なんでこんなん見なきゃいけないの…。

すいません。1行目から、ついつい本音が漏れてしまいました。

いや、ホントに、マジで、なんでこんなん見なきゃいけないんでしょうか?いくら仕事とは言ったって…ねぇ?

怖すぎるわッッッ!!!

僕、ホラー好きじゃないんですよ。そらね、このドラマも担当する中田秀夫監督の世界的ホラー映画「リング」(1998年公開)くらいはね、見てますよ?一応ね。それはね、映像を語る人間としてはね、基本じゃないですか。それで、もちろんドラマ好きとして、ドラマ版『リング~最終章~』は見てるし、その次の次のクールに放送されたドラマ版『らせん』(いずれも1999年、フジテレビ)も見てますよ。いや、この二作品に関しては、プライム帯のテレビドラマらしく、オカルトではあるけど謎解きの要素が入っててさ、ホラー要素少なめじゃん?

…うん、でも、いや、おかしいな…そう言われてみれば、映画版「らせん」(1998年公開)も見てるな…。いや、なんならこれまた中田監督の「リング2 」(1999年公開)だって母親連れて映画館まで行ってるし、同時上映は確か「死国」だったな…。で、もっと言うなら、二大ジャパニーズホラーヒロインの一人である“伽椰子”(もう一人は、もちろん“貞子”)が登場する「呪怨」(2003年公開)だって何でか見てる!そいでもって、今回のドラマに登場する黒木瞳さんが初っ端から怖い、雰囲気が怖い、声色からして怖い、何?このデジャブ感?…って思ったら、またまた中田監督で黒木さん主演「仄暗い水の底から」(2002年公開)も見てるじゃん!!

怖い!自分が怖い!!ホラー作品に引き寄せられてるじゃん!むしろ好きじゃん!!

っというわけで、自分、実はホラー、そこそこ好きなんじゃないか、好きとまでは言わないにしろ、普通に見てるじゃん…ホラーが好きじゃないとか、本気で好きじゃない人に謝れ!レベルだった訳ですが、そんな僕(どんな?)でも、もうとんでもなく、強烈で猛烈に、尋常じゃないくらい怖かったです!!!

特に開始45分頃に訪れる恐怖は、あまりにも恐怖。恐怖に恐怖を掛け算するほどの恐怖…その恐怖が訪れるまでの伏線、流れ、描写…やばい!恐怖が来るに決まってる、てか来てる、もうすぐそこに来てる!その前の段階で恐怖回避できたと思って油断してんじゃねー!画面の中の二人――!!!そこから今すぐダッシュで逃げてーーー!!あからさまに近づいてんじゃん!!やめて!やめてね?やめってって!「やめてーーーー!!!!!!」ってしまいには声を出し、絶叫しながら、画面を手で覆ってしまいました。

ドラマレビューを書く人間として、誰よりも画面の細部まで目を凝らす、視聴者の誰よりも真剣に画面を注視する…をモットーとしてこれまでやってきましたが、申し訳ございません。そのシーン、あんまり怖すぎて見られていません。

…っと謝ってはみたものの、本当は怒ってます。なんでこんなん見なきゃいけないの!(実際は手で覆ったくせして…)

これまでずっと「オトナの土ドラ」の“ヤバさ”を、身をもって体験してきたんだけれど、それでもやっぱり、どこか「オトナの土ドラ」をなめてたんでしょうね…僕。いくらホラーとはいえ、もっと心理的な怖さ、ジワジワ来る怖さだと思ったんですよ。だって画面で恐怖を表現したら、放送コード的なので今やめんどくさそうじゃないですか?だけど、ホントに「オトナの土ドラ」スタッフなめんなですよね。こんな視覚的に恐怖を煽るホラードラマ、今やる?って感じなんですよ。今って昭和のオカルトブームじゃないんですよ?年号二個進んで令和なんですよ?飛び降り自殺した女子高生と主人公・詩弦(白石聖)とが、落下付近で目が合っちゃって、その後、血まみれですよ?それを映像で表現するって、「オトナの土ドラ」、やっぱり頭おかしい、ヤバすぎですよ?(褒めてる…褒めてる?)

で、毎シーン毎シーン、ホラー作品ならではの緊張と緩和の連続で、何かあるに違いない登場人物達のオンパレード。キーパーソンの“耳にアザ”がある怪しすぎる引越し業者(猪野学)なんてのはまだ序の口。こいつ絶対後々死ぬだろっていうくらい浮かれまくりの詩弦の女友達・桃香(片山友希)、後手後手の捜査で次々死人を出しちゃいそうな刑事(駿河太郎)、ベランダがオープン過ぎてプライベート性ゼロ!な、会う時はなぜかベランダの男性・ともを(坂口涼太郎)、目力が強すぎて悪魔に憑りつかれてそうな元時代劇俳優のパパ(横田栄司)、何してるわけでもなく存在自体が恐怖だった黒木瞳さん演じるママと、そのママが後半に見せるあからさまな恐怖とか、見所満載…なんだけど、僕的注目ポイントは勇介くん(佐藤大樹)。どんなドラマでもそうなんですが、僕、恋愛ドラマじゃない中でのちょっとした恋愛パートに弱いんですが、今回も主人公・詩弦と勇介くんの恋愛模様が味わい深過ぎ。

勇介くん、登場のノッケからイケメン風を吹かし、爽やか度が半端なく、加えてフレンドリーさMAXなもんでこれからの二人にワクワク感が高まるんですが、そっから一気に、ほぼグラデーションなしで恋人関係へとなだれ込んでいく展開が最高。

いくら勇介くんの過去に何かあったっぽい…があるにせよ、会って間もな過ぎる女子を躊躇なく抱き寄せなぐさめ、彼女宅へ偶然を装い訪れ、難なく部屋の中まで上がり込み、マッハでキスまでいっちゃうという、勇介くんの男らしさが清々しすぎ。普通だったらイケメン過ぎんだろ!って嫉妬めいたツッコミ一つも入れたくなりますが、それすら突破してくるほど、まぶしすぎる清々しさ。またその清々しさが、詩弦が遭遇してしまう特大級トラウマ事件を緩和し、癒しの効果まで生むっていうね…。むしろ勇介くん、手が早くてありがとう!とすら思わせる。…なんだけど、勇介くんがいなかったら、このドラマ、ちっとも休まるトコなかったよ…なーんて油断した次の瞬間、勇介くんを使って恐怖に突き落としてくるので、やっぱり、絶対、油断禁物です。

そしてまた詩弦を演じる白石聖さんには、次々と訪れる恐怖体験に耐えられそうな芯の強さと鈍感さがちゃんとあるから、ホラードラマの主役にピッタリなんですよ。もっと弱々しい女の子が主人公だったら、多分1話の前半で多分ダメになっちゃってると思う。

っというわけで、なんでこんなん見なきゃいけないの…。と、言っては見たものの、恐怖に釘付けで1時間があっという間。そしてやっぱり大興奮!…だけどさ、この1話の段階でこれほどの恐怖を見せつけられたら、2話目以降どうなるんでしょう?しかもこれが8話あるわけでしょ?ほぼ画面を手で覆っちゃって、映像見られないんじゃないか?と心配になってきます。それでちゃんとレビュー書けるんだろうか…?「オトナの土ドラ」と僕の挑戦が始まったようです。

text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)