今回、台本の2話と3話、間違って一緒にして、印刷所回しちゃったんですよね?そうですよね?いくら今週も15分拡大だったからって、そうとしか考えられない高濃度!!
だって、今週のトピックス
・主人公・みどり(石原さとみ)、薬を味見する“ヘンタイ”っぷり披露
・今回のゲスト“大宮さん(小林隆)”の家庭の事情
・大宮さん、“何らかの薬”を多量摂取し緊急事態!
・そんな中、麻薬取締官・通称“マトリ”がやって来る!
・鎮痛作用がモルヒネの50倍、“フェンタニル”が1本足りない!
・調査が入るまでに大至急捜索!
・口癖“わかる!” 販田(真矢みき)の焦燥
・新人薬剤師、くるみ(西野七瀬)の奔走
・“調剤の魔術師”荒神さん(でんでん)の時間稼ぎ
・大宮さんが多量摂取した“何らかの薬”とは一体!?
・処方歴調査のため葵、大宮さん宅へ
・大宮さん宅から“欠けた錠剤”発見!
・“欠けた錠剤”はEB20…から始まる識別番号
・検索システムと味見によって“ロペラミド”と判明!
・だけど処方内容の裏付けに乏しく却下
・大宮さんが持っていた“診察カード”から処方した病院を特定
・“ロペラミド”の拮抗薬“ナロキソン”を投与し一命をとりとめる
・“フェンタニル”も無事発見、販田の首の皮一枚繋がる
っと、ただただ薬の名前言いたかっただけじゃないか、っていうのは置いといて、ここまでなんと30分!ありえない!!
この“大宮さん”が多量摂取した薬をめぐる謎解きと、病院薬剤師のお仕事をHOW TO的に紹介しながら繰り広げた“マトリ”の攻防戦は、もっと間を引き伸ばして、1時間使って描いたってまったく問題ない、それくらいのエピソードだっていうのに、なんてありえないスピード感と濃度で進行していくんでしょう、このドラマは。この先、大丈夫?って心配になっちゃうよ。
だけど、スピード感と濃度はありえないんだけど、物語としては“ありえない描写”にしない、ディテールの積み重ねが見事。
例えば、大宮さんの自宅へ行くのに“外出許可届”が必要で上長の印が2人分必要だったりとか、金庫に保管されていた“フェンタニル”を持ち出す際、看護師と一緒に指差し声出し確認してたりとか、エンターテインメントとリアリティのバランスが絶妙すぎる。
あの辺の描写の有り無しで視聴テンションってかなり左右するから、そこをちゃんとフォローしてるんだよね。しかも“外出許可届”には最後にもう一個謎解き的な展開も用意してるっていう…。
あとちょっとふざけたドラマだったら、くるみはもう少しドジっ子キャラにして、“フェンタニル”をすっ転んで落として大惨事!みたいな展開にもしちゃうんだろうけど、そんな僕を見透かしてるかのように、一回階段付近でこけそうになって踏みとどまる…って、そんな気付くか気付かないかの描写まで入れてくるという芸の細かさよ。
とはいいつつ、荒神さんの手品のくだりはふざけすぎのギリギリライン。なんだけど、最終的にその手品によって危機から免れるという、おふざけを伏線にしてしまうことで、最初のありえなさを帳消しにしてしまうという巧さ。…ため息、出るよね。
でもって残りの後半で何を描いたかって言えば、みどりの患者に寄り添いすぎる姿勢と対比するように、刈谷(桜井ユキ)の考え方をさらに提示し、深めるエピソード。
より多くの処方箋をさばき、診療点数を稼ぐことで病院に利益を生み、それが巡り巡って患者のためになる…という考え方を1話以上により明確に掘り下げてみせた。
そしてみどりも刈谷も、どちらも正しく、間違っていない…むしろ刈谷もみどりのように患者に寄り添いたいと思っているんだ…お互いを認め合っているんだ…なんていう気の利いた雰囲気も出しつつ、それぞれがそれぞれの考えで患者さんと向き合っていけばいいじゃん…といったどっちの考えも否定しない、むしろそんな究極の選択に物語上オチがつくはずがない、視聴者にそれを考えさせ、余韻を残しただけで成功…っていう決着で乗り切ってもよさそうだし、それでも全然納得できるレベルに到達してたはず。
なんだけど、みどりの単独行動が大宮さんを救い、その思いが通じ、転院したいと願い出る、それはつまりみどりの病院で手術を受ける、入院するということで、みどりの行動にもしっかり利益が生まれる結果となりました、時間はかかるかもしれないけれどね…っていうオチ。美し過ぎる!
だからね、やっぱりこの後半のエピソードはきっと第3話で、2週またぎで完結させようとしたお話だったんですよね?だって前半と後半のエピソードがあまりに良質過ぎません?
もし僕が脚本家だったら出し惜しみして、荒神さんの手品のくだりとかもっとくだらなくしたりなんやで長引かせて1時間尺に絶対しちゃうし、じゃなくてもプロデューサーだったら、このエピソードは1時間だともったいないから2話にしましょう!って絶対言うもんね。もったいないもんね。だから、2話と3話、一緒にしちゃって、間違って印刷所回しちゃったんですよね?(絶対違う)
なんちゅう出し惜しみなしのエンターテイナー集団なんですか?
っというわけで、このドラマの核と言ってもいいみどりの単独行動問題が2話ですでに解決しちゃったようなもんだから、今後描くことないですよね?だからこそ、どうなってしまうの?なにが描かれるの?って気になって仕方がない。
もちろん2話までにほんのり描かれた小野塚(成田凌)の謎とか、ドラマ全体の縦軸の物語も気になるんだけど、描き切っちゃってる、すでに…って思ってる自分に、今後何を見せてくれるのか?しかも今回のような高濃度なんですよね?って期待とともに楽しみになっちゃうドラマ…なかなかないですよ。
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)