バブル時代の高揚感や勢いを象徴するような大ヒット曲『WON'T BE LONG』はどのように誕生したのでしょうか?“六本木の帝王”と呼ばれたブラザー・コーンさんに、バブル時代の芸能界の「実際のところ」を聞いてみると…。

『WON’T BE LONG』が大ヒット!「3ヵ月ごとに何千万も入ってくる」

――そうして、1991年に代表曲ともいえる『WON’T BE LONG』(発売は1990年)が、累計170万枚を超える大ヒットとなります。

実はこのヒットが出るまでは相当長かった。最初の3枚ぐらいまではすごい人たちに曲を書いてもらっていますが、泣かず飛ばずでした。「1回、俺らにも書かせてもらっていいですか?」で書いた曲の1つが『WON’T BE LONG』です。とんねるずが『オールナイトフジ』の生放送でかけてくれたのをきっかけに、問い合わせが殺到したらしい。それで紅白にも出られて。

当時は、手応えみたいなものも特になかったんです。曲って子どもと一緒で、書いたら手放すわけじゃないですか。ちっちゃいランドセル背負わせて、「いってらっしゃい」って言って。その中で“WON’T BE LONGくん”という子だけ、しばらく経ったら「俺、パパに好きなもん買ってあげるから」って、豪邸建てて、ロールスロイスを3台ぐらい買って戻ってきたんですよ(笑)。

――下世話な話で恐縮ですが、印税もすごかったのでは?

印税がいつ入るのかも分かっていなかったから、後輩におごるために「7、8万おろそう」としたら残高が3800万円あって、「嘘だろ!?」って驚きました。そうしたらもう、3ヵ月ごとに何千万も入ってくるのでびっくりしちゃって。

――そして、曲だけでなくコーンさん自身もバブルを象徴する存在になりテレビでも大活躍します。“六本木の父”“六本木の帝王”という異名がつきましたが、実際にはどうだったのでしょうか?

新宿の「タカノフルーツパーラー」の土地の価格が世界で1位になった時代でした。もう全部がバブリーだから、飲み方もすごくて。俺もポケットに100万、200万とか入れて遊ぶこともあったけれど、当時(の豪遊)なんてそんなもんじゃない。

クレジットカードを使う人があまりいない時代で、遊びに行くと、パカッて開けたら1000万、2000万ぐらい入っているカバンを持っている人ばかりでしたよ。1本何百万もする酒がいっぱいあったから、僕が200万なんて持っていても全然たいしたことないんです。

バブル時代について語ってくれたブラザー・コーンさん

――当時はどんな遊び方をされていたのでしょうか?

遊ぶっていっても、飲みに行くとかで普通です。芸能人では、とんねるず、特に(木梨)憲武と1番遊んでいたかもしれない。時代的にとにかく羽振りがいいから、ディスコとかクラブにタダで入れるし、シャンパンも全部タダで飲めるみたいな。だから、憲武をどこに連れて行っても金がかからない。

それでも金を使い果たしちゃった時は、朝方にとんねるずの2人と国道246号線沿いに牛乳が飲めるところがあって、よくそこで牛乳飲んで歩いて帰りました。その頃は楽しいだけでなく、苦しいことも多かったけれど、今考えると笑い話だよ。本当に面白い時代でした。

――仲の良い皆さんで同じ別荘を買ったというエピソードも本に書かれています。

そうそう、千葉のマンションです。仲の良いRIKACOとヒロミと憲武、あと、サッカー選手の三浦知良のお兄ちゃんでサッカー解説者の三浦泰年さんたちと一緒のマンションを買ったんですよ。そこは“芸能人マンション”みたいな感じでしたね。

――バブル時代を経て、若いころの自分にアドバイスをできるとしたら?

自分に対しては、「もうバカなことやめろ」って言いたいです。2012年に、3週間ほど収監された時は、「芸能界だけでなく人生もダメになった」と思いました(※)。本にもその顛末は書いていますが、逮捕された時は大きなニュースになったけれど、周囲の友人たちが俺のことを信じてくれていた。

釈放された時には、憲武が高級ホテルのスイートを1週間取ってくれて、「コンちゃん、ゆっくり寝てよ」って…。なんでこいつらこんなにやさしいんだって、人の情けに毎日泣いていました。病気になった時もそうでしたが、振り返ると周囲の人たちが全部支えて、助けてくれましたね。そのおかげで復帰も早かったので、感謝しかないですよ。

(※)マネージャーへの脅迫未遂容疑で逮捕され略式起訴の後に釈放。

――昭和から平成、そして令和と見てきて、今のテレビの状況をどう思いますか?

面白い番組はいっぱいあるけれど、同じ人しか出てないから僕にとってはつまらないかな。昔のテレビは出演する側にとっても特別で、スタジオに入る時には「俺は芸能人なんだ」と、すごく優越感がありました。「今日1日、暴れてやろう」というモチベーションが沸く感じでした。やっぱりコンプライアンスの問題で、昔みたいな突発的な面白さや笑いが難しくなったし、そういうものはYouTubeで探す時代になったのかな。

緊張感もなく「暇な時にちょっと見てみようかな」っていうのがいいのかもしれないけれど、YouTubeもちゃんした番組形式みたいなものも増えてきましたね。実際には、入院している時には、Netflixばっかり見ていたので、家族からは「ネトフリ老人」って言われていました(笑)。

<書籍概要>

『WON’T BE LONG バブルと泳いだ人生』

著:ブラザー・コーン
プロデュース:Kaori Oguri
発売:講談社

【ブラザー・コーン(Bro.KORN)プロフィール】

1955年、東京都生まれ。大学在学中に出演した『とびだせものまね大作戦』(フジテレビ系)で注目を集め、1983年にBro.TOMと「バブルガム・ブラザーズ」を結成する。1990年にリリースされた『WON’T BE LONG』がミリオンヒットを記録し、1991年には『第42回NHK紅白歌合戦』に出場。2023年、乳がんと診断されたことを公表した。
2025年8月には、新曲含め新たにレコーディングされた楽曲が収録された40周年記念アルバム(2枚組)を発売。同時にデビューアルバムのリマスター盤もリリース予定。

時おりものまねも交えながら軽快なトークでバブル期の話を聞かせてくれたブラザー・コーンさん。インタビュー後編では、2023年に公表した乳がんの現在の状況。闘病経験から得たもの、そして「生きがい」だと語るお孫さんとの生活について語ります。