『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~』第6話完全版
甘春杏(本田翼)をめぐる五十嵐唯織(窪田正孝)と、整形外科医・辻村駿太郎(鈴木伸之)の静かなバトルが続いていた。
ある日、辻村は、唯織の目の前で杏を誘い、一緒にランチに出かける。すると院長・灰島将人(髙嶋政宏)から、至急戻るよう連絡が入る。辻村が、医療過誤で訴えられたのだ。
同じころ、ラジエーションハウスでは、田中福男(八嶋智人)が男性患者のMRI検査を行っていた。その様子を見ていた軒下吾郎(浜野謙太)は、自分が撮り直すと言って患者の武藤健(片寄涼太)の許可をもらい、再検査を行う。実は、辻村を医療過誤で訴えたのは、この武藤という弁護士だった。
武藤は、精密検査を受けるという形で甘春総合病院に入り込み、スタッフの仕事ぶりや設備をチェックしていた。
武藤は、辻村が重大な病気を見逃した、とだけ告げると、思い当たることがあったら連絡してほしいとラジハメンバーたちに頼む。エリートである医師は過ちを認めず、保身のためには隠ぺいにも手を染めるものだと決めつける武藤。ラジハメンバーのもとを訪れたのも、地位や名誉とは無縁のスタッフならば本当のことを話してくれると信じているからだという。自分たちを見下すような武藤の発言に不快感を抱く広瀬裕乃(広瀬アリス)や黒羽たまき(山口紗弥加)たち。
副院長・鏑木安富(浅野和之)によれば、問題となった案件とは、半年ほど前の出来事だという。曽根京子(澤井孝子)という70歳の女性が心筋梗塞の疑いで甘春総合病院に救急搬送されてきた。そのとき、救急科にヘルプで入っていた辻村が処置を行ったが、京子はもともと、リウマチの治療で辻村のもとへ通っていた患者だったのだ。
幸いにも京子は帯状疱疹による肋間神経痛で大事には至らなかったが、その際辻村に、痛みが落ち着いたら大好きなテニスを再開しても良いかと尋ねていた。ちょうどそこに急患が入ったこともあり、適度な運動であれば問題ないと答えていた辻村。だが、2週間ほど前、京子はテニス中に臀部の激痛に襲われて倒れてしまう。骨盤骨折だった。
京子の家族は、骨折の原因は骨粗しょう症によるものだとして、それを見逃した辻村を訴える。いまも寝たきりに状態の京子。ただ辻村は、定期的に京子の骨密度検査を行っており、その数値は正常の範囲内だったという。
その夜、技師長の小野寺俊夫(遠藤憲一)は、CT機器の最新技術について書かれた何冊かの本が入った箱を持ってきて、誰かこれを勉強しておいてほしいと言いだす。それを押し付けられたのは軒下だった。
一方、唯織は、京子が外来で来たときのカルテを調べていた。すると、鏑木が言っていたように、京子の骨密度の数値は正常の範囲内だった。だが、武藤の経歴を調べてみると、彼は高校時代に父親が腹痛で病院に救急搬送され、その翌日に急死するという経験をしていた。担当した医師は軽い腸炎だと診断し、救急の処置にも問題はなかった主張したため、その死の真相は今も明らかになっていないのだという。
武藤にとっては、誰にも自分と同じような経験をしてほしくない、という強い思いこそが、医療過誤と戦う動機になっていたのだ。
灰島は、情報の漏えいを恐れ、京子に関するデータの閲覧や口外を禁止する。そして辻村には「病院はあなたを守ります」と告げ…。
あくる日、武藤は、大量の資料を持って甘春総合病院を訪れ、顧問弁護士を従えた灰島、鏑木、辻村と対峙する。そこで武藤は、辻村が整形外科医でありながら頻繁に救急科のヘルプを行っていることに言及し、疲労の中で診察がずさんになっていたのではないか、と指摘し、過失を認めるよう迫った。「裁判ともなれば5年はかかる。曽根さんは高齢です。あなたは彼女の残された時間まで奪うつもりですか?」。武藤の言葉が、辻村の胸に重くのしかかり…。
軒下は、小野寺から渡されたCT機器の専門書が入った箱を倉庫に片付けるよう、悠木倫(矢野聖人)に指示していた。そこにやってきた武藤は、辻村が過失を認めたことを技師たちに伝える。武藤は、病院関係者の勤怠や物品の購入履歴など、入手した情報を徹底的に調べ上げていた。
辻村が過失を認めたことを受け、灰島は、正式な処分が下るまで彼に謹慎を命じる。と同時に、救急科のヘルプをしていた辻村の働き方に問題があったとして、今後は他科の医師による救急科へのヘルプも禁じ、体制が整うまでは救急患者の受け入れを中止にすると決める。
杏のもとを訪れた辻村は、京子を救う機会が何度もあったはずだと後悔の念を口にする。そして、自分は杏には相応しくないと言いだし、交際を申し込んだ件はなかったことにしてほしいと頼む。
その後、辻村は、ラジエーションハウスに向い、迷惑をかけてしまったことを謝罪した。その際、唯織が京子に似た症例を調べていることを知った辻村は、余計なことはするなと釘をさし、去っていく。
裕乃は、杏やラジハメンバーがいなかったときに甘春総合病院を支えていたのは辻村だったことに触れ、このままでいいのかと訴える。そのとき、悠木があることを思いだした。倉庫にはこれまで撮影された画像データが未整理のまま保管されていたのだ。
ラジハメンバーと、辻村のために唯織に助けを求めに来た杏は、DVDなどに保存された2000枚にも及ぶ各装置のバックアップデータを手分けしてチェックする。
そこでついに、京子の腹部から股関節にかけての造影CTデータを見つける唯織たち。それが、小野寺が勉強するよう指示したデュアルエナジーで撮影したものであることに気づいた唯織は、そこから計算によってカルシウム密度を出せるのではないかと考える。軒下が小野寺の指示を無視してデュアルエナジーの勉強をしていなかったことがバレ、代わりに作業に取り組む唯織。
あくる日、ラジハメンバーは武藤を呼び出す。そこで杏は、唯織が導き出した結果から、京子の骨密度は成人男性と同等であったことを伝え、骨粗しょう症であった可能性は極めて低いと伝える。続けて唯織たちは、京子には別の病気が潜んでいる可能性があることを指摘し、ここで検査を受けるよう伝えてほしいと武藤に頼んだ。
それに対して武藤は、検査を行うにしても甘春総合病院でやるわけがない、と返す。だが実は武藤自身も、京子に微熱があることを知って自ら調べ、骨粗しょう症以外の病気の可能性があることに気づいていた。ここで検査する理由として、技師の腕が重要だという杏に、違いがあるとは思えないと返す武藤。
すると田中が、武藤の心臓を撮影したときの2枚の画像を見せた。1枚は冠動脈がぼけている田中が撮影した写真、もう1枚は軒下が撮り直した、冠動脈が鮮明に映し出されている写真だった。
武藤は、検査はするが敵には任せられない、という。そんな武藤に、「私たちは的じゃありませんよ。武藤さんは何のために戦っているんですか?」と問いかける裕乃。唯織も、京子を救いたいという目的は同じはず、と告げ…。
小野寺が武藤に告げた検査時刻の18時。現れたのは灰島だった。灰島は、事態はすでに解決しているのだから余計なことはするな、と指示した。するとそこに、武藤や息子の優(西山聡)に付き添われて、京子がやってくる。ラジハメンバーはただちに京子の検査を開始した。
そこへ、救急搬送の受け入れ要請が入る。交通外傷により、多発骨折を起こしているという。灰島は他の病院を当たってもらうよう指示した。そこにやってきた循環器内科医で前院長・大森渚(和久井映見)は、救急の患者を受け入れ、辻村も呼ぶよう指示した。渚は、勝手な指示に怒る灰島に、辻村の潔白が証明されれば問題ない、と告げた。
胸腹部の造影CT検査の結果、京子は悪性リンパ腫であることが判明した。以前のCT画像には兆候が見られなかったことから、最近になって発症したものと思われたが、幸い、病変が限局しており、化学療法や放射線治療で根治も望めるものだった。
唯織は、検査を受けるよう京子や優を説得した武藤に礼を言った。すると武藤は、「父もこんな病院で診てもらえたらな」とつぶやき、唯織たちに頭を下げて去っていく。
深夜、帰宅しようとしていた唯織を呼び止めた辻村は、礼を言って頭を下げた。自らの未熟さを痛感したという辻村は、「やはり君には勝てそうもないな、」とつぶやき…。
あくる日、ラジエーションハウスにやってきた辻村は礼を言うと、救急科に転科することを報告する。救急科を維持するためでもあったが、それ以前に、自分自身を鍛え直したいという思いからの決断だった。辻村は、「あの話、忘れてほしいといったが撤回する」と杏に告げると、唯織にも、改めて勝負を申し込んだ。
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