢部にそのプリントを突きつけた。しかし矢部は、悪びれた様子も見せず、ゴシップなんてどこが書いても一緒などと言いだす。真琴は、そんな矢部の頬を平手打ちし、カンフルNEWSは事実ではない記事は書かない、凛々子はそのことに一番こだわっているのに酷い、と非難した。
すると矢部は、今回のことは仁和からの指示に従っただけだと言い、それを聞いた凛々子は、「見つけた」とつぶやいて…。
凛々子は、仁和に会いに行った。未央の事件があった当時の人事部長とは仁和だったのだ。
問い詰められた仁和は、すべて会社と凛々子たち社員を守るためだったと返した。凛々子は、そんな仁和に、「一番守りたいのは自分では?」と問いかける。ゴシップとは世間話や個人的な事柄についての興味本位の噂話という意味だが、その裏には誰かにとってかけがえのない事実がある──凛々子は、それをカンフルNEWSで知ったと仁和に伝えた。
続けて凛々子は、なぜ仁和が、自分の記事を週刊東西に書かせたのかわからない、と告げる。「匿名で好き勝手言うネットの声や、事実無根の記事に負けたりしない。私にそう思わせてくれたのは仁和さんだったのに…」。
凛々子は、記事を出すと言い残し、立ち去ろうとした。すると仁和は、凛々子を呼び止め、恩師だった凛々子の母・咲恵(かとうあつき)の葬儀で凛々子と出会ってから、自分が凛々子を導く存在になろうとしたが、ずっと一緒にいる中で、凛々子に自分が必要なのではなく、自分にとって凛々子が必要な存在だと気づいた、と訴えた。
凛々子は、踵を返して仁和に歩み寄ると、彼を抱きしめる。そして、仁和と出会ったその日に凛々しく堂々と生きることを決めたのだから、見届けてほしいと告げ…。
その夜、凛々子たちは、クスノキ出版社員による就活生への性的暴行と、それを隠蔽したことを記事にする。凛々子は、自分1人で責任を負うつもりだったが、編集部員たちの強い希望で、全員の名前を添えて最後の記事をアップした。
クスノキ出版が、記事が事実であることを認めて、謝罪会見を開くとともに、被害者が警察に被害届を提出したことを受け、捜査にも協力する意向を示す。
3ヵ月後。黄実子(りょう)の店では、笹目の壮行会が行われる。
合併後の新会社に残ったのは真琴だけだった。真琴は経理部で“ケルベロス2世”と呼ばれているらしい。下馬は、NFT(=非代替性トークン)と紐づけられたデジタルアートの世界で自作の絵が売れ、会社員時代よりも稼いでいた。椛谷は、週刊東西に引き抜かれたが、今でも週に4回は黄実子の店に通っているという。根津は、フリーランスだったが、それは急に会社を辞めた凛々子を探すためだった。
凛々子のことを心配し、黙り込んでしまう根津たち。そのとき、獏(高橋侃)が、「あの人はまだ知りたがっている」とつぶやいた。その言葉をヒントに、スマートフォンで検索すると、「カンファーNEWS」というニュースサイトが見つかった。それは、凛々子が始めたものだった。
凛々子は、ワイドショー番組『ハヤミミ』の司会者・竹富(大鶴義丹)を直撃し、彼が経営しているラーメン店に関する疑惑を追及する。口コミサイトで高評価をつけているのが、竹富の主催するオンラインサロンのメンバーだったのだ。竹富は、食い下がる凛々子を押しのけて、車に乗り込んで去っていく。
地面に落ちたカバンから、散らばった荷物を拾おうとする凛々子。そこにやってきたのは根津だった。根津は、凛々子の案件を手伝うから、自分のネタも手伝ってほしい、といって、ある不動産グループのスキャンダルを口にする。「ザワザワする」。凛々子は、根津にそう告げて…。