東京に暮らす東京人が語る、自分だけの東京ストーリー。第2回は、演劇ユニット「TEAM NACS」メンバーで、『青のSP(スクールポリス)-学校内警察・嶋田隆平-』(フジテレビ系)などに出演中の俳優・音尾琢真。北海道のスターが、初めて東京で家を借りた築地でのほろ苦い経験と、人柄がにじむほっこりエピソードを明かす。
【私の、東京物語。】のほかの記事はこちら!
<音尾琢真の、東京物語。>
20代後半、東京で仕事をするようになった僕は、北海道に家がありつつ、年の半分を東京で暮らす、という生活を送っていました。そのころ住んでいたのは、渋谷の新南口のほうにあったマンスリーマンション。事務所が二部屋を借りてくれて、そこに、その時々に仕事のある(TEAM NACSの)メンバーが泊まっていました。主に、安田(顕)さん、戸次(重幸)さん、僕で回していて、3人がかぶったら誰かがホテル暮らしになるといった感じでした。
ある日、戸次さんと入れ替わりで僕が入ることになり、札幌から大荷物でやってきて、「さあ、部屋でゆっくりしよう」と思って扉を開けたら、戸次さんが寝ていて。前の日にお酒を飲んだみたいなんです。でも、僕は翌日から撮影だし、部屋を清掃してもらわないといけないしで、「帰ってください」と頼んだのですが、「まあまあ…」という感じでだらだらされちゃって。それに僕が腹を立てると、「分かった、お前がそんなに言うなら、よし、買い物にでも行こう」と誘われ、なぜか一緒に代官山へ。その間に清掃に入ってもらおう、ということだったのですが。それで2人で代官山でTシャツでも買ったんだっけ。思い返しても、あれは、迷惑な話でしたね(笑)。
そこには2年くらい住んで、その後、新宿、大門、浜松町とか、都内のマンスリーマンションを転々として、結婚を機に初めて東京で部屋を借りました。それが築地(中央区)でした。もともと妻が築地に住んでいたこと、羽田空港までタクシーで10分、15分と近いことが決め手でした。
築地本願寺の裏あたりで、築地市場(2018年10月に豊洲に移転)も近く、場内外はもちろん、近辺にもいろんなおいしい店があるし、銀座にも歩いて行けるし、という立地のいいところで。
犬を飼っていたので、勝鬨(どき)橋から聖路加病院まで、隅田川沿いを散歩したり。当時、走るのが好きだったので、豊洲のららぽーとまで走って往復したりしていました。
その時に晴海大橋から見る景色が美しくてね。レインボーブリッジなんかも本当にきれいに見えるんですよ。
両親が北海道から遊びに来たときには、フェリー乗り場に案内して東京湾クルーズを楽しんでもらったりもしました。
築地はとても気に入った場所でしたが、問題もありました。まず、僕にはあまりにも家賃が高かった。札幌に比べて3倍くらいだったのかな、いろんなところを切り詰めて家賃に回さねばならず、人生で初めてお金の不安を覚えました。北海道時代、仕事は学生のときからやっていたし、20代になるとさらにバリバリやるようになり、オファーも増えていったので、お金の心配をしたことがなかったんです。
愚痴をこぼしたい友だちは、東京の西側に住んでいることが多かった
その後、北海道と行き来して東京でも仕事をするようになっていたのを、30代を機に北海道での仕事を整理し、ここからは東京を拠点にほぼ俳優業だけで仕事を広げていくぞ、と希望を持って借りたマンションでしたが、高い家賃が重くのしかかってきて。そのうえ、俳優としてもそれほど重要ではない役が多かったこともあって、結婚したばかりなのに、「この感じでやっていけるのかな…」とすごく焦りました。
そしてそんな愚痴をこぼしたい友だちは、三軒茶屋とか下北沢とか(東京の)西側に住んでいることが多かった。例えば、大森南朋さんとそのあたりで飲んでタクシーで帰ろうとしても、5000~6000円かかってしまう。毎度、頭が痛かったですね(苦笑)。
結局、3年ほどで友人たちともほど近い住宅地に引っ越したのですが、東京での仕事が安定してきた今こそ、築地に住みたいな、とふと思います。というのも、当時はそうでもなかったんですけど、その後、釣りが好きになりまして。
東京都内の川、運河、海沿いでルアーフィッシングができる場所を、Google マップとかを見ながらあちこち探すようになったんです。東京は「釣り禁止」エリアも多い中、築地の裏や勝鬨、豊洲あたりにとても釣れる場所があって、わざわざそこに車で通ったりもしました。
今築地に住んでいたら、もうその辺で釣りし放題だったのにな、惜しかったな、なんて悔しい気持ちがちょっとありますね(笑)。
<音尾琢真オススメ/東京、グルメ&買い物スポット>
◆フレンチもんじゃ&参鶏湯 あゆむ
住所:東京都中央区築地7-14-3 ※現在はランチの営業のみ
何でもおいしいけど、元祖だという、海鮮とアボカドのもんじゃはぜひ食べていただきたい。以前、リーダーの森崎(博之)さんを連れて行ったことがあるのを忘れていて、去年くらいかな、「あそこうまかったな」と言われ、驚いたことがありました(笑)。
◆ヴァンピックル 銀座店
住所:東京都中央区銀座4-3-4 銀座屋酒店ビル2F
(銀座の老舗フレンチの)オザミデヴァン系列のワインバーで、BBQのように焼いたお肉とワインという、「なんともオシャレだな、東京は」と思えるものが食べられます。おいしいし、気兼ねなく入れるし、雰囲気もいいので、友だちと行ってもいいし、デートにもオススメ。
◆釜浅商店
住所:東京都台東区松が谷2丁目24−1
僕は道具が好きなので、道具の専門店が多い合羽橋に行くのも楽しみのひとつです。釜浅商店さんは、包丁やお鍋といった料理道具の老舗。コロナ禍でキャンプも好きになったので、先日、こちらで七輪を買いました。真っ黒でこだわりが詰まったカッコいい七輪でね、最高に気に入っています。
Takuma Otoo
北海道旭川市出身。俳優。演劇ユニット「TEAM NACS」メンバー。現在、放送中の『青のSP(スクールポリス)-学校内警察・嶋田隆平-』(フジテレビ系)のほか、映画「るろうに剣心 最終章 The Final」(21年4月23日公開予定)に出演する。
撮影(東京風景):YURIE PEPE