東京に暮らす東京人が語る、自分だけの東京ストーリー。第5回は、モデルとして多くのショーや広告などに出演し、20代後半からは俳優として、月9ドラマ『ラジエーションハウス』(フジテレビ)シリーズや多数のドラマ、映画に出演している丸山智己。高校卒業後に、長野県から上京した丸山が感動し、訪れるたびに今でも初心に帰らされるという東京とは。

<丸山智己の、東京物語。>

僕は、長野の出身で、地元の高校を卒業後に上京してモデルの仕事をはじめました。そこで最初に住んだのが、大田区のすごく辺鄙(へんぴ)なところ。五反田駅(品川区)から東急池上線に乗った先にある駅でしたが、最初に降り立った五反田駅のホームから見えたのが「ソープランド」と書かれたでっかい看板で。「これは、エラいところにきちゃったな。どんな東京暮らしが待っているんだろうか…」と不安を感じたのを覚えています。

なぜ、そんなところに住んだのか…当然、右も左もわからないので、「どこか安い物件を」とモデル事務所に聞いて紹介してもらい、言われるがままに決めたのです。今のようにネットもない時代ですから、どこへ行くにも地図を片手に路線を乗り換え、やがてバイクに乗るようになると、オーディションも仕事現場もバイクで行くことが増え、「ここが銀座で、ここが目黒か…」といった具合に、道を覚え、土地勘もつけていきました。

若いころは、恵比寿、代官山(ともに渋谷区)といったおしゃれなところにも憧れ、代官山でアルバイトもしていました。渋谷の公園通りにあるパスタ屋さんでも働いたり、あとは、下北(沢/世田谷区)にお芝居を観に行ったり、今でもサーフィン仲間である友人の実家が新木場(江東区)にあって、そこへしょっちゅう遊びに行っていたり…新宿方面にはちょっと縁が薄い気がしますが、いろいろな東京を知っていきました。

その中で、自分的に“東京の象徴”といえるのは、なんといってもお台場(港区)です。初めて行ったのは、20代後半くらいかな。雑誌か何かの撮影だったと思います。自分で車を運転してレインボーブリッジを渡ったとき、目の前が一気に開ける景色に、空を飛んでいるような感覚になって。田舎者なので、テレビでも見ていたその光景に圧倒され、「うわ、東京に来たなぁ~」と感動しました。

それから、ドラマの仕事をするようになり、フジテレビで『メイちゃんの執事』(2009年1月期)に出演していたころは、車で湾岸スタジオにも通いました。日中に見る景色もいいですが、夜景はまた格別です。仕事帰り、台場から高速に乗ってレインボーブリッジを渡り、左手にフジテレビや(商業施設群の)デックス東京ビーチを見て、前方に芝浦ふ頭のビル群、東京タワーまでもが臨める景色は、キラキラして本当に東京らしくて、いまだに「俺、東京にいるんだな」なんて実感させてくれます。

たまに家族で千葉方面に行って帰るときでも、僕はレインボーブリッジを通りたがります。それで毎回「きれいだな~」と感動するんだけど、子どもたちは「そうだね…」なんて言いながら、携帯をいじっていたり(笑)。「なんだよ、お前ら…」と思いつつも、僕は、毎回、テンションがあがる。

もちろん、素で感動している部分が大きいのですけど、あえてそこを確認している自分がいるのかもしれない。渋谷でも代官山でも、1ヵ月もすれば、最初に訪れた感動は薄れてしまうものじゃないですか。だけど、それを当たり前だと思って慣れたくない自分がいるといいますか。

僕にとって、長く住んでいるとはいえ、東京はやっぱりちょっと不思議な場所。いつまでたってもそこに慣れない田舎者でいたい、って気持ちがどこかにあるんだと思います。

<丸山智己オススメ/東京、グルメスポット>

◆ピニョン

住所:渋谷区神山町16-3 

さっき話した、友人がやっているカジュアルフレンチの店です。20歳のころに「シェフになる」と宣言をして修行に入り、努力して自分の城を持ち、この間、13周年を迎えたんですよ。結婚記念日、家族や友人の誕生日とか、何かあると僕も利用させてもらっています。最近、“奥渋”なんて呼ばれる、渋谷でも静かなエリアにあって、雰囲気もいいし、料理もおいしい。いい店ですよ。

Tomomi Maruyama
長野県東御市出身。俳優、モデル。モデルとして、広告やショーに多数出演後、20代後半から俳優として多数のドラマ、映画に出演。現在放送中の『ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~』(毎週月曜21時~/フジテレビ)に、放射線技師役で出演。趣味は、サーフィン、キャンプ、料理。詳細は、公式サイトへ。

撮影(東京風景):YURIE PEPE