舞台「粛々と運針」の公開ゲネプロと取材会が3月8日に行われ、主演の加藤シゲアキさん、須賀健太さん、演出のウォーリー木下さんが登壇しました。

本作は、次世代を担う新進作家・横山拓也さんと、気鋭の演出家・ウォーリー木下さんが初タッグで贈る、2つの家族を舞台にした「小さなドラマに隠れた大きな命の物語」。2つの家の平凡な生活の中に潜む葛藤を、周到なセリフの応酬で描き出していきます。

自身初となる会話劇で加藤さんが演じるのは、築野家の長男にして実家暮らしのフリーター、独身で41歳の一(はじめ)。「しっかりしている」と見られる自分とは“真逆”な役を演じることになった加藤さんは、はにかみながら「だらしなく家族に甘えている役」だと役柄について語りました。

一とは正反対の性格の弟で、既婚の36歳の紘(つなぐ)を演じた須賀さんは、「長男とは真逆のしっかりものです」と役柄について紹介し、「だからこそお兄ちゃんに対するいろいろな思いがあり、そこを会話でぶつけ合います」と、見どころを含めてコメント。

会話劇なのに舞台を駆けずり回るというウォーリー木下さんの演出について、「思っていたのと全然違う、こんなになるとは」と驚いたと語る加藤さん。

隣の須賀さんに対して「こうなるとは思わなかったよね」と同意を求めますが、ウォーリー演出を良く知る須賀さんは「今回こそはこんなに動かないと思っていた」としつつも、「真に受けないように」と、あらかじめ加藤さんにアドバイスを送っていたと明かしました。

舞台について詳しい内容を聞かれた加藤さんは、「家族の話であり、“宇宙の話”」とざっくりと説明し、「小さな話がどんどん宇宙的に広がって帰結します。これ以上は言えません」と、独特の言葉選びで観覧者の期待を煽っていました。

須賀健太「シゲさんと兄弟になれている」

“だらしない兄”と“しっかり者の弟”という兄弟を演じたことについて感想を聞かれた加藤さんと須賀さん。

加藤さんは、「どうやったら兄弟に見えるのかを(須賀さんと)話していたんですが、スタッフの方から一昨日くらいに『兄弟に見える』と言われてホッとしています」と安堵の表情を見せます。

そのコメントを受けて須賀さんは、「シゲさんと兄弟になれているんだなとうれしかった」とほほ笑み、加藤さんの役柄が「どうしようもないお兄ちゃん」ということで、「シゲさんの普段とのギャップがすごい」と目を輝かせて語ります。

「稽古場では引っ張っていってくださるので、そういう部分では頼れるんですが、役では頼りないので脳みそがおかしくなります」と答えて笑いを誘いました。

これまでしっかりした役を演じることが多かったという加藤さんは、オファーを受けたときに「こっち(弟)の役じゃなくていいんですか?」と驚いたそう。

続けて、「どうしようもない役なんですが、僕自身は楽しくて。稽古場でずっとふざけている感覚で、しっかりしている健太に毎回稽古で違うことをしても受け止めてもらっていました」といたずらっぽくにっこり。

2人を側で見ていたウォーリー木下さんは、「シゲさんはすごいしっかりしていて、全体やチームに対しても的確なことを言ってくれる。健太は今回自分がそれをやらなくていいから、すごく伸び伸びと演技をしていた。その頼ってしまっているけれど頼り切れないみたいなジレンマが蓄積されると兄弟に見えるのかな」と分析していました。

取材会の最後に加藤さんは、「同じチームで今日を迎えられたことをホッとしています。大阪公演まで走り切りたい」と改めて決意を語って締めくくりました。

<作品概要>

築野家。一(はじめ)は弟・紘(つなぐ)と2人で母を見舞う。病室で母から紹介されたのは、「金沢さん」という初対面の初老の紳士。父が死んだあと、親しい仲らしい。田熊家。理想の小さな一軒家を去年購入した沙都子(さとこ)と應介(おうすけ)。子どもを持たないと決めた共働き夫婦。平凡な生活の内に潜む2つの家の葛藤を、周到な会話で縫い合わせるように描き出す命の物語。そして縫う人々。結(ゆい)と糸(いと)は手を止めずにひたすら縫う。

PARCO PRODUCE「粛々と運針」
東京公演/3月8日(火)〜3月27日(日)PARCO劇場
大阪公演/4月8日(金)〜4月10日(日)森ノ宮ピロティホール

最新情報は、舞台「粛々と運針」公式サイトまで。