9月29日(火)に都内で行われた、映画「罪の声」の完成報告会に、主演の小栗旬と星野源、土井裕泰(どい・のぶひろ)監督と、原作者の塩田武士(しおた・たけし)氏が登壇した。

未解決のまま時効となった実際の事件をモチーフとしたフィクションが原作の本作。事件の真相と、謎の犯人グループを追う主人公の新聞記者・阿久津英士を小栗が、幼少期の自分の“声”が事件に使われていたことを知ってしまう、もう1人の主人公・曽根俊也を星野が演じている。

今回が映画初共演となる小栗と星野。

共演前から星野の楽曲を聴いていたという小栗は、「普通に“ファン”みたいな感じでした。共演前から何度か会う機会があったんですが、その時も本当にファン心理というか、会うことを喜ぶばかりで」と振り返り、「実際に共演して、いろんな時間を過ごして、今では一緒に食事に行くこともあります。非常にありがたい出会いだったなと」とはにかんだ。

そして星野は「共通の友人がいるので飲み会などでは一緒になることもあって。みんなでワイワイする場で会うばかりで、しらふで会うことはあまりなく、“ワイワイ状態”の小栗くんしか知らなかったんです」と語り、笑いを誘った。

しかしすぐさま「でも現場では、役にまっすぐ丁寧で」とフォローを入れ、「現場にもそっといる感じの人で、僕も同じタイプなので、待ち時間はひたすら2人でボソボソと話をしていました。その会話が好きで、小栗くんのこと、一気に好きになりました」とラブコールを。

小栗も「僕もとっても好きになりました」と笑顔で応え、コンビネーションの良さを見せつけた。

土井監督は、ふたりの撮影時のエピソードとして「星野くんの娘役の子が、彼にすごく懐いていたんですが、翌日小栗さんが現場に来たら、急に目がハートになっていました(笑)」と暴露。星野も「そうなんです!僕には“普通に”懐いていたのに…」と、寂しげにポツリ。

“事件”の証言者として、数多くの大物俳優が登場することも、本作の特徴の一つ。ワンシーンのみを演じて半日で帰っていくこともしばしばだったとか。

イギリス・ヨークでの、宇崎竜童との共演を振り返る小栗は「撮影したとき、僕は36歳で宇崎さんは72歳。倍の人生を生きている先輩を見て、同じ歳になるまでに、自分の人生をもう1周分経験できるんだなと思ったら勇気が湧いてきた」と、当時の心境を感慨深げに語った。

撮影を見学したという塩田氏は、そこで見た宇野祥平の役作りを「見た瞬間に聡一郎(宇野の役柄)だとわかりました。壮絶な人生を送ってきたことが伝わってくる」と絶賛。

さらに、同じシーンを何度も、カメラの角度を変えて撮ることにビックリしたと話し、「宇野さんが泣くシーンで鼻水が出たとき、土井監督が『鼻出すぎ!』って…どうやって(鼻水)減らすの?と思っていたら、次に撮るときは減っているんですよ!俳優さんはそういう器官も発達しているのかと(笑)」と、独特な目線で驚きを明かした。

「それは『鼻水を減らせ』という要求ではなく、僕の心の声が出ちゃっただけで…」と弁解する土井監督は、“俳優のすごいところ”について、負けじとエピソードトークを展開。

「岡山県の橋のたもとで小栗くんと星野くんが2人で会話する、セリフの多いシーンがあったんです。撮るには撮ったけど天気が悪くて、翌日撮り直しになったことがあって。スケジュールもタイトだったのに2人とも応えてくれて」と、2人の対応力の高さを称えた。

すると、「すごく好きなシーンなので、むしろもう一回できるのが嬉しかった」と、小栗。さらに星野も「前日にリハーサルできた、みたいな感じでね」と笑顔を見せ、監督は「俳優さんってちょっと変態なところがあるんですよ」と塩田氏に説明していた。

特に印象に残っている共演者を聞かれ、「ネタバレになるので詳しくは言えないですが、『うわー!すごいなこのシーン!』って最初に思ったのは、高田聖子さんの演技」と小栗。

星野が「橋本じゅんさんは物語のキーマンなんですが、めちゃくちゃおっちょこちょいで迂闊(うかつ)なキャラなので、そこを楽しみに見てもらえると」と続けると、話題に上った2人が揃って『劇団☆新感線』メンバーであることに気づいた小栗が「やっぱり『劇団☆新感線』はすごいですね」と唸る一幕も。

最後に「映画の公開を待つファンへ送るメッセージとして、“旬の声”“源の声”を聞かせてください!」と司会がリクエスト。

星野は「“源の声”って、居酒屋みたいですね」と冗談を飛ばしつつ、「今を生きる僕たちに、ものすごく刺さるメッセージが込められています。現実にもいろんな事件や報道がありますよね、この映画で描かれている“劇場型犯罪”や“愉快犯”など…。ですが、愉快な犯罪なんてないんだっていうことを強く感じました。事件や事故が起こった時、いろんな情報の外側に、こんなにたくさんの“声”があるってことを、日常で意識できる作品だと思います」と真剣な眼差しで語った。

そして小栗が「“旬の声”です(笑)。観終わった後に、“考える時間”を作れるような映画だと思います。様々なメッセージが込められている中で、どれをキャッチするかは皆さん次第ですが、『あれってなんだったんだろう?』って、少し考える時間を作ってもらって、それもひっくるめて映画を楽しんでいただけたらと。また皆さんに映画館で映画を観てもらえることを嬉しく思います。ぜひ、劇場でご覧ください」と呼びかけ、イベントは幕を閉じた。