俳優、タレントにとどまらず、音楽番組のMC、脚本、監督にも挑戦し、多才ぶりを発揮している千葉雄大。

綾野剛主演の『アバランチ』では、社会の巨悪と闘うアウトロー集団「アバランチ」の一員で天才ハッカーの牧原大志を演じている。

<『アバランチ』の関連記事はこちら>

“マッキー”の愛称通り、かわいらしい雰囲気を漂わせる半面、第2話では、実の姉を死に追いやった者に対して激しい感情をあらわにする場面もあった牧原。演じる千葉に、役柄へのアプローチ、現場の雰囲気、作品の魅力や休日の過ごし方などを聞いた。

<千葉雄大 インタビュー>

ひょうひょうとすることで、「何考えているんだろう、この人」と思えるキャラになった

――第2話で、牧原の過去も明らかになりましたが、牧原にはどんな印象がありますか?また、演じる上で心がけていることはありますか?

牧原は、わりとひょうひょうとしているのですが、まっすぐな部分もあって、ちゃんと温度がある人物だと思っています。

メンバーの中で、牧原の過去が最初に明かされたので、第2話ではその感情の出し具合をどこまでやっていいのか、バランスが難しかったです。藤井道人監督が「第1話と第2話の感じがちょっと変わるという差があるとおもしろいね」とアドバイスをくださって、そこは少し意識しました。

最終的には、あまり頭で考えずに、その場で出てきた感情をそのまま出したという感じです。

また、この現場は1つのシーンを最初から最後まで通して、何度も本番をやるんです。だから、毎回同じ感情を出すのに集中力が必要で、それが大変でした。僕は、不器用な方なので、とにかく集中して演じることを心がけています。

――天才ハッカー役ということで、意識していることはありますか?

最初に台本を読んだ時に、色づけがいろいろできるキャラクターだと思いました。例えば、モニターで周りを囲んでしまって、他人を寄せ付けないようなキャラクターにもできたと思うんです。

でも、藤井監督が「わりとひょうひょうとした感じで」とおっしゃって。それでやってみたら、「何考えているんだろう、この人」と思えるキャラになって、その方がおもしろくていいなと思いました。

ただ、ほかのメンバーに比べて、牧原だけやけに明るすぎてもおかしいですから、その場の空気感を壊さないようには意識しています(笑)。

──牧原は、巨額の利益を得るデイトレーダーでもありますが、ご自身はITに強いですか?

あんまり言いたくないんですけど、実は全然ダメです。アナログ人間で(笑)。

キーボードを打つシーンが多いので、そういう資料映像をいただいて見たり、「アバランチ」の資料を用意するのは牧原なので、映像を映し出したりする手順は毎回違うから、指示していただきながら演じています。

「ポケモン」経験者の先輩として福士蒼汰にアドバイスするも、英語バージョンで「敵わないなと(笑)」

──現場の雰囲気はいかがですか?

楽しいです。綾野さんは、僕の人となりを知ってくださっているから話しやすいんですが、そんな綾野さんと僕の関係性に、綾野さん演じる羽生誠一と牧原の関係も近づけてくれて。

最初は、台本に「羽生さん」とあったんですけど、「羽生ちゃん」にしようということになって、それからはずっと「羽生ちゃん」(笑)。役柄が最初とは違う関係性になったりして、自由な感じでおもしろいです。

福士蒼汰くん(元捜査一課の刑事・西城英輔役)とは、ポケモンの話をしました。福士くんは、最近ポケモンを始めたらしいのですが、かつて僕もやっていたシリーズだったので、ちょっと調子に乗って先輩面してアドバイスしたんです。でも、よくよく見たら、福士くんは英語バージョンでやっていて。敵わないなと思いました(笑)。

木村佳乃さん(警視庁特別犯罪対策室室長・山守美智代役)は、すごくお話してくださいます。メリハリがある現場なので、緊張感がありつつも、緩む時はみんなで楽しく話したりして、すごく楽しいです。

バラバラに見えて、核の部分で固くつながっている。そんな「アバランチ」の絆はすごく素敵

──「アバランチ」というチームはどういう印象ですか?

メンバーは、それぞれ傷があって、誰1人として同じ境遇ではないんです。だから、バラバラなように見えて、実は核の部分は固くつながっている。その仲間意識が、「アバランチ」の独特のつながりなんですよね。

だから、たとえ自分の目的が達成できたとしても、「じゃあ、抜ける」ということにはならない。そこに「アバランチ」の絆があって、それはすごく素敵だなと思います。

──今後、物語はどう展開していくと思いますか?

僕たちも、台本をもらって初めて知ることばかりで、この先どうなるのかわからないんです。もしかしたら刺されるんじゃないかと想像してしまうくらい(笑)。

海外ドラマだと、主要人物が途中で殺されてしまうことが普通にあるじゃないですか。このドラマもそれくらい先が見えないんです。

SNSに制裁を委ねる「アバランチ」には正解がない。いろいろな解釈があるからおもしろい

──本作は、「アバランチ」が社会の巨悪をあぶり出して、その悪事を全世界に生配信することで、動画を見た人間に裁かせるという物語です。この企画を聞いた時にどう思いましたか?

今は、SNSの時代で、「アバランチ」みたいな人たちが現れた時に、キモいと思う人もいれば、めちゃくちゃカッコいいと思う人もいると思うので、そこには正解がないのかなって。

今までのドラマであれば、最後は悪者が逮捕されるなどわかりやすく描くものがほとんどでしたが、本作は「あとの判断は、この動画を見ているすべての人に委ねます」というスタンスで、悪党がどうなったかはっきり描かれていないんです。

でも、この作品はそれでいいと思います。いろいろな解釈があるからおもしろいのかもしれません。

“あざとかわいい”などさまざまな形容詞をつけられ、「自分でもわからなくなっちゃった(笑)」

──千葉さんは、作品ごとにまったく違った印象で、ミステリアスな雰囲気があります。“あざとかわいい”などと言われることについてどう思いますか?

“あざとかわいい”とか言っていただくのですが、ある時期からそういう枕詞みたいなものをたくさんつけていただいて、自分でもわからなくなっちゃって(笑)。自分としては、その役柄を演じているだけで嘘をついているわけではないんです。

逆に、どの作品もみんな同じだったら、それはそれでおかしいじゃないですか。牧原が、ドラマ『いいね!光源氏くん』の光源氏みたいだったら(笑)。

でも、じゃあ、どれが本当の千葉雄大なのかと聞かれると、僕もわからないです(笑)。

ただ、このインタビューも全然演じていないんですけど、基本的に世間話が苦手だし、気分屋なところがあるので、ミステリアスと思われるのかもしれません。たとえば、インタビューで「休みの日は何をしているんですか?」とか聞かれて、普通に答えているだけだったりするんですけどね(笑)。

──休みの日は何をしているのですか(笑)?

規則正しい生活を心がけているので、朝5時に起きて、散歩して、掃除して、ご飯作って、ちょっと昼寝したり、台本を読んだりしていると、気づいたらだいたい夕方になっていますね。コロナ禍でどこにも行っていないし。

あとは、ビーズでアクセサリーを作ったり。それくらいです。ミステリアスですか?(笑)

──1人上手ということでしょうか。

上手だと思います。でも、めちゃくちゃ寂しがり屋なんです。だから、生きづらいです(笑)。

──その半面、俳優のほかにWEBラジオ「千葉雄大のラジオプレイ」の配信や、「アクターズショートフィルム2」に参加して脚本・初監督に挑戦しています。自己プロデュース力が高いと言われませんか?

恐縮です(笑)。俳優以外のことに挑戦することで、自己プロデュース力があると言っていただくことはありますけど、まだ動き出したばかり。WEBラジオは、これからもっとがんばりたいと思っているので、『アバランチ』とともによろしくお願いいたします(笑)。

撮影:今井裕治