毎週木曜22時よりフジテレビ系で放送中の木曜劇場『推しの王子様』。
本作は、乙女ゲーム制作会社社長の日高泉美(比嘉愛未)が、自分の理想通りに作り上げた推しキャラ“ケント様”にそっくりな五十嵐航(渡邊圭祐)を理想の男性に育てるために奮闘する“逆マイ・フェア・レディ”な日々を描くロマンティック・コメディ。
航は、容姿こそケント様そっくりだが、不作法で無教養で無気力、人を好きになったこともない“残念すぎる王子様”だった。そんな航が泉美と出会ったことによって、仕事はもちろん言葉遣いからマナーに知識、さらには生きがいや恋の仕方まで、ありとあらゆることを教えられることに。
ボサボサ頭にヨレヨレの服装から、髪型を変えて高級スーツを身にまとい激変した航の姿に、「まさに二次元から出てきたみたい」「ビジュアル最高」など、多くの声が寄せられ話題を呼んでいる。
中身はまだまだポンコツながら、人間的に成長しはじめた航を演じている渡邊にインタビュー。航の魅力、演技プラン、自身が思う“王子様像”を聞いた。
<渡邊圭祐インタビュー>
その日をなんとなく生きている航に、大学時代の自分は近い感覚
──“残念すぎる王子様”という五十嵐航を演じるにあたり、考えたことは?
航は、過去にいろいろなことがあって東京に出てきた、すべてに失望している人間です。生きる気力もないし、なんのために生きているのかもわからず、世の中に希望を見いだせないでいる。でも、体力だけはあるから、とりあえず肉体労働をしてお金を稼ぎ、その日をなんとか生きている。そんな現代の若者をわかりやすく体現したのが航だと思います。
その航が、泉美と出会ったことで少しずつ変化していきますが、これから過去が明らかになっていくなかで、彼の背景がわかると思います。
──世の中に希望を見いだせないでいる航の気持ちは理解できますか?
大学時代の自分は、近い感覚を持っていたかなと思います。将来に対するビジョンがなく、なんとなく毎日が楽しければいいという感じで生きていました。学校に行かないで、友達と昼間からお酒を飲んでみたり、その日その日で楽しめることを探すような生活をしていましたね。
その日をなんとなく生きるという意味では共通していますが、航と違うのは、僕は環境に恵まれていたけど、航は恵まれていなかったというところ。その違いは大きいと思います。
ちょっと抜けた航の個性が、人間として興味をくすぐられる
──「ソーセージ(sausage)」を「サウサゲ」と読んだり、「気に留める」を「木に止める」と勘違いするシーンは、航のキャラを絶妙に表していますね。
ああいう間違いは、面白いですよね。普通、読めなかったら口に出さないじゃないですか。でも、口に出してしまう航は、“いいね!”と思う(笑)。その愚直さが泉美にも響いたのだと思います。
それがなかったら、かわいげのない無気力な男になってしまうと思います。ちょっと抜けた個性は、人間として興味をくすぐられるので必要な要素だし、僕自身も演じていて楽しいです。
──はじめはポンコツぶりを発揮していた航が、だんだん変化してきました。その変化をどのようにお芝居で表現していますか?
泉美に、まず外見を変えてもらったので、それが自分の体にしっくりくるように表現しています。
そして、内面の成長が外見に現れると思うので、回を重ねるごとに目に光が宿って、生きる希望や活力あふれる姿へと変わっていけたらいいなと思っています。
──胸キュンシーンにも注目が集まっていますね。
泉美と接するときにだけ見せる距離感みたいなものは、意識しているつもりです。そのときに、泉美に自分を重ね合わせて見ていただけたら、そこが僕のキュンパートではないかと思います。
ただ、皆さんが期待してくださっているより多くないかも。胸キュンを求めている方は、ぜひディーン・フジオカさんにご期待ください(笑)。
“推し”がいることで人生に活力や原動力になるのは素敵なこと
──泉美のような“推し活女子”はどう思いますか?
“推し事”(アイドルなど自分の推しを応援する活動)というものがはやっているようですが、僕はそういうものとは無縁なタイプの人間で…。あ、かつて指原莉乃さんを推していたという過去はあるんですけどね(笑)。
推しがいることで人生の活力になっていたり、推し事が原動力となって仕事を頑張ることができたり、推しによって自分に対する栄養分を吸収できるのは、すごく素敵なことだと思います。
広く考えれば、結婚もそうだと思うんです。旦那様や奥様が推しで。だから、推しがいる生活って、本当に素敵なんだろうと思います。思えば、僕も指原さんを推していたとき、幸せでした(笑)。
──ご自身を推してくれるファンの方に対してはどう思いますか?
本当にありがたいです。僕の所属事務所は、新人や若手俳優が集まって歌って踊るイベントを積極的に開催しているのですが、そこに集まってくださるファンの方々のエネルギーや、毎日メッセージをくださる方の文面から伝わる愛情が、僕らの原動力になっています。
毎回、ドラマが放送されるごとに感想を届けてくださったり、お声をいただけると、やってよかったな、愛されるキャラクターが作れてよかったなと感じます。自分のやってきたことを認めてもらえることはすごくうれしいですし、ありがたいです。
僕らは一生、自分を推してくださる方を探してお仕事をするんだと思うんです。だから、すごく大切な存在です。
教育されることには抵抗が。ファッションを直されたら反抗心が出てしまうかも
──航は、泉美からさまざまな教育を受けますが、渡邊さんだったらどう思いますか?
僕自身は、教育されることには抵抗がありますね(笑)。古着屋さんで働いていたこともあって、好きなファッションがはっきりしているので、それを直されたりすると反抗心が出てしまうかも。
ただ、僕が知らなくて、「教えてください」と言えることなら大アリです。「英語を教えてください」とか「ゲームの作り方を教えてください」「イラストの描き方を教えてください」など、年上の方にご教授いただくのは、もちろんOKです。
──では、渡邊さんがイメージする“王子様像”を教えてください。
一番想像しやすいのは、ディズニーですね。ケント様は、ゲームの世界の王子様なので、ファンタジーなんです。そういう世界観の王子様というと、白い馬に乗って、長めの丈のジャケットを着て、7:3分けの前髪を上げて、後ろに流している感じ。
そして、社交ダンスが得意で、動物を仕留める術を持っている、みたいな(笑)。それが僕の中の王子様像です。
──渡邊さんの中に、王子様要素はありますか?
残念なことに、王子様はいらっしゃらないですね(笑)。授からなかったです。劇中、キザなセリフがかなり出てきますが、撮影でも恥ずかしいなと思いながら演じているので、プライベートでなんて、ボケ以外では言えないセリフだなと思っています。
「初めてだね、2人で飲む朝のコーヒー」なんて言わなくないですか(笑)?「コーヒー入れたよ」でいいですよね。自分の中にはない要素なので、そういうことを言っている人がいたら教えてほしいです。視聴者のみなさんから、ぜひ聞きたいですね。
──今後、王子様要素を出していったら、「渡邊王子」でバズるかも?
そうですね。僕、自慢じゃないですけど、高校生の時に、他の学校の女子たちから「王子」って呼ばれていたんです(笑)。僕自身は、卒業してから聞いたのですが。
本当に自慢じゃないですよ(笑)。ちゃんと、『スタッフ「…(笑)」』とか、ここにいる皆さんが笑っていることが分かるように文字にしてくださいね。それじゃないと、本気で自慢しているみたいに思われちゃいますから。恥ずかしい過去と思ってしまうくらい、自分の中身には王子様要素がないので!
──最後に、今後のドラマの見どころをお願いします。
第3話にして、航はわりと成長を遂げています。ちょっと近寄りがたい雰囲気から、割とまともな人になってきているので、これからもっと内面が磨かれて人間力も増してくると思います。1人の男の成長する姿を温かい目で見ていただけたらうれしいです。
そして、そんな航を見て、泉美が自分の初心を思い出したり、僕がいることで泉美と光井さん(ディーン)の関係に動きがあったりと、後半に向けてグッと物語が動いていくので、ぜひ注目してください。
そして、自分の“推し”と重ね合わせて見ていただくと、より楽しめるかなと思います。笑いあり、ラブあり、コメディありの作品です。ぜひ楽しんでください。
撮影:今井裕治