『監察医 朝顔』(第2シーズン)第2話完全版
野毛山署管内のひと気のない空き地で、男子中学生の遺体が発見される。
休日だった朝顔(上野樹里)は、興雲大学法医学教室からの電話で目を覚ます。朝顔が1階へ降りると、すでに平(時任三郎)が出かける支度を整えていた。ただちに現場に向かう平。
被害者は、14歳の矢野諒(池田優斗)で、死亡推定時刻は午前5時から6時ころ。午前7時ころ、散歩中だった近隣住民が発見し通報したという。遺体のみぞおち付近には、大きな皮下出血があった。また、諒は野球のユニフォーム姿で、遺体の横にはグローブがあり、ボールが金網の上部に挟まっていた。
桑原(風間俊介)は、朝顔に代わって娘のつぐみ(加藤柚凪)の面倒を見ることになった。しかし、朝顔と遊ぶ約束をしていたつぐみはご機嫌斜め。そこで桑原は、つぐみが行きたがっていた水族館に行こうと誘った。するとつぐみは機嫌を直し…。
朝顔は、藤堂(板尾創路)らとともに諒の解剖を行った。遺体は、みぞおち付近の内出血以外、目立った外傷はなかった。解剖後のミーティングで、藤堂は、諒がみぞおち付近に強い衝撃を受けて心臓震盪を起こし、心停止に至った可能性を検視官の丸屋(杉本哲太)や、強行犯係長の山倉(戸次重幸)らに伝えた。
捜査の方向性を決めるために、殴られたかどうかだけでも断定してほしい、と強く主張する丸屋と、この段階では難しいとする朝顔たちとの議論がヒートアップする中、思わぬ知らせが入る。連絡を受けて駆けつけようとしていた諒の父親・浩史(西山悟)が、階段から落ちて意識不明状態になってしまったというのだ。
諒には母親がいなかったため、身元の確認には祖母の咲江(柳谷ユカ)と、諒の双子の兄・一馬が立ち会った。諒の遺体を見るなり泣き崩れる咲江。しかし一馬は、遺体安置所に入ろうとはしなかった。
森本(森本慎太郎)ら野毛山署強行犯係の面々は、諒の関係者を当たっていた。その中で浮上したのは、野球チームの監督を務める三輪(金ちゃん)と、父親の浩史だった。
三輪は、諒が亡くなった時刻、ひとりで寝ていたといい、アリバイの確認ができなかった。また三輪は、日ごろから厳しい指導をしており、特に諒にはきつく当たっていたらしい。
一方、浩史は、咲江から朝7時過ぎに帰宅したという証言を得ていたが、勤めていた配送会社を深夜1時には退社していた。さらに、浩史は高校野球経験者だったが、在籍中に部内で金属バットによるリンチ事件が起き、県大会出場を辞退した過去もあった。
山倉からその報告を受けた朝顔は、遺体が一馬である可能性はないか、と問いかけた。諒と一馬は似ていない、という茶子(山口智子)の言葉がひっかかっていたのだ。だが、ふたりは一卵性双生児であるため、DNA型は同じ。指紋や瞳の光彩、虫歯の有無で判別することはできるが、ふたりとも虫歯はなく、生前の指紋や光彩のデータもないことなどから、医学的に証明することは困難だった。
そんな折、事情聴取を受けていた三輪は、保護者と不倫しており、死亡推定時刻にその相手と一緒にいたことを告白する。
一方、平は、森本とともに矢野家を訪れ、改めて咲江から話を聞いた。咲江によれば、浩史が帰宅したのは朝7時で間違いないという。また一馬は、誰にも会いたくないと言って自室に閉じ籠っているらしい。「一馬だけでも生きてくれているだけで、今はもう…」と涙ぐむ咲江。その際、平は、諒と一馬が描いた絵が居間の壁に貼ってあることに気づく。それは事故現場となった空き地の絵で、ほとんど同じ構図だった。
その日の夕方、事態は思わぬ方向に進む。野毛山署にやってきた一馬が、自分が諒を殺した、と告白したのだ。一馬によれば、諒が金網にひっかかったボールを取ろうとして上った際に、ふざけて金網を揺すったのだという。その拍子に落下した諒は、立てかけてあった金属バットで腹部を強打したらしい。その証言を裏付けるように、一馬が持ってきた金属バットと諒の腹部の傷は一致していた。
諒の掌にあった結節がずっと気になっていた朝顔は、彼の手についていた土に混じって塩化ビニールが検出されたとの報告を受ける。朝顔は、高橋(中尾明慶)とともにもう一度現場に向かった。そこで朝顔は、平とともに現場にいた森本にも協力を求めて、一馬の証言をもとに、ふたりの行動を再現してみる。
再現実験で、ある真相を知った朝顔と平は、もう一度、一馬から話を聞く。そこで、「君は一馬くんじゃなくて、諒くんだよね?」と切り出す朝顔。実は、諒と一馬が書いた絵には、ひとつだけ大きな違いがあった。
諒の書いた絵には、金網の上に電線が描かれていたのだ。そしてその電線からは、遺体と同じ指紋が検出されていた。つまり、あのとき一馬は、ボールを取ろうとした際に諒に金網を揺さぶられてとっさに手を伸ばし、電線を掴んでしまい感電したというのが朝顔の推測だった。亡くなったのは電線があることを知らなかった人物――一馬だったのだ。
諒は、嘘をついていたことを泣きながら告白した。父親が試合を見に来ると知った一馬は、ホームランを打つところを見せてやれ、と諒に言ったのだという。諒が無理だと答えると、一馬は、入れ替わって代わりに自分がホームランを打ってやる、と言い出したらしい。そのため、ふたりがユニフォームを交換して練習しており、そこであの事故が起きた。
怖くなった諒は、バットを持って家に戻った。そこに、諒が死んだという知らせが入った。だが、諒は、死んだのが一馬ではなく諒で良かったと言われているかのようなチームメイトや咲江の言葉もあって、勘違いされていることを言い出せなくなったのだ。諒は、自分がバットを置いたせいで一馬が死んだと自責の念にかられていた。そこで朝顔は、一馬の死因が感電死だったことを伝える。
父親の浩史が意識を取り戻したことを知った諒は、朝顔や平に付き添われて入院先の病院へと向かった。涙を流し、父に謝る諒。浩史は、勤務先の配送会社には内緒で警備のアルバイトをしていたこともすでに明らかになっていた。
その夜、平に代わって再び岩手へ向かうつもりだった朝顔は、つぐみに母・里子(石田ひかり)のこと、震災のことをきちんと説明する。つぐみは、自分なりのそれを理解し、良い子で朝顔の帰りを待っていると約束した。
あくる日、つぐみたちに見送られて再び岩手を訪れた朝顔は、大勢の人がなくなったという宮里沼の調査を続けた。その夜、朝顔は、あまり食欲がないようすの祖父・浩之(柄本明)のことが気になっていた。
朝顔が風呂に入ろうとしたとき、浩之は、仏壇の引き出しから、『里子』と刺繍されたハンカチを取り出す。と、その中には1本の歯が包まれていた。
朝顔は、「来週また来るから」と浩之に告げ、帰路についた。
その夜、仕事を終えて帰宅した桑原は、思わぬ光景を目にする。朝顔が、風呂上がりの男性の頭を拭いてやっていたのだ。その男の正体は山倉で…。