視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出すドキュメントバラエティ『7RULES(セブンルール)』。
12月15日(火)放送回では、「天才を育てるルールSP」2週目として、ディリーゴ英語教室代表・廣津留真理(ひろつる・まり)と、娘のバイオリニスト・廣津留すみれに密着。
ハーバード大学とジュリアード音楽院を首席で卒業したすみれと、そんな彼女を育て上げた母・真理。母と娘のルールを3つずつ紹介した前回に続き、今回は完結編として、子どもの才能を開花させる教育法の核心に迫る。廣津留親子が実践し、何より大切にするルールとは。
母のルール④:1つのタスクは5分で終わらせる
大分県にある母・真理の英語教室。ある日の授業では、入会わずか2ヵ月、小学校低学年中心の生徒たちが、中学2年生レベルの英語の本を音読していた。書き取りや文法の説明はせず、ひたすら音読させるのが彼女の教育法だ。
音読につまずいた生徒がいても、次の英文へと進む彼女。学習効率を上げるために、1つのタスクは5分で終わらせるというルールを実践しているという。
「『これができないと次いけない』と思うと、嫌になるのと同時に、退屈したりするじゃないですか。いつも言っているのは、『重い女になるな』。『ねぇねぇ宿題したの?』とか『いつ終わるの?』とか、面倒臭いじゃないですか、恋愛に例えたら。注意散漫になる前、飽きる1分前にやめるがモットー」と、その理由を明かす。
この指導法の原点は、娘・すみれを育てる時にあった。自宅に残っていた、すみれが作った夏休みの予定表を見ると、そこには「漢字20分」「算数20分」などの書き込みが。
すみれの小学4年生当時のノートからわかるのは、4年生レベルの算数に対し、英語は大学入試センターレベルのものに取り組んでいたということ。真理は「子どもの時にやっているから、やり方がわかったら勝手に自分で進む。“気がついたらハーバード”みたいな」と語った。
娘のルール④:集中力アップのために15分寝る
娘・すみれは、現在コロナの影響で、拠点のニューヨークから一時帰国中。ある日、バイオリンの演奏動画を撮影するため、軽井沢を訪れた。
自身の音楽活動について、「作曲家の言いたいことは楽譜に書いてあるので。『その作曲家が生きてた時代に、文字じゃなくて音楽でメッセージを伝えたかったんだな』とか、そういうストーリーを自分で研究、見つけ出すみたいな感じ」と話す彼女。
次の撮影のスタンバイを待つ間は、控室で仮眠を。集中したいときは15分寝るのが、彼女のルール。「寝すぎると疲れるし、足りないと寝た気にならないので」と、“15分”がちょうどいいのだという。
「ハーバード受験準備でも、頭の回転が今100%じゃないなっていう時は、仮眠するようにしていました」と振り返り、「最後の悪あがきをしても、結局本番で出せないと思うんですよ。そこまでで蓄積してきたものを最大限発揮できたほうが、結局効率はいいので。ちゃんと集中してスイッチが入るほうがいいと思います」と語った。
母のルール⑤:1年中ノースリーブ
新しい教材の打ち合わせのため、東京を訪れた母・真理。バブル最盛期に大分から上京し、都内の大学に通っていた彼女が担当編集者と打ち合わせをするときは、いつも六本木の店で飲みながら。
「娘の教材を作るとき、夜中に飲みながら作っていたので、その癖が抜け切らない。何か始める時は、アワアワを注いで…」と話し、「このあと、ギロッポンのホテルに帰ります」と、出張で宿泊する場所も六本木にこだわっているという。
そのこだわりは、バブルの名残から。「ギロッポンとか、ザギンでシースーとか言いたい」と笑う彼女の服装にも、バブルの名残がうかがえる。11月下旬の気温にも関わらず、ノースリーブを着用。1年中ノースリーブを着ることで、身体の線を常に意識した生活を送るようにもなっているという。
そんな彼女の自宅には、全部で100着以上のノースリーブが。「この30年間、ノースリーブの(服を売っている)店がガンガン潰れていくので、『トレンド変わったかな?』とか思うんですけど。自分が好きだから、年がら年中ノースリーブでいいんじゃないの、みたいな」と語った。
娘のルール⑤:その日着た服を日記に書く
すみれが15年にわたって毎日欠かさず、1日の終わりにおこなっているのが、日記をつけること。「仕事もですけど、次の日に何かを残したくないんですよ。紙に吐き出しておいて、次の日に持ち越さない。もう吐き出したから寝ていいんだって締めくくりにする」という。
日記にはさらに、その日着ていた服も記されている。「次同じ人に会った時、同じ服着たくないなっていうのがあって。『同じ服いつも着てる人』と思われるのが嫌なんですよ。たまに、『あれ、あの時何着てたかな』っていうのがあるので、“索引”的に戻れるようになっています」というのが、娘の服装に関するルール。
その言葉通り、密着中、彼女は一度も同じ服を見せることはなかった。
母のルール⑥:仕事で悩んだら温泉に浸かる
自身の運営する英語教室で真理が取りかかっていたのは、幼稚園児向けの新たな家庭学習用教材の作成。
娘を、公立高校から塾なしでハーバードに合格させた彼女は、コロナ禍において、家庭での学習が重要となる中、教師無しでも子どもが成長できる教材作りを模索している。
仕事の合間に彼女が向かったのは温泉。仕事の悩みがあるとき、温泉に行くのが彼女のルール。アイディアを思いつくのは、決まって温泉の中だという。
大分で開催されている、ハーバード生が講師として英語で授業をおこなうサマーキャンプも、「うちの子ハーバード入ったんだから、ハーバードから人を連れてきて、みんなに還元すればいいんだ」と、温泉で浮かんだアイディアなのだそう。
さらに、地元大分を拠点に活動を続けるのも、ここに理由がある。「温泉もあってご飯もおいしくて、広いスペースを利用できる。教育も、広いところのほうが、いろいろ思いついていいんじゃないかな」と話した。
娘のルール⑥:人と比べない
ある日、大分に帰省したすみれ。夏ぶりの帰省だといい、「肩肘張った感じでいる必要もないし、大分に帰ってくると一番落ち着く」と話す。
大分の自宅で18歳まで、家庭学習とバイオリンの練習に打ち込んできた。そういった環境が、才能を伸ばすきっかけになったという。
「周りにバイオリン弾いてる人ってほとんどいなかったので、何を目標にしたらいいかわからない。となると、過去に出た傑作のCDとかを聞きながら、『プロになるなら、このくらい上手くならないといけないんだな』と思って、そこに近づけるように必死に努力していました」と振り返る。
さらに勉強についても、「アメリカの大学を目指している人が周りにいなかったので、どれくらいできたら正解っていうのがわからないから、ひたすら高みを目指して頑張るしかないなと思っていた」と、彼女。
「人と比べないからこそ、走り続けられるのかなって思います」と話す根底には、母の教えがあった。
「選抜されるために勉強する。小さい頃からそうすると、上限があるじゃないですか。選抜する試験問題のために勉強するみたいな。そもそも満点がトップっていうのがダサすぎ。満点よりも上があるのでね」と、母・真理は言う。
「自分が教養として一生使えるものっていうのは、自分が好きになって、コツコツと20センチぐらいのハードルをだんだん飛び越えていって、好きになるから、日曜日の朝でも起きてやりたくなる」。それが母の教えだ。
母と娘のルール⑦:Just do it
親子で食卓を囲むある晩の話題は、すみれが拠点にしていたニューヨークのコロナ状況。ニューヨーク州は、アメリカの中でも特にコロナの感染者が多い地域。すみれが日本に戻り半年以上経つが、未だ渡米の目途は立っていない。
そんな時、母が口にした言葉は、「どうやって社会を良い方向に持っていくかを考えるというか、“やる”。本当に『Just do it』だよね」。
“何も考えずにやるだけ”という思いに至ったのは、すみれの誕生がきっかけだった。「生まれた瞬間に『かわいすぎる、なんだこれ』みたいになって。せっかく生まれたから、自分は大人として何ができるかなと思ったら、世界のあらゆる記号を読み解く方法を、ちっちゃいころから教えてあげようと思って」と、当時を振り返る。
そんな母の想いを受けて育ったすみれは、「自分のリミットって100%じゃないと思っていているので。バイオリンも100%やるけど、残りも0じゃなくて、勉強も100%。何か他にやらなきゃいけないことがあっても、とにかくやりたいことを100%の力で丁寧にやるっていうのが、『Just do it』」だと語った。
自分の限界に満足することなく、失敗を恐れずにやってみる。この言葉が2人のルールになった。
娘のために、200冊以上の教育書を読み、教材を手作りすることから始まった、母・真理の挑戦。娘・すみれがその才能を開花させ、大きく羽ばたいた今、かつて娘に注いできた情熱は、塾に通う子どもたちに向けられている。
「とりあえず手を上げる。それが『Just do it』。『これやる人』って聞かれた時に『ハイ』っていうのが、『Just do it』で。その先にどんなゴールがあって、どんな失敗があるか、わからないですよ。半分失敗するけど、失敗も糧にできるから。最初から難しいことをしたりして、リスクの取れる子どもになってほしいです」と、真理は思いを明らかに。
子どもの可能性を信じてきた母と、その情熱を一身に受けて育った娘。天才を育ててきたのは「失敗を恐れずとにかく行動する力」。母が大切にするその思いは、確実に娘へと受け継がれている。
※記事内、敬称略。
次回、12月23日(火)の『7RULES(セブンルール)』は、「スノーピーク」3代目社長・山井梨沙に密着。父の跡を継ぎ、空前のキャンプブームを牽引する33歳の若きリーダーの7つのルールとは。