1月11日(月・祝)、映画「ヤクザと家族 The Family」の完成報告&生配信トークイベントが行われ、綾野剛、舘ひろし、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗、藤井道人監督が出席した。
映画「ヤクザと家族 The Family」は、1999年、2005年、2019年という3つの時代に、ヤクザとして生きるしかなかった男と彼を取りまく人々を、家族という視点から描いたヒューマンストーリー。日本アカデミー賞6部門を受賞した「新聞記者」のスタッフが再集結した作品として話題を集めている。
ここではイベントの模様の中盤以降、撮影エピソードなどが語られたパートと、生配信終了後の写真撮影前の綾野のトークをほぼ全文(後編)でお届けする。
市原隼人、本気のアクション懇願で「口が腫れ…最高に楽しい思いをした(笑)」
──綾野さんと舘さんは初共演でしたが、綾野さんとの共演はいかがでしたか?
舘:大変勉強させていただきました。
綾野:いえいえ…。
舘:この映画は、綾野くんが映画全体を引っ張っていったっていう感じがするんです。とにかく、綾野くんは山本という役を演じるというよりも、役を生きたという印象を受けました。
──素晴らしいなと思ったのは、どんなところでしょうか?
舘:すべてのシーンですね。最初に拉致されて、(自身が演じる柴咲が組長を務める組)柴咲組の事務所に来て。それまですごく突っ張っていた山本が、「行くところはあるのか?」と言われて、子犬のような目をして僕を見るんですね。そういうところとか、本当に素晴らしいですね。
──尾野さんは、これまでにも綾野さんと共演経験がありますが、今回の現場での綾野さんはいかがでしたか?
尾野:あのー…といっても、久しぶりなんですよね。
綾野:そうですね。
尾野:ね?
綾野:4年ぶり?5年ぶりくらい。
尾野:それくらいなんです。その私が知っている剛っていうのはですね、まぁ天然で、宇宙人みたいな人だったんです。
綾野:ははは(笑)。そんなふうに思ってたの!?
尾野:うん(笑)。
綾野:今初めて知った(笑)。
尾野:面白い(人)。それがですね、今回ご一緒させていただくことになりまして、現場に入ると、もう…みんなのことを見て、「大丈夫?」ってみんなをケアし、監督ともすごく長い時間をかけてコミュニケーションを取り、現場の話をして、役についてもすごく愛情深く演じている姿を見て…ちょっと上から目線で言ってもいいですか?「こいつ、デカくなったな」って(笑)。
(一同爆笑)
尾野:っていうくらい、すごく頼りになる人になってるんだと。じゃあ私も乗っからせていただきますみたいな。本当に久しぶりに会って、ただ、笑わせるだけの剛じゃないなと、感心しました。剛さん!
綾野:いやぁ、真千子ワールドが素晴らしいですよ(笑)。
尾野:失礼があったらごめんなさい!
綾野:全然よ~。本当に付き合いも長いですし、同い年だし、いろいろな縁がありますからね。
尾野:うん。
綾野:意外と、こう見えて映画の共演は初めてだったので、だから映画畑で戦っていた人間が、ドラマでは先に何回も共演していてね。…いや、今日もキレイだよ。
尾野:でしょ?(メイクなどをキレイに)作ってくれたもん!
綾野:っていうことでございます(笑)。
尾野:失礼いたしました!
──北村さんは「新聞記者」にも出演されていましたが、今回の作品の現場はいかがでしたか?
北村:藤井組のスタッフというのは、皆さんお若いんですよね。ずっと…学生時代の頃からの付き合いの中で皆さん切磋琢磨してやられている座組なので、もう…本当に出来上がっているんですよね。監督という存在がいて、1言ったら10分かるような。そういった風が流れていて、心地の良い現場というのは「新聞記者」でも感じていまして。
今回もね…「新聞記者」が終わって、あまり間が空かないうちに衣装合わせをしたんですけど、(「新聞記者」とは)全然違う服を着せられて(笑)。すごい高い腕時計をしたりして。「あ、本当にヤクザをやるんだな」っていうようなところで、不思議な感覚でした。
とにかく、監督は寄り添うっていう言葉がピッタリで。僕は現場でちょっと盗み見したりするのが好きで…悪趣味かもしれないですけど(笑)。例えば、綾野くんと監督が、いろいろと細かい演技に関して丁寧に確認し合っている背中を見るのが好きなんです。本当に、2人は付き合ってるみたいな感じで。
綾野:ははは(笑)。
北村:本当に寄り添っていて。舘さんに対しても、一つテストが終わったあと、スッと寄っていって…聞こえない程度に2人でやり取りしていて。僕の知らないシーンでも恐らく、皆さんにそうやって接していたんだろうなと思います。そういう部分では本当にステキな現場だと思います。
──市原さんは、綾野さんが演じる山本の幼なじみを演じましたが、綾野さんや監督とお話されたことはありましたか?
市原:この作品は、本当に好きでして。すべてが愚問になっちゃう。本当に奇跡のような…制作部も、技術スタッフも、俳優陣も、本当に映画好きが集まって。挑戦できる作品だと思っています。芝居とかそういうことではなく、そこにいることで、映像の中で生きることを許されるということがすごく幸せなんだなと感じました。
最初のシーンが、拉致されるシーンだったんですけど、こういう組ですから…“やった振り”の芝居があまり好きじゃないんですよね(笑)。笑わせんじゃねーよと。「フル(全力)で当ててください」と言って、やってもらったんですけど、結果それが半日続いて。
口が腫れるわ、(パンチがお腹に)入ってセリフが出なくなるわ。最高に楽しい思いをさせていただきました(笑)。
(一同笑い)
綾野:しかも、その場に僕もいて、そもそも先に蹴られるのは僕なんですよ。僕もフルでやられて(笑)。
市原:「あ、綾野剛も乗ってきた!」と思って!(興奮気味に)俺、本当に大好きなんですよ!
綾野:ははは(笑)。
市原:もう、久しぶりに大好きな俳優に出会えて、役者冥利ってこういうことなんだなって。ずっとやっていれば、作品愛があって、いろんな人に愛を渡せる人に出会えるんだなと思って、この作品に出会えて幸せでした。
綾野:俺も、隼人に出会えてマジ幸せだよ(笑)。
──磯村さんは、先輩方がこんなに本気で撮影に挑んでいると、緊張されませんでしたか?
磯村:そうですね…今が一番緊張しているかもしれないですね。これだけの方々が集まることがなかったので。自分の撮影では。ここに、加藤組の豊原(功補)さんがいたら、もう手が震えてダメだったかもしれないです(笑)。
(一同笑い)
磯村:本当にそれくらいステキな先輩方の中でお芝居をやらせてもらったので。でも、すごく温かく…綾野さんが現場に迎え入れてくださって。僕はあとからの合流だったんですけど、監督が事前に「今こういう感じだよ」と現場の写真とかを送ってくださったりして、すごく入りやすい現場の空気づくりをしてくださっていました。やっぱり愛のある現場だったなと改めて感じたので、緊張というよりは、すごく心が温かくなりましたね。
キャストが現場で“家族”を感じた瞬間とは?
──映画のテーマが“家族”ですが、撮影の中で“家族”を感じた瞬間はありますか?
藤井監督:僕にとってはみんなが家族で。まずは兄貴だった…今でも兄だと思っている剛さんは、撮影が終わると僕とかみんなをご飯に連れて行ってくれたりして。「今日はこのシーン良かったね」「明日はこういうふうにしよう」と1個1個気を使ってくれて。やっぱりそうされた助監督やスタッフたちは覚えていて、「よし、明日も頑張ろう」と思える。現場の士気を兄貴として支えてくれていたなと思って。
舘さんは、撮影の合間にコーヒーを淹れてくださるんですよ。待ち時間とかにいろんな現場の話だったり、役の話だったりをして。1人1人にそうしてくださることが、僕にとっては家族のようで。疑似家族ですけれども、終わってしまう時は本当に寂しかったです。
──舘さんのコーヒーはおいしかったですか?
綾野:おいしいです!とてもおいしいです。僕、普段はわざわざコーヒーを自分で買ったりすることはそんなにないんですけど、舘さんにコーヒーを淹れていただいたら、本当においしくて。舘さんの淹れ方なんですよね?普通のコーヒーの作り方をしていないって聞いたんですけど…。
舘:そんなことないです。ただただ薄いっていう(笑)。
綾野:あ、薄く作っているっていうことなんですよね。それが僕にはとてもおいしかったです!
──続いて、磯村さんに聞いてみようと思います。
磯村:僕が現場で印象的だったのが、藤井監督が「俳優と監督の関係性は夫婦だから」っておっしゃっていて。それが今でもずっと忘れられなくて。
現場に入ったら上下とか関係なく同じ立場で1個のいい作品を作るためにはどうしたらいいかというのを、しっかり話し合える仲にしたいとおっしゃっていて。それを聞いて衝撃が走ったというか。「あ、ちゃんと話してもいいだな、監督とも」と思えて、そこからすごく寄り添ってくださる監督なんだなと、藤井監督に対して思いました。
市原:カメラが回っていないところでも、何度も涙を流したと思うんです。それほど、何がということではなくて、本当に好きなんですよね。作品も、すべての方も。それだけです(笑)。
北村:いろいろ家族を感じる時はありますけど、分かりやすく言うと、みんなで昼飯を食べている時とか、やっぱりそこで一旦ブレイクして、緩急をつけて1日を過ごしているんだなって。うまく現場がいっている時ほど、昼飯休憩はとても穏やかだったり、スタッフさんがとてもおいしそうに食べてるんですよね(笑)。
映画の座組って、毎回一期一会かもしれないけど、家族のようなものかもしれないですね。最後に集合写真を撮ったりしますけども。本当にみんないい顔をしているんですよね。
尾野:スタッフと監督の関係は本当に家族っぽかったんですけど。物語の中でも、朝食を食べるシーンがありまして。「これ、これ!」って思いましたね。
綾野:うん。
尾野:家族って、やっぱり朝食を食べる…どの食事って考えると、朝食を食べるっていうのって、「家族だな」ってすごく感じたので。私にとって、朝食を食べるシーンは、家族を感じた瞬間でした。
舘:僕が家族を感じたのは、柴咲組ですね。菅田(俊)くんは、「あぶない刑事」の最初の映画の時にご一緒して、それ以来(の共演)。それと康(すおん)さんもこの前(別の作品で)ご一緒して。だから、柴咲組のおじさんたち3人と綾野くんと、僕にとってはこれが、この映画の中での“家族”でした。
綾野:僕は、毎朝の「おはようございます」と終わってからの「お疲れ様でした」というのが…「おはようございます」が「ただいま」っていう感じで、「お疲れ様でした」が「いってきます」っていう感覚なんですよね。だから、現場が家族だなと。帰る場所があるっていうのはまさにそう。
特に(地方から)東京に出てきたりすると、そんなにすぐに(地元に)帰れなかったりするじゃないですか。なので、自分にとって現場は帰る場所という感覚がずっとあったし、今回は特に強かったんですよね…。
とにかく挨拶が気持ちいい現場だったんですよ。それで体調も分かるので、みんなの。「おはようございます」の言い方で。「大丈夫かな?疲れてないかな?」って。そんな感じですかね。…恥ずかしいですね(笑)。そんな話、普段しないので。
尾野:(綾野をじっと見て)
綾野:なんだよ(笑)。
綾野剛「この映画は、今後の僕にとってライバルに」
──この配信を見ている方もいるかもしれませんが、今日、成人の日を迎えた、新成人にメッセージをお願いします。
綾野:僕もまだ大人になっていない感覚ありますからね(笑)。どの面下げて話をしたらいいものか…とても恐縮ですけども。何よりも、おめでとうございます。
相次ぐ成人式の中止になる中で、新成人の皆さんがどんな思いをされているのか…。「気持ち分かるよ」とはとても言えなくて。想像することも、どこまで許されるんだろうなと思うんです。そんな中で、今、皆さんには、どんな夢が見えているのかなって思うんですよね。ふと。どんな景色を見たいと思っているのかな。その景色って、ちゃんと輝いているかな?眩しいかな?って、老婆心のように気になってしまうというか。
だけど今日、こうして集まってくれたみんなを見てほしんですよね。まずは、新成人の皆さんが、夢や希望やそういう思いを馳せる自分を好きになって、強く生きることができるということを、僕たち大人が示していかなきゃいけないと思っています。
今日来たキャスト含め、監督、個人個人で心の中で思っていることはあると思うんです。でも、暗い顔を見せず、みんな気丈にここに座っていて、なんとか自分たちの眩しい姿を届けたいという思いでここに来ています。
ゆっくりでいいので、眩しいもの見ること、美しいものを見ること、小説の中にはたくさん物語がありますし、家の中でできる夢を膨らませることもありますし、可能性は無限大ですから。自分の中の可能性を時間をかけて育んでほしいなと思います。
もし、映画という業界に…役者としてなのか、各部署としてなのか、もし入ってくることがあって、この話を聞いていた人がいたら、ぜひ声をかけてほしいなと。必ず一緒に仕事がしたいと思っています。
──最後に代表して、綾野さんと舘さん、藤井監督からメッセージをお願いします。
綾野:今日は本当にありがとうございます。とても感謝しています。こうして、光を当てていただいてありがとうございます。
映画は1月29日から公開します。この映画は、ここにいない他のキャストやスタッフみんなの愛を育んで作った、とても大切な作品になりました。私にとっても集大成となった作品になり、今後は、この作品が圧倒的な…僕にとってのライバルになっていくんだろうなという予感すらしています。
そんな作品を、皆さんに見ていただく機会が許されるなら、一緒にこの時間を共にして、映画を見終わったあとに家族の一員になれたらなと思っております。ぜひ楽しんでいただけたら。心に華を添えられたらと思っております。ありがとうございました。
舘:タイトルは「ヤクザと家族」という、ヤクザをテーマにした映画ですが、本当に愛がいっぱい詰まった映画です。ぜひ、ご覧ください。
藤井監督:本日は、短い時間でしたが、見てくださった方々、ありがとうございました。1月29日にまた元気な姿で「公開しました」と言える日を願って、僕らも日々宣伝してまいります。なので、できることを1個1個、小さいことからおこなっていきますので、皆さんもぜひこの映画を見ることを楽しみにしていただければなと思います。本日はありがとうございました。
──配信は終了しました。このあとは、写真撮影になりますので、皆さんは一旦ご降壇ください。
(降壇していくキャストと監督)
綾野:(座ったまま動かず)皆さんお疲れ様でした。どういう準備をするんですか?ちょっといてもいいですか?ここに(笑)。別に僕(メイクなど)直すところないので。
──イスとアクリル板を撤去します!
綾野:(立ち上がり、スタッフの動きを見守る)
──綾野さんがいると、みんな照れちゃいますよ。
綾野:照れないでしょ(笑)。そんな!この位置で撮っていくんですか?
──綾野さん、リタッチとかしなくて大丈夫ですか?
綾野:全然大丈夫。…レタッチ?リタッチ?あ、髪の毛とか?全然大丈夫。(取材陣に向かって)なんか変かな(笑)?いや、うれしいじゃないですか。
──コロナ禍なので、取材陣も人数を減らしているんです。
綾野:それでも、めちゃめちゃ体温が伝わってくるので。本当に無観客で動画に向かってって…それでも十分だと思うんですけど、全然、違いますよね。やっぱり会えるとうれしいじゃないですか(笑)。
ここで準備が完了し、写真撮影のため、キャストと監督が再登場。立ち位置に並びながら、何やら談笑をする仲の良さを見せたキャスト陣だった。
映画「ヤクザと家族 The Family」は、1月29日(金)全国公開。
©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
配給:スターサンズ/KADOKAWA
最新情報は、映画「ヤクザと家族 The Family」公式サイトまで。