2017年に衆議院議員を辞職、18年に芸能事務所に所属し、タレントとして活動中の上西小百合が、自身初となる舞台「おかめはちもく」(5月16日~23日於:サンモールスタジオ/東京・新宿)で、本格的な演技に初挑戦する。
フジテレビュー!!は、舞台開幕前日、最終稽古である「場当たり」に臨む上西に密着。合間にはインタビューを行い、開幕を控えた心境、女優業への意気込み、また今後の目標などを聞いた。
<最終舞台稽古 密着レポート>
上西が演じるのは、とある地方の市議会議員・岸本。白いスーツにボルドーのブラウス。まるで、議員時代の彼女を彷彿とさせる装いで、ステージに現れると、先輩にあたるベテラン議員たちを糾弾しはじめる。
「民自党の議員を守るのが、あなたの役目なんじゃないんですか?」「政治生命を絶たれる大事件ですよ!」と、身振り手振りを付けながら、大声を張って、説明を求める姿は、さながら国会質問のよう。
そこにいるのは、ベテラン議員とテレビ局の報道記者。数年前に発覚した議員の不正により、多くの議員が辞職。その後、新たに若い議員が誕生し、クリーンな市政へ変革が求められる中、ベテラン議員たちの不正隠蔽体質は変わらない。
テレビ局が取材カメラを回していても、ベテランたちは、「本心では悪いことをやっているとは思わない」とのたまう。それに対して、公正・公平な市政を取り戻したい岸本は、熱い気持ちを爆発させる…そんなシーンが展開する。
本格的な演技初挑戦ながら、上西の芝居からは、岸本のやり場のない怒りのようなものがひしひしと伝わってくる。セリフ回しも声のトーンも、議員時代にテレビなどで見せていた表情とは違う、堂々として落ち着き払った雰囲気があった。
1ヵ月半の稽古を積んだとはいえ、その想像以上の“女優ぶり”に驚かされた。途中、監督から「心で泣いてね」と、さらに気持ちを込めるようにリクエストされると、「ここに来たら、涙が出ると思ってたけど、出ないんです(笑)」と言いつつ、共演の俳優陣に、「どういうことを考えて泣くんですか?」などと改めて質問。
さらに、客席に降り、観客から自分がどう見えるかを確認し、立ち位置や目線をチェックするなど、“新人”ということに甘えず、終始貪欲に芝居を向上させるべく努力する姿勢が光っていた。
そんな稽古の後で上西に話を聞いた。
<上西小百合 インタビュー>
――本格的な演技初挑戦とのことでしたが、失礼ながら、想像以上にお芝居がお上手で驚きました。
本当ですか!?うれしいですけど、真に受けますよ?私はすぐその気になって、乗せられやすい性格なんですから(笑)。
――今回、オファーを受けてどんなことを思いましたか?
今まで演技したこともないですし、まったくの畑違いだと思いました。今の事務所に入るときに、会長から「女優という道もいいのでは?」と提案してもらったのですが、まさか、まさか、自分にオファーがあるとは思いませんでした。
ただ、今回、市議会議員の役ということで、だったら自分の経験を活かしてやらせていただけるかもしれないと思い、お受けしました。
――台本を覚えるのも初めてで、覚え方が分からず、全部書き写して暗記したそうですね。
そうなんです!みなさんのイメージにはないかもしれませんが、クソ真面目なところがあって、もう、絶対、何が何でもセリフを飛ばすわけにはいかないので、「一言一句完璧に覚えよう!」と思い、とにかく、書いて、書いて覚えたんです。受験勉強さながらに。
それで、いざ(実際の舞台の立ち位置で)立ち稽古をしよう、となったら、頭の中に文字が浮かんでくるだけで、文字にとらわれて動けなかったんです。当然ですけど、「言葉に気持ちが乗っていない」と指摘を受けて、これじゃあダメだって。
セリフは続けて言うのではなく、発したら相手が何かを言う「受ける時間」があるということを初めて知って。議員時代は、街頭演説でも自分が言ったら言いっぱなしで、聴衆からのリアクションを待つことはありませんでしたが、お芝居は、相手のリアクションがあってこそ成立するもの。それを学べたのは大変大きなことですし、そこは、今後、バラエティでもトーク番組でも絶対に必要になるものですので、大変勉強になりました。
――舞台では、声のトーンも違いますね。
ここ(胸のあたりを指して)を震わせて、低めの声でしゃべるんだよ、とか教えていただきました。まだまだ、とてもできているとは言えないと思いますが。
「上西、議員のときと印象が変わったね」と思っていただけるようなお仕事ができたら
――この舞台のために、大好きなお酒も断っていると聞きました。
そう!(笑)去年の年末は、今くらいの体型だったんです。それが、正月に暴飲暴食を繰り返していたら太ってしまい、そこから全然痩せなかったんですよ。
それで(4月半ばに)お稽古入るときにマネジャーと話して、お酒をやめることにしました。そうしたらみるみるうちに痩せました。相当飲んでいましたからね。
――毎日飲んでいたとか?
そうです。みなさん、毎日飲まないんですか?(間を)空けるっていうのが分からない(笑)。
――習慣になっていたものをやめて、つらくないですか?
そう思いますよね。でも、環境が変わって「これに打ち込まないといけない」というのがあると、全然苦じゃないんです。自分の中でも、この舞台をさせていただく、というので感じるところがあったんじゃないかと思います。
千秋楽を迎えたら、解禁しようかな、とも思うんですけど、ここまで我慢したんだから、もったいないなっていうジレンマがあります。一線超えたら、みるみる飲みだすと思いますので(笑)。
――それだけ打ち込めるのですから、女優業は楽しそうですね。
おそれ多いですが、今は楽しくやらせていただいています。とにかく発見があるのが楽しいです。例えば、怒り、悔しさを表現する、というときに、お芝居として「どうすればいいんだろう」とか考えて演じる中で、「ああ、こうやればいいのか」とか、発見がたくさんありますから。
――現在、バラエティ番組にも出演していますが、今後はどういう活動を?
議員を辞めてからいろいろなことに挑戦させていただいているので、自分で「これ」と絞るのではなく、できる限りいろいろなことに挑戦していけたらいいですね。私を見て、笑っていただいてもいいですので。上西、議員のときと印象が変わったね、みたいなことを思っていただけるようなお仕事ができればな、とは思います。
議員再出馬の可能性は?「いま、お話をいただいても…」
――女優としての目標はありますか?
そこも、今後、役をいただけるなら、どんなものにでも挑戦してみたいですが、自分としては、一癖ある役がいいのかな、とは思います。『家政婦は見た』じゃないですけど、ちょっと変わった役にも挑戦してみたいですね。
――今後、再出馬の可能性は?
それはもう、ないですね。今は、こういう芸能界というんですかね、新しい世界でやらせていただいているので、いま、お話をいただいても、立候補しようとはならないですね。
――最後に、読者にメッセージをお願いします。
今、こういったコロナ禍で、大変な思いをされている方、望まない転職をされる方も多いと思うんですけど、かつてあんなに袋叩きにされた上西だって、40歳目前で女優をやり始めたように、年齢は関係なく、新しいことに挑戦していけるんだってことを感じていただけるのであれば、うれしいです。前向きにみんなで頑張っていきましょう。
撮影:島田香
<公演情報>
ナカツル ブールヴァール トウキョウ公演 第2弾
「おかめはちもく」
作・演出:中津留章仁
日程:5月16日(日)~23日(日)
会場:サンモールスタジオ
出演:田邉淳一、村上隆文、小飯塚貴世江、岩井七世、桝田幸希、大部恭平、福田裕也、上西小百合、友澤晃一
詳しくは、公式サイトまで