あの“問題作”!?を作った、超フレッシュな若手ディレクターを直撃した。「テレビが作りたくてしょうがない」というマッシュルームヘアにめがね姿の彼の頭の中は、一体どうなっているのか?
フジテレビ深夜のチャレンジ枠「水曜NEXT!」で11月24日(水)に放送された『ここにタイトルを入力』だ。バイきんぐ小峠英二がMCの『今夜もグダグダ気分』というゆる~いトークバラエティ。しかし、ひな壇芸人たちのトークはなんと「先に収録済み」で小峠はそのVTRに合わせて司会をしなければならないという“前代未聞”の番組だったのだ。小峠はのちに「この世の終わりのような収録」とコメントしたほどで、相当なエネルギーを使ったことは間違いない。
<カオスだった!フジ深夜バラエティ『ここにタイトルを入力』MC・バイきんぐ小峠は「この世の終わりのような収録」>
深夜の放送や配信を見た視聴者からは、「ヘンテコすぎて笑った」「ずっとよくわからんかった笑」「ひどい実験番組すぎて面白かった」「フジテレビやばいな」などの声がSNS上に上がっていた。そして…「入社2年目、おそるべし」のコメントも。そう、この番組を演出したのが、入社2年目の原田和実ディレクターだ。フジテレビュー!!は早速原田Dをインタビュー。なぜあのような番組を思いついたのか?作ってみてどうだった?出演者たちのリアルな反応はどうだったのか?
<フジテレビ原田和実ディレクター(入社2年目)インタビュー>
――まずは入社2年目にして初めて企画が通り演出デビューした感想は?
ありがたかったです。でもとにかく「テレビが作りたくて」フジテレビに入って、1年目から企画を出していたので「やっと通った!」という思いもあります。一方で、先輩たちから「経験を積んでからわかることもある」と言われていたので、今ももちろん下積みですが、ADとしての経験があるからこそできることも多くなっていたタイミングだったと思います。20代の今、今年も来年もどんどん作っていきたいです。
――そもそもなぜこの企画を思いついたのですか?
学生時代に演劇をやっていて、自分で脚本・演出する劇団を持っていたんです。ヨーロッパ企画さんの作品が好きで。上田誠さんの時間もので、“こんなシチュエーションでそんな時間移動!?”みたいな掛け合わせの妙みたいなものがずっと好きだったんですね。ということで、学生時代からトークバラエティという設定で、時間ものができないかな、とずっと考えていたんです。
今回、僕の中では、ひな壇の映像というのがタイムカプセルみたいなイメージで、そのタイムカプセルの映像が未来のMCに託されるという時間もので作れないかな、と考えました。
小峠に台本を用意も「いや、見ないですね」
――小峠さんはどこまで内容を知っていたのでしょうか?
小峠さんには、企画の大枠の趣旨は説明してあります。でも、台本も用意していたのですが、小峠さんは「いや、見ないですね」というスタンスだったので、びっくりしました。あえて見なかったのだと思います。ひな壇の映像も、全く見ずに本番にのぞんでいたので、本当にすごいと思いました。
ひな壇側の芸人さんには、大きな流れは台本通りにやっていただきましたが、話す内容や、途中のアドリブはお任せしました。小峠さんが後でどうやってツッコんでくるのか、など想像できていないので「放送を見るまでは、どうなるのか全くわからないね!」と口々におっしゃっていました。
「小峠さんののどがちぎれるんじゃない?」
――収録後、出演者の皆さんはどんな様子でした?
小峠さんに「気になるところはありましたか?」と聞いたら「いやぁ、どうでした?」と逆に聞かれて(笑)。「大丈夫だと思います」って答えたら「じゃ、大丈夫です」と。でも終わったあとも「大丈夫かなー、怖いなー」とおっしゃっていました。ひな壇の皆さんは、戸惑っていたと思います。その場で作り上げていましたから。笑っちゃいけない感が現場にありましたし、ツッコミがいないので、音がなくて変な空気が流れている状態だったので、ストレスが強い現場だったと思います。撮影が終わると「どうなるの?」「小峠さんののどがちぎれるんじゃない?」と感想を話していました。
――番組が進んでいく中でテロップなどで「ひな壇部分は先に撮影してます」という説明がなかったのはなぜ?
テレビとして“正しい”とは正直思っていなくて、視聴者の皆さんにも不親切だったかもしれません。でも、途中から見たところで面白いのかな、と。途中から見た人が60点楽しむのであれば、最初から見た人が120点楽しめるものに。「そんなのテレビでやるな!」、と言われたらそれまでなのですが(笑)。
――実際に今回の番組を完成させてみた感想は?
大分怖いですね。でも見たことのないものになっているので、ある種の実験として楽しんでいただけるのでは、と思う一方で、小峠さんのツッコミ力や洞察力がいかんなく出ているので、楽しんでいただきたいです。スタッフの笑い声も入れないようにして、どこで笑ったらいいのか、などをあえて提示していません。この企画が一番伝わるような形にしようとした結果、よくわからないものができてしまったかもしれませんが(笑)。
映像の見た目という面では、どんぴしゃでうまくいったと思っています。元々、ひな壇を全部液晶にしたら面白いなというのがあって、でも予算の問題でグリーンバックかな、とも思っていたのですが、『FNS歌謡祭』の背景でめちゃくちゃでかいモニターがあって、「いけるかも!」と(笑)。企画書の段階で液晶モニターを入れたい!と書かせてもらいました。予算がかかってしまったのですが、プロデューサーの先輩が一生懸命ねぎったり調整してくれたりして、感謝しかありません。
『FNS歌謡祭』の巨大モニターを見て「いけるかも!」
――先輩たちからいろいろと教えてもらっているとのことでしたが、今回生かされたものは?
いろいろありすぎるのですが…例えば「結局お前が決めるんだよ」という言葉です。いろんな方から意見をもらっても、最終的には自分で責任を持って判断する、ということを意識しました。僕は普段、人の意見になびいてしまう、断れない性格なんです。
2週連続で放送される『ここにタイトルを入力』。12月1日(水)の放送は、バカリズムがMCの恋愛お悩み相談番組とのこと。原田ディレクターのこだわりがどのように爆発するのか…?普段は『ネプリーグ』や『ENGEI』系の特番のADとして日々奮闘中。企画がまた通れば、ディレクターとして活躍することになるという彼の今後に注目だ。