フジテレビのスポーツニュース『S-PARK』では、8月2日(日)~30(日)の5週にわたり、日曜S-PARK特別企画として「2020夏 これが、僕らの甲子園。」が放送される。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で「甲子園」がなくなった高校球児たちは、“最後の夏”に何を目指し、何を思うのか?球児たちのリアルに迫るドキュメンタリーとなっている。
取材は「球児たちの思いを伝えたい」と、立候補した若手ディレクターたちが担当。この夏、5つの“知られざる物語”を描く。
また、放送だけにとどまらず、FNNプライムオンライン、フジテレビュー!!が連動し、webでも5回の連載として多角的に記事化していく。
最終週となる今回は、8月30日(日)放送、第5回「神奈川県・星槎国際高等学校湘南」を紹介する。
第1回「三重県・白山高等学校」の記事はこちら
第2回「広島県・広陵高等学校」の記事はこちら
第3回「群馬県・健大高崎高等学校」の記事はこちら
第4回「神奈川県・立花学園高等学校」の記事はこちら
<第5回 神奈川県・星槎国際高等学校 湘南 8月30日放送>
神奈川県・星槎(せいさ)国際高等学校湘南 。ここに、 甲子園中止発表から、ゴールを迎えるまでの103日間、全力で駆け抜けた一人の3年生がいる。
吉濵良真(よしはま・りょうま)選手。 野球をするのは高校までと決め、卒業後は就職という道を選んだ。だからこそ行きたかった甲子園。集大成を見せるはずだった最後の夏――。
甲子園を野球人生の終着点にしていた球児のリアルが、そこにはあった。
星槎国際高等学校湘南は、2015年に名将・ 土屋恵三郎(つちや・けいざぶろう)監督が就任すると、2年前の夏、最高成績となるベスト4に進出。
そんなチームのスローガンは、「必笑」。
全国屈指の激戦区・神奈川で優勝を目指すチームの中で、 吉濵選手は、サードコーチャーを任されている。土屋監督は「彼は、本当に真面目。もう、まっすぐだから」と、吉濵選手のことを語る。
だが、夏の甲子園中止が決定。その舞台を奪われ、 吉濵選手は落胆。
濱田琉大(はまだ・りゅうた)主将が、「3年生29名全員で甲子園目指した日々は、みんなの宝物だと思う」と語りかけるも、泣き崩れる3年生たち…それでも、泣き崩れている選手から、素振りを始めた。
吉濵選手も、このときのことを「何も考えられなかったので、ただスイングすることしかできませんでした」と振り返る。
残酷な発表から、わずか3日後。野球部の面々は、笑顔を見せていた。笑顔~「必笑」。チームスローガンを全員が体現していた。
だが、これは吉濵選手にとって精一杯の強がりだった。「3年間やってきたことが、無駄になったと思っているので… (笑顔は)ちょっと無理している部分はある」と、正直な気持ちを打ち明ける。
甲子園中止が発表され、周囲から集まった励ましの声にも、「そういうのは、考えられなかったです。テレビとか新聞も見ない、部屋に籠(こ)もっていたと思います」。
吉濵選手は、6月、自粛が明け全体練習が始まっても、なかなか前を向くことができずにいた。
そんな気持ちに変化をもたらしたのは、 親友で、同じ3年生でセンターのレギュラー、茂木陸(もてぎ・りく)選手の一言だった。
茂木選手:「ここでじっとしていても仕方がないので、やるべきことはまずやって、気持ちはたぶん後からついて来ると思う」と言って。
吉濵選手 :相談っていうか、支えてくれた。「最後まで一緒に頑張ろう。やりきろう」って話しかけてくれたので。
さらに吉濵選手を駆り立てたのは、両親の存在だった。就職するのは「両親に恩返しするため」。両親は「思いやりがあって、本当にやさしいんです」「良い子に、まっすぐ育ってくれた 」と、口をそろえる。
甲子園の夢が絶たれた日も、部屋に戻って一人で泣いた。父の勧めで始めた野球。野球を続けさせてくれた両親のためにも「甲子園に出る」という夢を叶えたかった。
だが、両親の願いは甲子園に出ることではなかった。吉濵選手は、「(両親から)『最後までやりきれ』という言葉をいただきました」と語る。
野球人生をやりきろう ――。
変わるきっかけをくれたのは、親友と両親の言葉だった。
「しっかりサポート、裏方に回って支えようという気持ちになりました 」と、練習ではノックに入らず、ランナー役でサポートに徹し、練習試合では、サードコーチャーとしての能力を磨いていった。これが、吉濵選手が「勝って、笑って終わる」 ために導き出した答えだった。
その後、神奈川県・独自大会が開催されることになり、3年生だけの入場行進が行われた。今回は、コロナウイルス感染対策のため、保護者は入場することができない。
それでも、両親に見せる最後のユニフォーム姿。一生に一度の特別な入場行進。「3人で写真撮るなんて入学式以来だな」という父、母と一緒に記念撮影をした。
迎えた神奈川県・独自大会。吉濵選手は、サードコーチャーとして、時には代走として、ツーランスクイズを見せるなど勝利に貢献していく。 準々決勝では、 吉濵選手の好判断もあり、優勝候補・桐光学園を撃破。「ここまで来たからには、決勝まで行きたいと思います」と意気込む。
番組では、独自大会の行方、そして大会を終えた吉濵選手と両親のやりとり、自分を奮い立たせた103日間を振り返った吉濵選手の表情、コメントなどを伝える。
2020年夏。一度は夢を奪われた球児たち。それでも彼らは、前を向き人生を歩み続けていく。
担当ディレクター:中野舞、西條尊仁
<「2020夏 これが、僕らの甲子園。」特集ラインナップ>
#1 三重県・白山高等学校「母から教わった全力プレーで恩返し」
亡き母、そして育ててくれた祖父母への恩返しは「甲子園出場」だったのだが…。
#2 広島県・広陵高等学校「超名門校の3年生『決断』と『奇跡』」
実力を重視し自身のメンバー入りを拒否し応援団長に。引退試合で奇跡が起きる。
#3 群馬県・健大高崎高等学校「甲子園は夢舞台から…6年間の集大成」
中学時代からバッテリーを組んできたエースと主将。その6年間の集大成が甲子園交流試合。たった1試合の夢舞台に込められた特別な思いとは!?
#4 神奈川県・立花学園高等学校「独創的な練習『最後の夏』への挑戦」
独創的な練習で甲子園を目指してきたチームが、集大成に何を行うのか。
#5 神奈川県・星槎国際高等学校湘南 「野球人生最後の夏『笑える日が来るまで…』」
「両親への恩返し」のため高校で野球を引退。卒業後は就職するため、「野球人生最後の夏に甲子園」と夢を描いていたが…。部のスローガンは「必笑」。最後の夏を笑って終われるか?
<ナレーター紹介>
ナレーション:才川陽妃(さいかわ・はるひ/立命館大学1年)さん
2019年全国高校放送コンテストで朗読部門最優秀賞。今年の「春のセンバツ甲子園」の開会式で司会進行を務める予定だった。
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『S-PARK』球児ドキュメンタリーのナレーターは女子学生!甲子園失うも…語りで応援