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両親の離婚がきっかけで貧乏になった。パックンの「逆境力」

特集「逆境力」Vol.1

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「一緒に行かない?」のひと言が、どれほど苦しかったことか―。

パックンは、貧しかった子ども時代をそんな風に振り返る。

【写真】貧しかった子ども時代を振り返るパックン

お笑いコンビ「パックンマックン」のパックンとして多くのお笑い番組に出演する一方、コメンテーターなどとして報道番組にも多数出演しているパトリック・ハーラン。

アメリカの名門ハーバード大学卒業で、2012年10月からは池上彰氏の推薦で東京工業大学の非常勤講師に就任し、著書も多いことから「順風満帆」「エリート」といったイメージを持つ人も多いだろう。

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しかし、幼少時代は国から食料支援を受けるような貧困家庭に育ち、10歳から高校卒業まで新聞配達のアルバイトを一日も休まずに続けて生活費の一部を稼ぐなど、努力と周囲の助けによって今の地位を築いた苦労人だ。

そんなパックンが、日本の子どもの貧困の現状を取材しつつ、自らの生い立ちを振り返った著書『逆境力』(SB新書)を出版した。フジテレビュー!!では、1年以上にわたってパックンの取材に同行。その内容を連載でお届けする。

シリーズ初回はパックンの子ども時代について、インタビューで聞いた。

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真夜中にキッチンでママが泣いていた

貧しくなったのは、両親の離婚がきっかけでした。僕が7歳のときです。

僕たち姉弟を目の前に座らせて、両親から「私たちが君たちの親であることは変わらないし、これからもずっと愛してるよ。でもお父さんとお母さんは別れて暮らすことになったんだ」と告げられたこと、よく覚えています。悲しかったし不安だったけど、「お母さんを支えなくちゃ」って子どもながらに思ったことも。

こうして母、姉、僕、そして犬のポピーの3人+1匹の生活が始まりました。

父という大黒柱がいなくなってしまったうえに、折悪く母がリストラされてしまい、生活は苦しくなりました。以降、母は就職しては失業する、という繰り返し。失業手当てはありましたが、それほど多くはないうえに期限つきです。

なかなか安定しない仕事の給料、もしくは失業手当て、そして父から支払われる養育費。これが当時の僕たちの家計でした。

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ようやく生活が少し安定しだしたのは、母が大学院で教育の修士号を取り、小学校の先生になったころです。

僕の年齢でいえば7歳から17歳くらいの間ですが、とくに苦しかったのは、僕が11歳のとき、ある事情で姉が父の元に引き取られてからでした。父が「1人はこちらに引き取ったのだから」と、母に支払う養育費を一方的に止めてしまったのです。

姉がいなくなって、母ひとり子ひとり。「明日の食べものが何もない!」という危機的状況に陥ることはなかったけれども、余裕はまったくありませんでした。

牛乳はいつも脱脂粉乳。両親が離婚してからというもの、「ホンモノの牛乳」は小学校の保健室でしか飲んだことがなかった。ビーフやポークは夢のまた夢で、たまに買えるチキンがご馳走だった。

かなり生活は苦しかったけど、母は、少ないお金をジャンクフードには費やさず、きちんと栄養がとれるようにしてくれました。そのおかげで大きくなれたのだから母には感謝しています。

真夜中にふと目が覚め、僕が足音をしのばせてキッチンに降りていくと、母が小切手帳を見つめて泣いているのをよく目にしました。残高が心配でたまらなかったのでしょう。その母をうしろからハグして「ママ、大丈夫だよ」と、僕なりに精一杯慰めたことを思い出します。

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「いいな、お金があって…」

本当に親しい人以外にも「お金がない」と言えるようになったのは、高校生くらいだったと思います。

とはいえ、やっぱり恨めしい気持ちはずっとありました。

当時、僕たち母子が住んでいたのは、超お金持ちは少ないものの、いわゆる中流家庭が集まっている地域でした。

日ごろ目にするのは、普通の家に住んで、普通の自家用車に乗って、普通にガソリン代を払える、普通の生活レベルの人たち。

同級生たちは、人気ブランドの洋服や靴に身を包み、定期的にコンサートやスポーツ観戦に出かけ、家には立派なステレオと、人気ミュージシャンのアルバムがそろっている。そして週末にはホームパーティを開き、そのステレオでガンガン音楽をかけてドンチャン騒ぎをする。

要するに、お金の不安なんて、ほとんど感じずに生活を営み、余暇を楽しむ人たち。

そんな、僕にとっては「当たり前」じゃなかったことを当たり前にできている人たちのことが一番恨めしかった。

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友だちに気安く言われる「一緒に行かない?」のひと言が、どれほど苦しかったことか。みんなにとっては何でもない20ドルのコンサートチケット、15ドルのゲーム観戦チケット、そのお金が僕には出せない…。

「いいな、お金があって」「いいな、何も考えずに遊べて」「お金の心配がないから、あんなふうに笑えるんだろうな、いいな」 ――周囲との比較から生まれる、こういう「いいな」が心を苦しく、貧しくしてしまうのです。

【次のページ】お母さんのため10歳から新聞配達。パックンの「逆境力」

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