7月2日(金)、ハートフル音楽劇「イキヌクキセキ~十年目の願い~」横浜公演の開幕直前取材会&公開ゲネプロが行われ、屋良朝幸、浜中文一、松本明子、松下優也、ヒデ(ペナルティ)、隅田美保、安寿ミラ、松平健が登壇した。
東日本大震災後から10年となる今年。モトイキシゲキ氏が、「ありがとう」の言葉をテーマに、震災後に現地での取材を通じて実際にあった出来事をもとに、音楽劇として台本を書き下ろした本作。
震災で両親を失い、東京でダンサーになる夢をかなえようと故郷を離れた鈴木大樹(屋良)は、度重なるつらい出来事に遭い、思い悩んだ末に岩手・大槌町にある「風の電話」を訪ね、同郷で「元気食堂」を営む木島晃(松平)と出会い、故郷に帰ることを決心する。
「元気食堂」でアルバイトをはじめる大樹。週末になると、高校時代の同級生たちや常連客が食堂に集まり、歌を歌ったり、話をするなど絆を深めていた。そして、震災によって叶わず幻となった高校の卒業式を10年目にして行う計画を立てるが、その事で思いもよらない真実が見えて来て…。
故郷を離れた人、地元に残った人、それぞれの10年間を“イキヌク”ことだけに懸命になり見えていなかった糸が、運命という力で 一つ一つ繋がり始める。
主演を務める屋良は「どうして自分が主役なんだろうなという思いがありました。自分は東北出身でも、親戚がいるわけでもなく、全く関わりがなくて」と、話を聞いた時の素直な心境を明かし、「自分がやるにあたって何ができるのかなと思ったんですけど、その答えは正直みつからなかった」と告白。
ただ舞台の前に浜中と被災地を初めて訪れたそうで、「僕はメディアの情報しか知らなかったので、現地でしか分からないこともたくさんあって。地元の人たちの話を聞いて、逆にこっちが元気をもらったんです」と打ち明け、「つらい思い出を抱えているにも関わらず、前に進んでいく。経験していることの強さを感じました」と被災地の方たちのパワーを実感したという。
また、「この作品を地元の方が見てくれた時にどう感じるのか、考えすぎていた部分があったのですが、それを直接、地元の方に聞いたら、『もちろんリアルと違うエンターテインメントになっているかもしれないけど、それでもこういうことがあったんだよ、ということを若い人たちに伝えてほしいんです』と言われて」とエピソードを披露。
続けて「その言葉がものすごく勇気になりました。エンターテインメントに関わる人間として、ステージの上からその思いを、観に来てくれた皆さんに伝えるのが役目。大変な思いをした人たちの気持ちを汲み取った上で、みんなに伝えていけることはしっかり伝えていきたい」と宣言。
劇中では、被災地の人たちが抱える思いを反映した物語に加え、ダンス、音楽、お笑いなどさまざまなエンターテインメントが詰まっていることについても触れ、「ショーで楽しませる部分とリアルさが融合した作品をお届けできたらと思います」と自信をのぞかせていた。
浜中は、大樹の高校時代の同級生で、震災で母を津波で亡くし、地元を離れ親戚のところで暮らすも、その後、母の夢をかなえるために故郷に戻ってくる吉澤元役を演じる。
浜中は「毎回、舞台に出るたびに、その舞台にご縁があったのはどういう意味かを考えるんですけど、今回の作品も考えていて。すごくいい意味で、いろんなことが心の中で広がって、いい経験をさせていただいたという思いです」としみじみと告白。
また、「この舞台で僕自身、何ができるわけではないですけど、この作品を通して、少しでも何かを伝えられたらという思いです。一生懸命やるしか僕にはできないので、頑張りたいです」と真摯な表情で意気込んでいた。
震災の津波で夫を亡くした元気食堂の常連客・大山聖子を演じる松本は、「お芝居、歌、ダンス、笑い、涙もある盛りだくさんの3時間の舞台。台本もアイデアを出し合って、ギリギリまでセリフを変えたり」とキャスト・スタッフの熱量を明かし、「涙の量が半端ないと思うので、劇場にはバスタオルをお持ちいただいて。思いっきり泣いて帰ってください」とアピール。
役場の観光課に勤める職員で、震災で多くの人々が塞ぎ込んでしまう中、誰よりも明るく、元気づけようと復興に尽くす田島慎吾を演じたヒデは「(震災を)風化させないことが大事。エンタメの要素を残しつつも、事実に基づいた脚色なので、それを後世、若い世代に知っていただきたいです」と力強い表情。
また、松平とのシーンでは、自身が仕掛けるふりに松平が毎回違うアドリブで返してくれると言い、「松平さんは的確なツッコミをしてくれる。ご本人は気付いていないけど、芸人向きです。あわよくば、一緒に『M-1』に出たい。ヒデちゃん、ケンちゃんで」と提案し、松平らキャスト陣の笑いを誘っていた。
大樹の高校時代の同級生の高橋亘役の松下は、「3.11から10年。変わってしまったものもあるけど、変わらないものもあるんだということを、このお芝居を通して表現できたら」とコメント。
同じく大樹の高校時代の同級生で、元学級委員の高田早百合に扮する隅田は、「1つ心配なことがあって。私45歳なんですけど、28歳くらいの役を演じています」と打ち明けて周囲を驚かせ、「なので、普段より高めの声で演じています」と役作りについて説明。屋良に「僕らも30代後半」とフォローされるも「ぶっちぎってるから」と苦笑いし、笑わせていた。
また、アジアンを解散して、本格的に女優として活動することについては、「これから人生のひまわりをいっぱい咲かせていきたい」と作品のキーアイテムであるひまわりにかけて誓っていた。
安寿は、「心の琴線に触れるような感動的なお芝居になっていると思います」と感慨深い表情。劇中では、震災の津波で流されて亡くなった吉澤元の母役として登場するが、「私は子供を持ったことがないのですが、息子役のぶんちゃん(浜中)が、日に日にかわいくなってきています。舞台稽古でも、ちょっと目をあわせてを手を振ってくれるんです」と満面の笑みで打ち明けていた。
元気食堂の店主で、物語りのキーパーソン的な木島晃役を演じる松平は「被災地の人に元気になってもらえるような、力強いメッセ―ジが詰まっています。被災地の方の思いがより伝わるように頑張りたい」と凛々しい表情で誓っていた。
作品の詳細は、公式サイトまで。