<コラム>『ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~』第2話

おい!“ラジハ”がこんなに“月9”だったなんて聞いてないぞ!!

“月9”、つまりそれはもちろん、“ラブ”ってことなんだけど、“ラジハ”の“ラブ”はなんつーか、言ってしまえば、添え物、もっと悪く言えば、“ままごと”だと思ってたのね(悪く言いすぎ)。いや、だけど、その軽やかさ、不器用さが、逆に月9としては微笑ましいし、それこそが“ラジハ”だよね…なーんて思ってたわけ。だもんで、その辺の“ラブ事情”について、かつての“月9”を見るように、“キュン”だの“切ない”だの、やんや言うのって野暮だし、本筋は医療モノなわけだから、そこは静かに見守っとこ、サイドストーリーとして、箸休め的な、味変(あじへん)的な(言い方!)位置づけで見とこ…って思ってたわけ。

とは言ってもね、やっぱりね、五十嵐(窪田正孝)と甘春杏ちゃん(本田翼)のラブ模様はこのドラマにとっては必要不可欠で、病院内ではプロフェッショナルだけど、プライベートの、こと恋愛については不器用…っていう、そのアンバランスさ、それこそが今作の世界観を構築してる一部だよね…、ってのは思ってはいたし、その関係にほんのり顔を覗かせる広瀬(広瀬アリス)もね、いい味出してる…っていう認識は持ってたんだ…けれど…。

うん…、だけど…、とは言ってもさ、さすがにさ、そこにさ、辻村先生(鈴木伸之)が入ってくんのはさ、ちょっといらない、どうせ主人公カップルに割って入ってきても、絶対無理なんだからさ(ひどい)、そこはいらないんじゃねぇか、てか、鈴木伸之さん演じる辻村先生が本気出したら、あの容姿端麗がマジすぎて、ちょっと、その辺の恋愛ファンタジーに、生々しさが加わっちゃって、世界観をぶち壊しかねないんじゃないか?…うん、だから、そこ、いる?って、その“いる?”ってくらいが、ちょうどいい、その辺にしとけ、それこそが辻村先生のアイデンティティだ!!って思ってたんだよね…。

そいだら…、どうよ…、今回の、辻村先生…!あいつ…、あいつさ…、やりおるな!!!物語の中盤まで、デート行くだのなんだのの田中福男(八嶋智人)との微笑ましいやりとりまでは、とてつもなく不器用な男アピールしてたじゃん。あんな長身で、小顔で、爽やか…かつ医者という、360度、どっからどう切り取っても無双イケメン!のクセして、こと恋愛においては不器用な男…アピールしてたじゃん。だから視聴者は…、って言うか俺は、それを見て「ふん!そんな無双イケメンでも、恋に不器用なのか…。お・子・ちゃ・ま…。」なーんつって、上から目線で、無理に上から目線になることで、どう切り取っても360度非イケメンの俺をなだめることができた…。この世の不公平を嘆かなくて済んだ…。はずだったのにさ…。なに、あれ、中盤以降の、あれ、なに!?

まず、そもそも、美術館に誘う…ってのが上級者よね。だって杏ちゃんが美術に造詣深いって、そういう描写あった?なのに、美術館に誘う辻村…。とにかく、美術館で、俺と二人で、静かに歩く…それだけでその場を保つことができる…と確信している、イケメン自意識!!だけど、映画とか、ディナーとかじゃない、“何時”とか、仕事上、時間を最初から決めちゃわない気遣い!!でもって21時まで開いてる美術館を探してくる、デートスポットサーチ能力!!…そして何より、高級ラウンジや最上階バー的なのじゃない、“下心”が、全く、見えない…という、プラトニックジェントルメン!!!(どういうこと)く、く、くっそー!!な、なんちゅう上級者!!あ、あいつ、やりおるな!!

で、でよ。そのデートを誘う、あの瞬間が素晴らしかったもんね。直前、患者さんの人生に関わるとてつもなく重たい話、それどころじゃないだろ感が半端ないエレベーターの密室で、今言うんかい!!タイミングおかしいやろ!!と一回僕らにツッコませてからの一言…。「そんな気分になれない時こそ、息抜きが必要だと思うけどな…☆」で、まずそのマイナスな空気を一蹴。すぐさま、「2時間でいい!2時間でいいから、甘春の時間を俺にくれないか!!」で一気にオトす!!なんちゅう冷静と情熱!!俺が杏ちゃんだったら、もう辻村先生の唇に吸い寄せられてる!!密室だしね!!!(興奮しすぎ)

でもって、その後、そんなこんな様々なやんやが繰り広げられ(雑)、散々その件で興奮してたはずなのに、結局辻村先生の話はそっちのけになってた、記憶からスルーしてた…。「やっべ、“デート”の件、すっかり忘れてた!!」って、杏ちゃんと同じ気持ちになった大ラス…。閉館後の美術館前、急いでやってくる杏ちゃんに対し、「あー、ホッとした!!」とか言っちゃう、第一声の少年ぽさ!で和ませたと思ったら、「“キミ”を待ってる間に確信した」…突然の“キミ”呼び!!!からの「好きだ甘春!!」・・・・ドキューーーーーン!!!…月9か!!!このドラマ、月9か!!!…うん、そうだった、忘れてた、月9だった♡…うん、つまりはね、辻村先生が本気出しても生々しさなんて一切出ないし、その造形がもう素晴らしいし、何より、恋愛に本気出しても、“ラジハ”の世界観、壊れなかったの!!!なんて素晴らしいの!!

っというわけで、今回15分拡大スペシャルで、その15分にも満たなかったであろう、辻村先生のラブ模様に対して、結局案の定、ここまで字数を割いてしまいましたが、今回のお話、それ以外の部分…、いや、“ラジハ”本筋の部分、とっても、とっても素晴らしかった!!よね!!(説得力なし)

今回の、てんかんの治療を受けている12歳の小学生というエピソード。これを“ラジハ”の世界観で描くのはかなり重たい…大丈夫かな?と心配したけれど、実に見事な展開でした。まず放射線技師ができることと、様々な治療アプローチがあることを具体的に物語に落とし込んでいて、とても勉強になった…とか簡単に片づけられる話じゃないんですが、治療法もあり手術もできるなんて知りませんでした…。その描き方がとにかく素晴らしくって、放射線技師はあくまでも病気の原因を探ったり、手術のためのサポートをしたりっていう、そこまでで、彼らは手術して完治させるという画的にも派手なハッピーエンディングは決して迎えない…。なのに、それらをドラマチックに、だけど煽(あお)り過ぎず真摯に、視聴者を納得させる形で決着させる…って、なかなかできないですよね。

で、改めて強く感じたのが、五十嵐を演じる窪田正孝さんのすごさ。今回のエピソードの決着は、劇的な治療法とか、本当の病原は違うところにあって…とかではなく、相手が子供とは言え、この先の人生を後悔してもらいたくない!…という“説得”だったわけです。だけど、これ、医療ドラマとしてはかなり危険ですよね。だって、“説得”だけで物語が収まったら、“ラジハ”、いらないじゃないですか。だけど、窪田正孝さんが演じることによって、医者とか大人とか、そういう上からの目線ではない、誰に対しても自然で対等な目線になれる…それが、五十嵐…。だからこそ、あの、医療用語が極力排除された、“説得”でも、物語を決着させることができる…。そして、その対等な目線こそ、“ラジハ”の五十嵐なんだな…と。この感じ、窪田さんじゃないと出せない味ですよね…。あの、大人のようで子供で、だけど医師としての説得力も持っている…って、これ、ありそうでない、かなり画期的なキャラクターだったんだな…って今回改めて感じました。

あと、ただのワンポイントコメディ描写だと思ってた、広瀬=アカネ=チンパンジーを“グリマス”(笑っているように見えて実は怖がっている)に発展させる気の利かせ方とか、オープニングのナレーションが“川”で、ラストに“橋”へ繋げるとか、もう、ちょっと、うまくつなげ過ぎやろ!!って気はしなくもないけど、あのラストの橋の美しさ見せられちゃったら、ビューティフルエンド!って賞賛せざるを得ないよね…。で、尚かつ、それでいて、ちゃんと“月9”…になるんだからさ…(結局そこ)。いや、ちょっと、ラジハⅡ、見くびってたわ!!