穏やかな音楽と心に寄りそってくれるセリフは癒やし
――本作はチャップリンが遺した曲のほか、荻野清子さんが書き下ろした楽曲も使用されます。印象を聞かせてください。
荻野さんの曲を歌わせていただくのは今回が初めてで、愛を感じる素敵な曲ばかりです。本番でも荻野さんがピアノを弾いてくださることになっていて、稽古場にも頻繁にいらっしゃっているので、ご自身が生み出した曲に深い愛情をお持ちなんだろうなと思いました。
ちょっと憂いを秘めたロンドンの情景が浮かんでくるような繊細なメロディで、コード感とか「うわっ、オシャレ」みたいな。今作はミュージカルではなく、音楽劇ですので、そのあたりも計算されて作られたのだろうなと感じています。
――美しい旋律を舞台で披露するにあたり、どんな心境で向き合っていますか?
作品を重ねるたびに、言葉がもつ力のスゴさを実感するので、どうしてこの言葉をセレクトしたのか、などを役として感じながら発することができたら、もっとその人物が抱える気持ちを共有できるんじゃないかなって。メロディよりも、なるべく言葉の強さをお届けできるようにという思いで歌唱しています。
――主人公のカルヴェロは一世を風靡した芸人だったものの落ちぶれてしまい、過去の栄光とのはざまで苦悩する役柄ですが、同じ「表現者」として考えることもあるのでは?
今回のお話をいただいてから映画版を観たのですが、刺さる部分がとても多く、なかなかに傷つくなぁと(苦笑)。自分にライトがあたらなくなることの要因は年齢以外にもあると思いますが、これから僕はどうなっていくのだろうとか、自分自身の未来がちょっと寂しく感じるような瞬間もありましたね。
でも、それと同時に今一度自分を見つめ直すいい機会でもあると思いながら、カルヴェロを演じる幹二さんのお姿を稽古場で拝見しています。おそらく、チャップリンも自分自身をカルヴェロに重ねてこの物語を書いたと思うのですが、いつの時代も表現に関わる仕事をしている人たちは、そんな葛藤と戦い続けているのだろうなと感じました。
――公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
ゆったりとしていて穏やかで、心の隙間にスーッと入ってくるような音楽と、心に寄りそってくれるセリフにあふれている作品なので、ぜひ癒やされに劇場へ来ていただきたいです。
同時に、カルヴェロから投げかけられるメッセージはすごく情熱的。穏やかなものの中にある熱いものを、明日への活力として持ち帰っていただけたら嬉しいです。
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