『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~』最終話完全版

五十嵐唯織(窪田正孝)と甘春杏(本田翼)は、小学校の同級生だった郷田一平(工藤阿須加)との再会を果たす。唯織との記憶を失っている杏は、唯織が同じ小学校の同級生だったという一平の言葉で、過去の記憶を思い起こそうとするが、杏の記憶がよみがえるかと思われたその時、一平は突然意識を失って倒れてしまう。

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頭部CT検査の結果、一平の左中大脳動脈に血栓閉塞が見つかる。その時、一平が甘春総合病院で眼科や皮膚科、消化器内科など、いくつもの科を受診していることが判明。杏たちは、何か別の病気が隠れている可能性を考えて追加の検査を行うことに。

軒下吾郎(浜野謙太)は、技師長・小野寺俊夫(遠藤憲一)の指示で、各科の担当医に、急患のためオーダーを受けていた検査が遅れることを説明し、頭を下げた。それに対し、脳外ばかり優先されている、と反発する医師たち。というのも、院長の灰島将人(髙嶋政宏)が今年度の収支データをもとに来年度の予算を決めると発表したためだった。

一平の病室を訪れる唯織。そこで一平は、唯織の存在を忘れていた杏のことに触れる。杏は、転校する唯織を駅まで見送りに行った帰りに事故に遭い、そこで兄を失っていたのだ。唯織は、動揺を抑えながら、同級生だということは杏には黙っていてほしい、と一平に頼む。

脳外科医の渋谷慎一(野間口徹)は、治療が終わり次第、一平を他科に回す予定だと杏に告げる。杏は、全身に疾患がある原因がわかっていないと反発したが、渋谷は専門外の疾患まで調べている暇はない、と杏の言葉に耳を貸さなかった。

ほどなく、黒羽たまき(山口紗弥加)たちラジハメンバーも、一平が杏たちの同級生であることを知る。そのとき、「肉まん」と呼ばれていた男の子がいたことを思い出しかける杏。ラジハメンバーは、真実を打ち明けるきっかけになるよう「昔、太ってたんですよね?」と唯織に声をかけるが、唯織は、たぶん一平が勘違いしているだけで、「肉まん」は自分ではないと言い切る。

杏が去ったのち、なぜ何も言わなかったのか、とラジハメンバーから問われた唯織は、今こうして一緒に働けるだけで十分だと返し…。

一平は、病室にやってきた杏に、6歳になるひとり娘・紗良(金子莉彩)の写真を見せる。紗良に心配をかけないように、出張に行っていることにしているのだという一平。杏に、誰が次の主治医になるか押し付け合って揉めているのを聞いてしまったと伝えた次の瞬間、一平は突然激しく咳き込んで倒れてしまう。

検査の結果、一平は気管支喘息であることが判明する。そこにやってきた呼吸器内科の巣鴨(平原テツ)は、杏が一平の検査オーダーを出すよう、呼吸器内科に勝手に指示を出したことに対してクレームを入れる。

その夜、ラジエーションハウスにやってきた杏は、一平が退院することになったと報告する。一平は、今後、別の病院でまた一から検査を行うことになるという。

そこで唯織は、一平の病気は、脳や目、消化器、腎臓とバラバラに見ても答えが見つからないと言いだし、各科の医師たちから情報を集めればヒントが見つかるかもしれないと続けた。その言葉を受け、「だから必要なんじゃないですか。ドクターズ・ドクターが」と言い出す広瀬裕乃(広瀬アリス)。しかし杏は、自分より知識も経験もある他の医師たちをまとめるのは無理だと思う、といって去っていく。

そんな杏の姿を見ていた裕乃は、彼女がワシントン留学に行こうとしている理由を感じ、ついそのことに触れてしまう。驚いたラジハメンバーたちは、「このままでいいのか?」と唯織に問いかけた。しかし唯織は、どんな病気も見つけられるお医者さんになりたい、と昔から言っていた杏が、夢を叶えるために前に進もうとしているのなら、止めることはできないと答える。

裕乃は、帰宅しようとしていた杏に、留学の件をラジハメンバーに話してしまったことを詫びた。続けて裕乃は、一平のことを諦めないでほしい、と訴え、どんな病気も見つけられる医者になりたいという杏の夢に憧れ、その夢を応援するためにずっと頑張ってきた人もいる、と告げて…。

裕乃の言葉で自分がやるべきことを思い出した杏は、一平のために合同カンファレンスを開くことを決意し、各科の医師たちに呼びかけた。だが、どの医師も、それを了承しなかった。

カンファレンス当日、杏は、誰もいない会議室で皆を待ち続けていた。すると、ラジハメンバーが、渋谷や巣鴨たちを連れて、次々と会議室にやってくる。小野寺を始めとするラジハメンバーが医師たちを説得し、カンファレンスに参加させたのだ。

そこで各科の医師たちは、それぞれの疾患の原因と思われるものを書きだした。その中で共通していたのは「代謝異常」。ところがそこに、灰島が現れ、「1人の患者のために、こんなにも大勢の医師が寄ってたかって…」と怒り、医師たちを仕事に戻してしまったため、カンファレンスはそこで終わってしまう。

同じころ、唯織は、以前撮影された一平の胸部CT画像と、最新の画像を比較し、左心室が肥大していることに気づく。カンファから戻ってきた杏に、読影を頼む唯織。そのとき、「代謝異常」という言葉を聞いた唯織は、何かに気づき、一平の心臓検査をさせてほしい、と杏に頼む。

唯織たちは、退院する予定だった一平に事情を伝え、心臓を色分けして映し出すことができる「T1マッピング」検査を行った。その画像から、心臓に脂肪沈着があることを確認した唯織は、一平の病気が、非常に稀な代謝異常症の「ファブリー病」である可能性が高いことを突き止める。しかもこの病気は遺伝性疾患で、子どもが女児の場合、遺伝するのだ。

そこにやってきた灰島は、すぐに一平を転院させるよう命じる。希少性の高い遺伝性疾患の場合、さまざまな責任が伴うという理由からだった。未来の家族まで責任を負う覚悟があるのか、と問われ、自分が責任を持つと答える杏。だが灰島は、ワシントン留学の件にも触れ、たった1人の患者のために将来を棒に振るつもりか、と言い放つ。

唯織は、そんな灰島に、1人では無理かもしれないがチームならできるのではないか、と言って、甘春総合病院にファブリー病の診療チームを作ってほしいと頼んだ。それでも灰島は、1人の患者のために大勢の医師の労力を割ける余裕はないという。

そこにやってきたのは、循環器内科医・大森渚(和久井映見)だった。渚は、灰島が患者を救うために、嫌われ役を買ってでも病院を守ろうとしてきたことに言及すると、灰島も唯織たちも、やり方は違えど目指すところは同じだと告げる。その言葉に、しばらく何かを考えていた灰島は、「なんと言われようと、私にはこの病院を守る責任があるんです」とだけ言い残して去っていく。

夕方、退院の支度をしていた一平の病室を訪れた杏は、ファブリー病の疑いがあること、そしてそれが遺伝性の病気であることを告げる。ショックを受ける一平。

するとそこに、灰島が現れ、一平にファイルを渡した。それは、ファブリー病診療チームの参加者リストだった。「我々が、郷田さんや未来のご家族のことまで責任を持って寄り添います」。灰島の言葉に、一平は涙を流し…。

それから数日後、読影をしていた杏のもとへ、副院長・鏑木安富(浅野和之)がやってくる。鏑木は、留学の件を切り出すと、杏が留守の間は放射線科医である自分がこの読影室を守るから遠慮せずに行ってきたらどうか、と告げた。

仕事を終えた唯織が帰ろうとすると、ラジハメンバーがやってくる。そこで下手な芝居を打ち、杏が今日の午後、ワシントンに旅立つことを伝えるメンバーたち。それを聞いた唯織は、慌てて病院を飛び出した。

杏を追いかけた唯織は、ワシントンに行く前にどうしても伝えたいことがあるといって、「好きです」と告げる。と、すぐに「僕は、放射線科医として働く、甘春先生が好きです」と続ける唯織。杏は、そんな唯織の言葉に、思わずふっと笑みを浮かべると、留学するのは本当だが出発は今日ではないと伝え、帰っていく。

唯織は、その後ろ姿に、幼いころの杏の後ろ姿を写した写真を重ね合わせた。次の瞬間、風が吹いて唯織の手から飛ばされた写真が空を舞って杏の足元に落ちた。それを拾い、写真を見つめていた杏は、一つだけ聞いていいかと前置きして、「五十嵐さんの夢はなんですか?」と問いかけた。「どんな病気も写し出す、世界一のカメラマンになることです」と答える唯織。その瞬間、杏はすべてを思い出し…。

杏は、唯織のもとから走り出すと、渚の科長室へと向かった。唯織が技師の仕事にこだわっていたのは自分のせいだった、と話す。すると渚は、杏との約束があったから唯織はこれまで頑張ることができ、誰よりも大きく成長することができた、と告げる。「今の五十嵐くんがあるのは、他でもない。甘春先生、あなたのおかげよ」。渚の言葉にこみ上げてくる思いをこらえる杏。

別の日、小野寺は、出勤してきた杏に、いつでも戻ってこい、と声をかける。そんな杏の門出を祝して、と一緒に記念撮影をするラジハメンバーたち。そこで杏は、唯織に伝えたいことがある、と言って「好きです」と告げる。が、すぐに「技師として働く五十嵐さんが」と続けた。「そっちかよ!」。苦笑するラジハメンバーたち。唯織、杏、そして仲間たちの笑顔が1枚の写真に納まって…。

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