アリス、怖ェ~!

アリス、かわいすぎる!

アリス…(涙)

な、1時間15分!!

ついつい今作のヒロイン、澪(みお)を演じる広瀬アリスさんを呼び捨てにして悶えてしまいましたが、これでも調子に乗ってアリスの前に“俺の”って付けてたの、ふと我に返り、バックスペース押した…自制した結果なのでどうかお許しください。

っとそんなことどうでもいいんですが、そんぐらい初回から没頭しちゃいましたよ…。

事前情報にあった“モンスター妻(=恐妻)”で、“結婚生活こんなはずじゃなかった!”と夫が悩み、挙句の果て“タイムスリップで妻が入れ替わる”…っという、あらすじから醸してた、ちょっと…怪しい…香り…。

それはつまり、恐妻つったって広瀬アリスじゃん?贅沢言うんじゃないよ!っていう“非共感”、そんなん言うならなんで結婚した!っていう“非同情”、でもってタイムスリップしちゃうのかよ!っていう“非現実”…それぞれ、どれか少しでも踏み外すと、視聴者全員置いてきぼりになっちゃう、不安な要素が無きにしも非ず…だったわけです。だけど、澪はちゃんと怖いし、迫力もあるし、夫が逃げ出したくなる気持ちわかる…なんだけど、やっぱりかわいいし、弱いし、守ってあげたくもなる…そんな難しいバランス感覚が必要なヒロインを、広瀬アリスさんが見事に演じ、事前に感じていた不安要素を全て、“魅力”へと変えてしまったのです!ありがとう俺のアリス!!(言っちゃった)

特に中盤で描かれる“なんで結婚したん?”の種明かしがされる、“過去パート”が魅力全開。

シーンとしてはそんなに長くはないんだけれど、高校生姿なのになんら違和感のない可憐なアリス…という邪念は置いといて、そのほんの少しのシーンで描かれる、澪の一挙手一投足がいちいち魅力的で、“うん、だったら結婚するに違いない!”って思わせるし、それがあることで、“現在”の恐妻になってしまった澪の“過程”を、物語が描く以上に想像させてしまう構造になってるもんだから、ドラマに“共感”、“同情”、“リアリティ”を生んでいるのです。

じゃあそうすっと、主演の大倉(忠義)くんはどうなんだい?って話なんだけど、これがまた主人公・元春(もとはる)にピッタリで、大倉くんにしか出せない味を出しているのです。

仕事は頑張ってはいるんだけどちょっとだけ抜けてて優秀ではない。家族のことももちろん考えてはいるんだけどどこかずれてて、地味にイラっとさせる…。そんな優秀じゃなくて、地味にイラっとさせるキャラ造形が絶妙で、さらに絶妙なのが、元春の“明と暗”。元春の言動や置かれている状況はかなりリアリティがあって、ともすればあまりに悲惨で、嫌な旦那にも映ってしまう…。そしてその先に訪れる“タイムスリップして過去を変える”という部分が、かなり身勝手で全く共感できないキャラクターになってしまうかもしれない…、んだけど、大倉くんが持っている、鬱屈と無邪気が同居したような“明と暗”が元春と重なって、それがリアルとファンタジーを行き来する主人公にフィットして、夫にもちゃんと共感できる、素敵なキャラクターに仕上がっているのです。

そして、このドラマの成功のカギを握る…と言えるのが“入れ替わる妻”役。

演じるのは瀧本美織さんで、沙也佳(さやか)というキャラクター。これがまた、広瀬アリスさんから入れ替わっちゃう妻…なんだから、なんでこの人?って視聴者に思わせたら“負け”だし、逆にヒロインよりも魅力的に見えてしまったらドラマがねじれてしまうし…で、ここのキャスティング、かなり難しかったと思うんですよ(偉そう)。だけど、瀧本美織さん、ホント最適。ヒロインに負けないくらいかわいいんだけど、噛ませ犬役(決して結ばれない相手)として必要な、嫌味な部分をちゃんと持ち合わせてる…だけど、それを嫌に感じさせない自然さもある…。そして何より、広瀬アリスさんと瀧本美織さんって…よーく見ると…、目力強めの小悪魔系という、同じ系統に分類されてもおかしくないビジュアルなのに、二人が放つオーラは全く対局というバランスの良さ。元春が二人を天秤にかけるのも納得なんですよ。おそらく今後、二つの夫婦生活を見せていくはずでしょうから、このダブルヒロイン制、どっちかが魅力的じゃない…となると、面白さ半減してたと思います。なんだけどその辺もうすでにクリアしちゃってるもんだから、このドラマ、“勝った”も同然ですよ!

またそれらのキャラクターをさらに魅力的に仕上げているのは、タイムスリップという“ありえない”を補うかのように、細かく丁寧なリアリティ描写が満載の、橋部敦子先生の脚本。なぜこんなSFものを橋部先生が!?って、見る前は思っていたけれど、『僕の生きる道』(03年)や『僕の歩く道』(06年)といった“僕シリーズ”、『フリーター、家を買う。』(10年)や、『僕らは奇跡でできている』(18年)等々…、ファンタジックな世界観の中で、辛さや優しさを忍ばせるリアリティを描いてきた先生だったわ…脚本も最適だったんじゃん!!と思い出しました。

あとは、画面の質感が僕世代!(90年代後半から00年代前半)往年のTHE フジテレビ!!(特に「第1話」というフォント!)だったもんで、興奮&ノスタルジックな気持ちになったのだけど、その辺の詳細はマニアックすぎるから割愛するとして、ドラマ全体を覆う優しい色合いと、少し不思議な世界観は、これぞ往年!と感じる僕世代も、そうでない世代もきっと誰しも心地よく感じること間違いなしです。

っというわけで、キャラクターは全員ばっちりだし、脚本は丁寧で見ごたえあるし、演出は往年のフジテレビ…。3つ目は完全に僕の琴線が過剰反応する要素ですが、きっと家族全員、誰もが安心して楽しめる作品になっています。でもって、2話の予告を見ると、ただ単に夫婦が入れ替わって…というだけじゃない、過去と現在、パラレルワールドも複雑に入り組んだ“連続ドラマ”として毎週見逃せない仕掛けも出てきそう…。“ルパン一家”が颯爽と過ぎ去っていって、寂しくなった木曜の夜…、新たな楽しみが増えそうです。

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text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)