視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出すドキュメントバラエティ『7RULES(セブンルール)』。

2月3日(火)放送回では、「3COINS」商品部MD(マーチャンダイザー)・岡田幸子に密着。全国に200店舗以上を展開する300円ショップ「3COINS」では、キッチンやインテリア、ファッションアイテムからモバイルグッズまで、幅広い生活雑貨を販売している。

デザインと実用性の高い品揃えが女性の支持を得て、ここ10年で店舗数は3倍に。岡田は、商品開発や販売戦略を担い、その急成長を支えてきた。バイヤーとともに日々、商品開発に力を注ぐ彼女のセブンルールとは。

ルール①:最初に店全体を引きで見る

アパレル会社「パルグループ」が運営している「3COINS」の本部は、大阪有数のオフィス街・淀屋橋にある。

商品部の責任者として、実際に仕入れを行う11人のバイヤーを束ねる彼女の1日のスケジュールは、新商品開発の打ち合わせなどでパンパン。そんな中、週に一度の店舗視察のため向かったのは、大阪駅に直結する店舗。

「3COINS」では毎週新商品が並び、その数は、ひと月に800種類にものぼる。店の様子を外から見守り続ける彼女は、「外から引きで全体を見ていて、お客様の流れとか、外から見た時のお店の見え方がどうなってるかみたいなことを、いつも、どの店に行っても見るようにはしています」と話す。

主に、客がどこで足を止め、どこから入店し、どこに集まるのかを確認しているといい、さらに「お店のレイアウトもちょうど変えたばっかりなので、そのへんの動きがどうかなと」と、店の様子を観察する。

この店舗では、それまでのレイアウトから変更し、メイン商品やキッチン用品の売り場を移動。さらに、男性でも足を止めやすいようにと、モバイル商品を店先の棚に置くように。

客の動きを確認した彼女は、「このレイアウトにしたのは、成功してるのかな」と笑顔を見せた。

ルール②:ビビッドカラーは程々に

11人のバイヤーは、キッズ、服飾、モバイルなど、それぞれ興味のあるカテゴリを担当。バイヤーの中で唯一子育て中の松村さんはキッズ用品を、「ヲタ活(ヲタク活動のこと)」経験者の中田さんは、応援うちわを入れるケースなどの「ヲタ活」グッズを担当している。

毎月生まれる800種類もの新商品のうち、9割がオリジナル商品。企画から販売まで、およそ半年の間に、バイヤーは複数の企画を同時進行しながら、個性や趣味を活かした商品づくりをおこなっている。

バイヤー自ら「みんなクセ強いんで」「けっこう我が強い人は多いと思います」と分析。そんな個性派揃いのバイヤーたちが提案する企画を、リーダーの彼女がチェックする。

これまでは100円、300円均一ショップなど、同業他社と勝負をしてきた。しかし彼女が重視するのは「『高見えする』とか、『こういうの欲しかったよね』みたいな、うちでしか買えない価値の提供をどれだけやっていけるか」だと語る。

似た商品が100円ショップにあると、安さでは勝てない。300円だからこその質だけでなく、“高見え”するデザインにもこだわる。そのために彼女が意識しているのが、「色をあえて落ち着かせる」ということ。

キッズのアイテムであっても、それを選び、子どもに使わせるのは大人。“他で手に入る”明るいカラーではなく、“3COINSだから買える”ちょっと落ち着いたトーンやくすんだトーンを採用したことで、買う人の幅も広がったという。 

ルール③:トレンドは韓国系ブランドでチェックする

京都で育った彼女は、カウンセラーを目指し、大学では心理学を学んだが、職が決まっていない状態で卒業。「やりたいことも特になくて、さすがに何かしら働かないとなと思って」と、何となく「3COINS」でバイトを始めると、3年目には店長を務め正社員に。そして30歳の時、商品部のバイヤーに抜擢された。

「『え、なんで私?』って思いました。バイヤーをしたいと思って(会社に)入ったわけじゃなかったので。その都度、目の前にきた求められたことに対して『頑張れるならやってみよう』っていう感じで、ずっと働いてきてた」と、当時の戸惑いを明かす。そして、バイヤーを始めて3年後、商品部のリーダーに就任した。

そんな彼女は最近、忙しい合間を縫って韓国系ブランドをチェックしているという。「雑貨やインテリアなどのトレンドは、韓国から流れてきているイメージがある」 と話し、SNSで情報収集を行う。

「実際に今、3COINSに来ていただいているお客様って『なんか流行ってきてる』って分かったときに、取り入れていくような層の方が多いかなと思っているので」と、流行のリサーチをおこたらない。

ルール④:買い物中は300円で作れるか考える

ある日、彼女の自宅を訪れると、半同棲中の恋人・佑介さんの姿が。彼が作ってくれていた夕食の鍋を囲む際、使う取り皿は3COINSの商品。そのほかにも小物入れや洗濯ネットなど、生活用品は3COINSの商品を使うことが多いという。

「『欲しいけどないな』ってなったら、『こういう物もあったほうがいいんじゃないかな』」と、生活の中で商品開発のヒントを得るという彼女。プライベートの買い物でも、ただ買い物を楽しむわけではない。

次々と店をまわる彼女の頭にあるのは、「その商品を300円で作れるか」。「普通のオシャレな雑貨屋さんにある高いものが、うちで300円で買えたらすごいテンション上がるよね、みたいなことが今、テーマとしてはある」と話す。

発注先や運送方法などを工夫し、コストをカット。市場では3000円以上の値がつくトレンド商品も、3COINSでは300円に。 

「スクエアショルダーバッグ」の開発を担った、服飾担当の野口さんは、「ショルダー部分の調節とかも付けたかったんですけど、コストが合わないっていうことだったので。それだったら私はサイズを優先させたいなって」と、商品に込めたこだわりを解説。

岡田は「『どこを妥協するか』という言い方は変ですけど、こだわっていて『そこだけは譲れない』っていうところはなんとか残して、それ以外のところでどう調整するか」と語った。

ルール⑤:日曜日は恋人と安くて美味しいご飯を食べる

佑介さんとともに仕事が休みの日曜日の昼食時、2人が向かったのは行列ができる人気店「すし酒場 さしす」。この店を選んだわけは、メニューの値段の安さにあった。「安くて美味しいところを探している」と言い、「休みの日にお昼から飲めるのが幸せ」と笑顔を見せた。

「ある程度のお金を払って良いものが食べられるとか、良いものが手に入れられるって当たり前」と、プライベートでも“安くて良いもの”を追求する彼女。「そういうところ(安くておいしい店)に行くことで、『どうやって付加価値を付けたら、この商品が300円以上に感じてもらえるのか』とか、勉強させてもらっている」と語った。

ルール⑥:話を聞くときは手を止める

多くの人気コンテンツとコラボ商品を販売している3COINS。オンラインでの商談でプレゼンを担当したのは、取引先へのプレゼンが初めてだという最年少バイヤー、23歳の森本さん。そんな若手のフォローも、岡田の仕事の一つだ。

商談を終えると、彼女は「めっちゃ緊張してたな!『大丈夫?』って思ったけど、今言ったら余計緊張するかなと思って」と明るく声をかけた。そんな彼女に森本さんも、「報・連・相はやりやすい環境。そういう空気を(岡田が)作ってくださっている」と感謝を示した。

商品部のリーダーとして11人のバイヤーを束ねる彼女には、意思疎通を図るためのルールがあった。

他の従業員から声をかけられ、確認作業や相談に乗る際、どれだけ忙しくパソコンに向かっていても、作業を止めて話を聞く。

「ここの人たち、顔も見てくれないですよね」と言われた過去の経験から、このルールが生まれた。気づけばおろそかになってしまいがちな「手を止めて顔を見て話す」ということを、意識的に行っているという。

ルール⑦:バイヤーの考えは否定しない

クリスマス商品について、バイヤーとの打ち合わせで議題となったのは。商品のターゲット。時には意見がぶつかることもあるが、バイヤーの意図を汲み取ろうと、真摯(しんし)に向き合う彼女。

また別の打ち合わせで提案された企画は、既に別のバイヤーから似たものが上がっていたという。しかし彼女はそれをボツにはせず、実現可能な方法を考えた。 

バイヤーたちからも「やりたいと思ったことは挑戦させてくれる」「NOを言わない」「『ここをもうちょっとこうしたほうがいいんじゃない』はあったとしても、『それ無理じゃない』みたいなことはあまり言われたことがない」と言われる、彼女の姿勢。

「カテゴリを任せて、しっかり時間をかけて考えてくれている人が言ってくれていることなんだし、よっぽどズレていない限りは『なんなんそれ』とか『違うよ』とかは言わないですね」と、彼女は言う。 

売れるか売れないは、販売してみないと分からない。毎週新商品を多く発売するためには、スピードも大事だ。11人のバイヤー、それぞれの良さが商品づくりに活かせるように、意見や考えを尊重する。バイヤーの1人、升川さんも「(岡田は)自分がこうしたいっていうことを殺して優先させてますから。バイヤーの意見を通すために。長い付き合いなので、しゃべりかけやすいのは助かっています」と話す。

「バイヤーの我が強い」と感じるのは、毎日のこと。「すんなり話が通ればいいのに」と思う反面で、「それくらい(強いこだわり)じゃないと、面白いもの作れない、日々新しいもの生み出せないだろう」と、自分を納得させている。

「自分1人でやれることなんて限られているので。みんなの力を借りてブランドを良くしていくっていうつもりです」と、彼女はその意思を新たにした。

※記事内、敬称略。

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次回、2月9日(火)の『7RULES(セブンルール)』は、チョコレート研究員・村松美紀に密着。チョコレート売り上げナンバー1ブランドとして知られるロッテの看板商品「ガーナ」。

50年以上の歴史を持つブランドの新商品開発現場で、「進化することを止めてしまったら終わってしまう」と、日々時代に合わせた理想の味を追求し、新たな挑戦を続ける彼女の7つのルールとは。