今回はいつにも増してなんと重たい話…。
前々回の予告からチョイ見せはされてて、覚悟はしていた吐血した瀬野さん(田中圭)の行方と、今回のメインストーリー、育児ノイローゼからオーバードーズ=薬の多量摂取になってしまった若月さん(徳永えり)のお話…って、とんでもない掛け合わせ。
その若月さんがまた、演じた徳永えりさんのおかげでもうオーバードーズの患者さんにしか見えない生々しさだし、それに加えて、娘が来るのを病室でウッキウキ楽しみに待ってて、こっそりお化粧までしてる…っていう画面上ではハッピー感しか漂ってないはずなのに、スマホに映る“PM4:17”の文字(娘が来るのは夕方5時30分)とともに、効果音“ティーーーン(不穏)”でCMいく演出って、寿命縮むよね。
その前のシーンで、薬がどうしても止められず苦しみ、だけど意を決してゴミ箱に一旦薬を捨てた…はずなのに、それでも薬を握りしめトイレへ駆け込み、薬をむさぼってしまいそうになる…その瞬間、娘が明日会いに来る…って連絡が入り思いとどまり、薬を全部流し、娘のために薬止める!!って、確実な決心を見せる…んだけど、スマホの時間見ただけで“ティーーーン(不穏)”だもんね。揺さぶりまくりだし、嫌な予感すぎるよね。そして案の定、CM明けに起こってしまう悲劇…。辛すぎる…。
だけど、そこはさすがの『アンサング・シンデレラ』ですよ。ただただ悲劇を煽ってドラマチックにしたってわけじゃなくて、なぜオーバードーズになってしまったのか、丁寧な回想とともに描き、そこから離婚してから会えていない…だけど会いたい“愛娘のため”という、こう言っちゃなんだけど、何でも解決できちゃう最強の“武器”をもってしても、それでも抜け出せないっていう困難も示しながら、その前のシーンで薬をトイレへ全部流してしまった描写は、愛娘のためにやっと抜け出せるか?っとちょっと安心させといて、実はこれまで薬が手元にあったことである意味安心出来ていた…精神が落ち着いていたのに、それを完全に無くしてしまったことで、隣の病室にまで薬を求めてしまう…。
さらにはその無様な姿を娘に目撃され、拒絶され、調剤室に侵入して葵(石原さとみ)にハサミを突き立ててしまうまでに至る…っていう、どんな手段でもなかなか抜け出せないオーバードーズの恐ろしさと悲劇の連鎖、周囲の苦しみも、これでもかと、とことん丁寧に描写していく…っていう。いつだってこのドラマの“らしさ”…丁寧っぷり、発揮するよね…。
で、その娘に目撃され、悲しくて辛すぎる若月さんが放った一言「やっぱ治んないわ…」(絶望)が、ドラマ終了約13分前ってんだからね。こっからどうやって解決するのか?もしやこっから複数話使って解決する?…てか解決無理じゃない?って思ってたら、そこへ瀬野の余命3ヵ月問題が絡んでくるんですよね。ここへ来てまさか、余命3ヵ月ってもの超衝撃的だったんだけど、それにすらちゃんと意味付けする展開へと持ってくのがすごいよね。
瀬野は余命3ヵ月で死んでしまうけど、若月さんは治る病気じゃないですか、だから必死に治療しましょうよっていう、言葉に重みのある命の説法で解決へ導く…とみせかけて、そこへ、さらに、主人公・葵がいる意味も出してくる…葵のいつもの患者さんとの向き合い方を引き合いに出して、いまこの時間もあなたのことを考えていたんですよ、頭がいっぱいだったんですよ、だからそんな薬剤師と一緒だったら、治療に向き合えると思いませんか?っていう、これまでずっと僕ら視聴者が見てきたこと、そしてそれは瀬野が一番知っている“葵らしさ”を提示して、若月さんを説得し、解決へと導く…。って、よく残りの10分足らずで無理なく解決できたよね。すごすぎ。
しかもそれだけでは終わってなくって、そこから瀬野に転じて、瀬野も治療はせず死ぬギリギリまで働きたいとか言ってないで、治療の道をもっと探って欲しい、せめて葵にその方法を探させて欲しいって、そこまで持っていく。それにすらずっと描いてきた“葵らしさ”で、瀬野が決心する展開へ導く…ってさ…なんちゅう技…。
で、やっぱり極め付き、このドラマたる所以は、散々重たい展開だったはずなのに、最後はやっぱりホッコリできて、安心感しかないエンドロールによって幸福感で満たされることですよ。その前の辛さ、全部吹っ飛んじゃったもんね…。
…っとか言っときながら、全然安心できない!!エンドロール後の真のラストですよ!ここへ来てのまさかの七尾副部長(池田鉄洋)!なんだかよくはわかんないけど、やたらと“治験”関連で企んでるに違いなかったあの雰囲気が、前回もやたらと瀬野の家族のことで詰め寄ってて何なの!?七尾副部長何なの!?だったあの雰囲気が、まさかラスト、瀬野の治験へと繋げてくるとはね!あの不敵な笑みは一体どういう意味!?
実際、治験のこと、何が何だかでイマイチわかってないし、どうなっていくのかまったく想像もできてないんだけど、わからないからこそ、ワクワク感が止まりません。余命3ヵ月、瀬野はどう仲間たちと充実した毎日を送るのか…みたいな、そんな人間ドラマ的展開だけで終わらせるんじゃなくって、治験を絡めたメディカルサスペンス要素も加わっていくんですよね?そうですよね!?俄然楽しみ!!
最後に話逸れますが、今回、何故か心にやたら沁みる名言を娘娘亭の辰川さん(迫田孝也)が残してたのでここに記しておきたいと思います。
おかゆを食べる葵と瀬野の2人に一言…
「おかゆを食べる2人ってのは、相当深い仲!」
おかゆを食べる2人…、葵と瀬野…。なんだか想像すると深いよね…。え?僕があらぬ変な妄想しちゃってるだけ?
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)