11月3日(日)の『ボクらの時代』は、妻夫木聡さん、池松壮亮さん、映画監督の石井裕也さんが登場しました。

11月8日(金)に、池松さん主演、妻夫木さんも出演する映画『本心』が公開予定。石井さんが監督・脚本を務めています。

3人は10年前にも映画『バンクーバーの朝日』でタッグを組み、そろって『ボクらの時代』に登場しました。

妻夫木聡 芝居を続けるうえで「ずっと求めている感覚」

妻夫木さんは、俳優を始めてからこれまでの思い、そしてずっと追い求めていることを明かしました。

妻夫木:大人になりたかったですよね、ずっと。20代は本当に大人になりたかったし、そもそも自分が役者を始めたときって、楽しくてしょうがなかったんです。出合う映画、出合う映画で人との出会いとか、作品との出合いも新鮮で。10代、20代のときの、純粋に芝居が楽しいと思っていた感覚というものを、どこか追い求めているところはあるんですよね。

妻夫木聡

石井:今でも?

石井裕也

妻夫木:今でも。

妻夫木さんは、40代になっても思いは変わないと明かしますが、俳優を続けているうえで「もっと大きなテーマ」があるそうで、「言葉で説明するのが難しいのだけど」と前置きをして、ある体験を語りました。

それは、妻夫木さんが出演していたドラマ『ランチの女王』(2002年/フジテレビ)の撮影中のこと…。

妻夫木:夢オチのシーンだったんですけど、「兄貴が自分の好きな女の子と結婚する」みたいになって、(結婚式での)スピーチを僕がする。その長いセリフをずっとしゃべるというシーンがあって。テストのときは、何もなかったんだけど、本番になって「よーい、スタート!」でスポットライトがついた瞬間、スイッチが入って。幽体離脱じゃないですけど、一回どこかに行ったんですよ、魂が。で、勝手にしゃべっている自分がいるんですよ。なんか、操縦席でもう一人の僕が見ていて。

池松:コントロールしてるんだ。

池松壮亮

妻夫木:「じゃあ、次にこういうふうにやってみようよ。ああ、楽しいね」みたいな。で、終わって、なんかわからないけど感動して泣きそうになっちゃって。

池松:ふーん。

妻夫木:全然そういうふうにやろうと思っていない芝居だったし。そのカットは、それでOKもらったんですけど。その感覚というのは、二度と得られてなくて。

そして妻夫木さんは、映画『どろろ』の撮影時に、共演していた故・原田芳雄さんにその話をしたところ、「妻夫木、俺もそれをもう一回やりたいからやってるんだよ」と言われたエピソードを披露。

妻夫木さんは「本当のこと言うと、ずっとそれを求めてるんです」と明かしました。

石井監督「この世のものではない感覚を捕まえなくてはならない」

すると、石井監督も「なんでそんないい話、今まで黙っていたの」と言い出し、「まさに、それを僕も追い求めている」と共感しました。

石井:つまり、芝居はオカルトに近いというか。演じる人と役の間に、たぶん、何かがあるんですよ。

石井裕也

池松:霊的なものが…。

石井:神のようなものが宿るに決まっていて。それって、やっている人の感覚でもあるんですけど、見ている人の感覚でもあるから。

妻夫木:はい。

石井:「今の、ちょっとうまくいってなかったな」という芝居でも、見てる人がそこに何かを感じることもあるじゃないですか。

妻夫木:はい、はい。

石井:この世のものではないものを、その感覚を、絶対に捕まえに行かなきゃいけないんですよ、我々は。

池松:わかります。

石井:だから、芝居って、ちょっと儀式風じゃない。「行きますよ」「本番。よーい、スタート!」っていう。

池松壮亮「初期設定は終わっているので、あとは勝手にいってらっしゃい」

池松さんは「そういう経験をしたことがない」と語りましたが…。

池松壮亮

池松:僕は、天に任せます。「よーい、スタート!」で(撮影が)始まったら。

妻夫木:うん。

池松:そこまでは、いろんなことを考えるけど、あとは天に任せて、自分は外側から見ていて。自分が動いているのか、誰かが動いているのか。(役柄の)初期設定は終わっているので、あとは勝手にいってらっしゃい。

妻夫木:ある意味、いつもそうってことなんじゃない?俺がなったやつの。

妻夫木聡

池松:だから、それを目指して、あとはもう天に任せる。ダメだったら、僕が言われてるのか、その人が言われてるのか、わからなくなるんですよ。

石井:面白い。

妻夫木:ああー。

池松:だから、石井さんが「こういうふうにしてください」っていうのは、こっちはわかっているんですよ。(芝居をしている)あいつがいうこと聞かないだけであって。「ちょっと設定変えますね」みたいな。半分はコントロールできるけど、半分はコントロールできないところにあるから。

石井:体を貸し出してるんでしょう?天に。

池松:そうだと思いますね。「そうありたい」と思ってやっているだけですけど。

そこまで聞くと、石井監督が再び「なんでこんな大事な話をさ、今まで黙ってたの?」と嘆き節。

これに、池松さんと妻夫木さんは「こんな話を面白がる人なんてね」「なかなかいないでしょ」と同調し、笑い合いました。

左から)妻夫木聡、池松壮亮、石井裕也

『ボクらの時代』2024年11月3日放送より

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